2016 Fiscal Year Research-status Report
前立腺癌骨転移において骨髄由来間葉系幹細胞が癌細胞の悪性形質獲得に与える影響
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16K11014
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
野村 威雄 大分大学, 医学部, 講師 (40347034)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三股 浩光 大分大学, 医学部, 教授 (60219714)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 骨転移 / 骨髄由来間葉系幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
BMSCs(骨髄由来間葉系幹細胞)とLNCaP細胞(ホルモン感受性前立腺癌細胞)を共培養するとLNCaP細胞は共培養72時間以降有意に増殖速度が増加した(MTS assay)。また浸潤・遊走能は共培養24時間でそれぞれ2.13倍、2.75倍に増加した(Invasion/Migration assay)。次に細胞増殖に関して分子細胞生物学的に解析したところ、共培養下ではLNCaP細胞におけるARリン酸化(Ser 81)およびAktリン酸化の亢進を認めたがERKリン酸化には変化を認めなかった(免疫ブロット法)。同様に共培養下ではPSA産生の亢進を認めた。浸潤・遊走能に関してはEMT関連分子の解析を施行した。転写因子SnailとSlugとも共培養下で発現亢進し、免疫染色による解析ではSnailの核内移行を認めたがEMT関連分子(E-cadherin、B-catenin、N-cadherin、Vimentin)の発現に変化は認めなかった。一方MMP-7およびCyclin D1は共培養下で発現亢進を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度研究予定ではBMSCsによるLNCaP細胞の細胞増殖能、遊走・浸潤能への影響について共培養モデルを用いて解析することを主に計画していた。BMSCsと共培養することでLNCaP細胞は悪性形質(細胞増殖能、浸潤・遊走能)を獲得したことから前立腺癌細胞の骨転移巣での進展に骨髄由来間葉系幹細胞が影響を与えることが分かった。既存の報告では間質細胞が細胞増殖に影響することが知られていたが、遊走・浸潤についても影響を与えることは本研究の重要な新知見である。この悪性形質獲得に関する分子細胞生物学的メカニズムに関しては、細胞増殖能の亢進についてはAR-Aktシグナルの活性化によることが示唆された。一方、遊走・浸潤能の亢進についてはSnailやSlugの発現亢進を認めさらにはSnailの核内移行を認めたことからEMTが生じている可能性が示唆されたが、いずれのEMT関連分子(E-cadherin、B-catenin、N-cadherin、Vimentin)にも大きな変化を認めなかった。平成28年度の研究では前立腺癌細胞悪性形質化に関する間質細胞の影響について新知見が得られたが、その分子学的機序の解析まで十分に研究は進んでいないため、到達度としては上記と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
SnailおよびSlugが調節する浸潤・遊走能に影響する責任分子を同定したい。MMP-7とCyclinD1に加えてEphrinB1とB-cathenin発現について解析する。BMSCsと共培養することでLNCaP細胞が増殖、浸潤・遊走する分子学的機序を証明するために、Akt阻害剤(LY294002)によるARリン酸化状態の抑制、PSA産生抑制および細胞増殖能の低下について解析する。次にSnailおよびSlugをsiRNAを用いてノックダウンすることでLNCaP細胞の浸潤・遊走能の低下を観察する。またMMP-7、CyclinD1、EphrinB1、B-catenin発現抑制について免疫ブロット法にて解析したい。
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Causes of Carryover |
平成28年度は研究成果を国際学会で発表する機会がなく、また設備備品費に残高が生じたため302013円の次年度繰越し研究費が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の消耗品費および旅費として使用予定である。
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