2016 Fiscal Year Research-status Report
膀胱癌細胞ミトコンドリア内における鉄利用メカニズムの解明とその臨床応用
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16K11026
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
中井 靖 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (90445065)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 清秀 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (50264867)
三宅 牧人 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (80601400)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 鉄 / ヘムオキシゲナーゼ1 / 膀胱癌 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
1.膀胱癌細胞株であるT24,MG-Hu3細胞株にクエン酸第一鉄ナトリウムを投与し、細胞増殖を評価した。T24細胞株では、0.3mM以上で優位に細胞の増殖が促進されており、MG-Hu3では促進は認められなかった。2. 活性酸素をクエン酸第一鉄ナトリウム0.5mMで測定すると、T24では活性酸素の上昇は認められず、MG-Hu3では活性酸素の上昇が認められた。3.鉄利用において、ヘム合成経路における酵素のRNA発現をreal time PCRで評価した。(PEPT1,PEPT2,ALAF,HMBS,UROS,UROD,ABCG2,ABCG6,PPⅨ0,FECH,HO-1,BLVCR,ALAS1,COPX,FXN) HO-1の発現が鉄投与により、大きく変化していた。その他の酵素の発現の変化は小さかった。鉄投与により、T24でHO-1の発現は5倍に変化していたが、MG-Hu3では変化は小さかった。4.HO-1のinhibitor (ZnPPⅨ)による影響を検討した。T24では鉄とinhibitor投与により、T24の鉄投与のみ投与で見られた細胞増殖は認められなくなった。MG-Hu3ではinhibitorによる細胞増殖の減少は認められなかった。 以上から、鉄投与により、癌細胞にHO-1が発現し、活性酸素の発生が抑制され、細胞増殖につながることが予測された。 さらに、ヌードマウスに皮下腫瘍モデルを作成し、鉄投与の影響を検討した。細胞株はUMUC3を用いた。鉄投与により、皮下腫瘍は大きくなったが有意差は認めなかった(大きさ:鉄投与 147mm2 (36-246)対コントロール 197mm2(174-212),重さ:鉄投与 0.62 g (0.04-1.48)対コントロール 0.78g (0.47-1.07))
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
鉄投与により、細胞増殖や腫瘍が増大することが示すことができた。その機序としては、ヘム合成経路におけるフェロケラターゼ(FECH)の関与を予測していたが、鉄投与による発現の変化は軽度であり、FECHによる鉄過剰状態での細胞増殖の機序は否定的であった。一方ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)が大きく変化しており、鉄投与による細胞増殖の原因になる可能性を示すことができた。このため、HO-1を中心とした検討へのシフトチェンジが必要となったことが、進捗の遅れになったと考える。 さらに、皮下腫瘍モデルでの検討においては、従来in vitroで用いていたT24細胞では皮下腫瘍モデルを作成することが困難であり、UMUC3での皮下腫瘍モデル作成となった。このため、in vitroとin vivoでの細胞株の違いがあり、今後さらに検討が必要となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
HO-1と細胞内のミトコンドリア活性の関係を検討する。鉄投与による、ミトコンドリア活性(チトクロームcオキシゲナーゼ)の変化につき、in vitroとin vivoで検討する。 BBNを用いた膀胱癌同所性モデルで、鉄投与によるHO-1やミトコンドリア活性の変化を検討する。 p53とHO-1の発現の関係についてin vitro、in vivoの検討を行っていく。
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