2017 Fiscal Year Research-status Report
骨髄および脂肪由来細胞を用いた尿道括約筋様構造体による機能的尿道括約筋の再生
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16K11043
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中沢 昌樹 信州大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (60721040)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今村 哲也 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (00467143)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脂肪組織由来幹細胞 / 尿道再生 / バイオ3Dプリンター / 凍結傷害 / 自家移植 / ウサギ |
Outline of Annual Research Achievements |
尿失禁は、生命危機に直結するものではないが、Quality of Life (QOL)を著しく損ねる疾患であり、家事、仕事、社会活動の日常生活で多くの支障を及ぼすことから治療開発は重要課題である。超高齢化社会を迎え、さらに、前立腺癌発生率の増加にともなう手術件数の増加の予測を背景に腹圧性尿失禁患者の増大が見込まれる。腹圧性尿失禁に対する治療として、骨盤底筋訓練や薬物療法が挙げられるが、改善が認められないことが多い。外科的治療として、尿道スリング手術、傍尿道コラーゲン注入治療、人工括約筋植込・置換術が挙げられるが様々な課題がある。これらの背景から、われわれは、バイオ3Dプリンターを利用して脂肪組織由来の間葉系細胞(脂肪由来細胞)から尿道に移植するために適した形を有するC型構造体を用いた腹圧性尿失禁の新規治療法の開発を考案した。 本年度は、ウサギ脂肪組織由来細胞から独自開発のC型構造体を作製した。細胞を採取したウサギの尿道に凍結傷害を与えた後、C型構造体の自家移植の実験を行った。対照群には、構造体を移植しない偽手術を行った。術後、2,4週間目に尿道を摘出して観察したところ、対照群では、尿道の狭窄が認められたが、構造体移植群では、狭窄が認められなかった。また、組織解析において、移植した構造体の生着が確認でき、また、移植構造体の中で、脂肪由来細胞の横紋筋、平滑筋、神経細胞や血管内皮細胞等の分化が認められた。さらに、構造体を構成している細胞からの細胞成長因子などの発現が認められた。これらの結果から、構造体移植による尿道再生の可能性を見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バイオ3Dプリンター(レジェノバ、株式会社サイフューズ)を用いて、C型構造体の作製に成功した。凍結傷害を与えた尿道に脂肪由来細胞C型構造体の自家移植を行った。術後2,4週間後に尿道組織を採取し、組織学的解析を中心に解析を進めた。その結果、構造体移植による尿道再生の可能性を見いだした。 以上から、当初の計画の変更による研究遂行の遅れや支障もなく、円滑に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、脂肪由来細胞C型構造体の自家移植によって再生した尿道組織に対して、対照群との比較、経時的経過での比較など、より詳細な解析を進める。同時に、細胞成長因子の発現なども解析し、尿道再生の機序についても考察を行う。これらの研究成果をまとめ、学術誌に論文を投稿する予定である。また、この基礎研究を臨床での実用化技術としての確立に向けた周辺インフラ整備などを考えていく予定である。
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Causes of Carryover |
消耗品類などメーカーのキャンペーン期間で購入したため、計画より安価に済んだ。次年度使用額は、平成30年度請求額と合わせて、組織解析用の抗体等の消耗品に使用する予定である。
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