2017 Fiscal Year Research-status Report
間質性膀胱炎における膀胱上皮再生のマスター転写因子の同定
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16K11059
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
山西 友典 獨協医科大学, 医学部, 教授 (90220425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加賀 勘家 獨協医科大学, 医学部, 助教 (80584812)
井上 健一 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (90587974)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マスター転写因子 / 間質性膀胱炎 / ハンナー病変 / 尿路上皮 / iPS干渉法 / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度報告時に査読中であった論文が、Internal Journal of Urologyに論文が受理された(doi: 10.1111/iju.13391)。この論文は、プロジェクトの根幹となるがん細胞株を用いたスクリーニングのproof of conceptである。上皮型および間葉型の異なる膀胱がん細胞株の遺伝子発現を比較し、上皮型で発現の高い候補転写因子を選別した。間質性膀胱炎患者の膀胱粘膜生検からRNAを抽出し、30種類の候補因子を定量した。主因子分析により、候補因子を遺伝子発現の相関から4グループに分類することができた。当初の計画では発現の高い候補因子を片っ端から、膀胱粘膜の免疫染色によって局在を同定することになっていた。しかし主因子分析を用いることにより、サイトケラチンやウロプラキンなどの既知のマーカーと比較することで、三層構造をなす尿路上皮中の局在を類推することができる。一方症状の異なる患者の生検を主成分分析することにより、分子機序が不明である間質性膀胱炎のパターンを見出せることにも気が付いた。後者は副産物的に派生したプロジェクトではあるが、簡便診断法の開発など応用可能性を秘めている。この結果をイタリアで開催されたInternational Continence Society 2017で報告したところ、平成29年度河邊賞を受賞した。ところでこの時点でスクリーニングに選んだ転写因子は1000ある遺伝子のうち100程度をカバーしたものであり、選ばなかった900の中に重要な候補が含まれている可能性もあった。そこで同じ細胞株を材料としてマイクロアレイ解析を行い、同様のスクリーニングを行った。これにより遺伝子座にスーパーエンハンサーを有する候補因子を新たに51付け加え、患者生検を用いた発現解析を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
少数の候補因子からはじめた患者生検の発現解析で、非常に良い感触が得られた。つまり転写因子はカスケードの文脈で変化するため、患者生検の病変で遷移する転写因子の、転写因子そのものの発現パターンを調べる意義は大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
候補因子を加えて解析の精度を高め、本年度間質性膀胱炎20症例程度の追加解析を実施する。これにより尿路上皮の層別に局在する候補因子のマップを推定する。この情報を基にして、iPS干渉法にかける候補因子の優先順位を決め、発現ベクターを作成する。
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Causes of Carryover |
昨年度は論文作成が主体となっており、用いた研究費が少なかったため、翌年度分と合わせて請求したいと考えている。 今後、候補マスター転写因子が含まれるベクターを作成し、iPS干渉法で分化誘導能力をスクリーニングし、間質性膀胱炎などに関わるマスター転写因子を同定する予定である。その際に用いるiPS細胞の準備や培養、研究用の消耗品購入などに助成金を用いる。
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