2017 Fiscal Year Research-status Report
移植免疫反応と血管内皮の多様性:臓器間格差のメカニズムとグリコキャリックスの役割
Project/Area Number |
16K11070
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
本田 一穂 昭和大学, 医学部, 教授 (10256505)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 腎移植 / 骨髄移植 / 血管内皮 / グリコキャリックス / 拒絶反応 / GVHD |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、①マウス臓器のグリコキャリックス(GCX)の可視化、②培養内皮細胞のGCXの可視化、③ホルマリン固定・パラフィン包埋(FFPE)切片を用いた低真空走査電顕(LV-SEM)観察法などを中心に検討を行った。 ①臓器血管内皮面のGCXを可視化には陽性荷電色素であるアルシアン青(ALB)とランタン(LA)を用い、潅流固定液に溶解させて試料を作成し、腎や大動脈を透過型電顕(TEM)および走査型電顕(SEM)で観察した。ALBは糸球体毛細血管や細動脈内皮面に染色されたが、TEMならびにSEMでの局在観察は不十分であった。LAはTEMおよびSEMで細顆粒状物質の層として観察されたが、分布に部位による差が見られた。 ②ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を培養し、細胞表面のGCXをFITC標識小麦胚芽アグルチニン(WGA)で検出し、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。検出された薄層はノイラミニダーゼ処理により染色性が失われ、HUVECの表層にWGAの結合するNアセチルグルコサミンとシアル酸が存在することが確認された。この培養細胞層をALBやLAを含む固定液で固定後に樹脂包埋し、超薄切片を作成してTEMで観察したところ、細胞表面に細顆粒状の薄層(GCX)が検出された。 ③FFPE切片を用いたLV-SEM観察法については、マウス潅流固定標本やヒト腎生検検体を用いて、内皮細胞の超微形態や血管基底膜の変化について観察した。未染色の切片では電子線照射によるチャージアップ現象が観察を妨げるため、観察のための導電処理法を検討した。通常の染色の中では、過ヨウ素酸メセナミン銀染色(PAM)やマッソン染色がそれぞれ基底膜や細胞間線維組織の描出に有用で、その他、白金ブルー(TIB)染色は細胞表面構造や細胞質構造の観察に有用であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目標は「臓器移植における免疫反応と血管内皮の多様性」を、血管内皮面のGCXを中心に明らかにすることである。本年度は、in vivo ならびにin vitroのモデルで、内皮面のGCXを光顕・電顕的に可視化する方法を検討し、いずれも一定の感度でGCXを検出することが可能であることを確認した。しかし、これらの方法を臓器移植免疫反応のin vivoもしくはin vitroのモデルに応用する必要があるが、現在それらのモデル作成が十分になされていない。マウス骨髄移植後GVHDモデルの作成については、尾静脈からの骨髄細胞を移植すると、移植後数日の急性期に致死的な障害が惹起され、その成因を検討したところ、移殖骨髄細胞の肺塞栓による呼吸不全が問題であることが判明したため、現在、骨髄組織の移植法(経静脈的投与法の検討、骨髄腔への直接注入)について検討を行っている。さらに培養細胞を用いたin vitro の実験系として、補体や抗体あるいは炎症細胞の共培養による内皮GCXの変化についてのモデル作成を試みている。しかし、研究者の時間的・労力的な問題で、未だ十分な進展が得られていない。FFPE標本のLVSEMによる観察法については、試料作製や導電処理法、観察条件設定が確定したが、観察と撮影には多大な時間と労力が必要なため、知見の収集が十分に進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、前年度に引続き、臓器移植免疫反応のin vivoもしくはin vitroのモデルを作成し、今年度に検討したグリコキャリックスの可視化の方法を応用する。またFFPE切片を用いたLV-SEM観察法をこれらのモデルや移植腎生検検体に応用して、腎血管の超微形態変化から診断や病態解明に役立つ知見を探索する。具体的な研究推進方策は以下の通りである。 ①マウス骨髄移植後GVHDモデルの確立と解析:骨髄移植の方法は、投与する骨髄細胞の浮遊液にヘパリンを添加して肺塞栓を予防する他、骨髄内移植法も検討する。骨髄内移植にはTakakiらの方法(J Autoimmunity ,31: 408-415, 2008)を参考にする。誘発された急性GVHD反応を、肺・腎・肝・小腸・皮膚を中心に病理学的に評価し、血管内皮面の変化(GCXや補体活性化、細胞接着分子の発現など)を明らかにする。 ②培養内皮細胞を用いた移殖免疫反応のin vitroモデルとして、未非働化血清による補体活性化、抗HLA抗体による内皮細胞の刺激、活性化した単球や好中球の共培養による内皮細胞の刺激などを試みて、内皮の形態や機能の変化を形態学あるいは細胞生物学的に評価する。また、HUVECで確立した傷害モデルを糸球体内皮由来の培養細胞に適用して、腎移植拒絶反応の機序の解明に関わる知見を探索する。 ③慢性ならびに急性拒絶反応を示した様々な生検例をFFPE切片を用いたLV-SEM観察を行い、血管病変の超微形態所見を集積し、診断に有用なLV-SEM利用法を確立する。 ④動物モデルを用いて、臓器間・臓器内の血管レベルにおけるGCXの糖鎖構成分の多様性を、種々のレクチンを利用して免疫組織学、免疫電顕法、光学電子顕微鏡相関(CLEM)法で解析する。また、培養内皮細胞の種々の刺激条件下における糖鎖構成の多様性を同様の手法で検討する。
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Causes of Carryover |
本年度は、マウス骨髄移植後GVHDモデルの作成において、十分な条件検討と解析が行えなかったこと、並びにGCX層の電子顕微鏡的可視化法やGCXを構成する糖鎖の多様性の解析のためのレクチン染色や糖鎖と内皮細胞の機能分子の関係についての検討が十分に行えなかったことにより未使用額が発生している。 次年度の研究費は、マウス骨髄移植後GVHDモデル作成のための更なるマウス購入、飼育費、病理学的解析、細胞培養実験のための器具、培地、血清、増殖因子、グリコキャリックス検出のための電子顕微鏡試料作製の試薬と材料の購入、糖鎖成分の解析のためのレクチンや抗体の購入などに使用する。また、病理報本作成のための謝金、研究成果の発表や情報交換のための旅費としても使用する予定である。
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Research Products
(27 results)
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[Journal Article] Pituitary adenylate cyclase-activating polypeptide promotes eccrine gland sweat secretion.2017
Author(s)
Sasaki S, Watanabe J, Ohtaki H, Matsumoto M, Murai N, Nakamachi T, Hannibal J, Fahrenkrug J, Hashimoto H, Watanabe H, Sueki H, Honda K, Miyazaki A, Shioda S.
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Journal Title
Br J Dermatol
Volume: 176
Pages: 413-422
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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