2018 Fiscal Year Research-status Report
移植免疫反応と血管内皮の多様性:臓器間格差のメカニズムとグリコキャリックスの役割
Project/Area Number |
16K11070
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
本田 一穂 昭和大学, 医学部, 教授 (10256505)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 腎移植 / 骨髄移植 / 血管内皮 / グリコキャリックス / 拒絶反応 / GVHD |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,①実験動物の血管内グリコキャリックス(GCX)の可視化法とCLEM法(光電子相関顕微鏡法)への応用 ②培養内皮細胞のGCXの評価と内皮細胞傷害モデルの作成を中心に検討した. ①健常マウスを安楽死後,アルシアン青(ALB)やランタン(LA)を加えた固定液で潅流固定し,腎臓などの血管GCXを光学・蛍光顕微鏡,透過型電子顕微鏡(TEM),LVSEMで観察しCLEM法を試みた.TEMではオスミウム後固定によりGCXは高電子密度に染色された.ALBはFFPE切片に対してPAM(過ヨウ素酸メセナミン銀)染色を行うと銀増感により明瞭に検出され,GCXの評価が可能であった.GCXの厚さや増感銀粒子の密度は,糸球体毛細血管や小細動脈で高く,尿細管周囲毛細血管や静脈では低かった. SEM画像を光学顕微鏡像に相関させるCLEM 法は,GCXの描出や性状の解析に有用であるが,光顕像の解像度や増感銀粒子の検出に課題を残した. ②培養ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の細胞表面上のGCXをFITC標識小麦胚芽アグルチニン(WGA)で検出し,CD31(PECAM)との関係を共焦点レーザー顕微鏡で観察した.また細胞のviabilityをMTTアッセイで評価し形態像を合わせて検討した.内皮傷害型の副作用が報告されている抗癌剤Gemcitabinを培養内皮細胞に添加して,内皮細胞のviabilityやGCX,CD31分子の状態の変化を評価した.Gemcitabine濃度を上げるとCell viabilityや細胞形態,GCX, CD31分子発現に変化が見られるが,至適薬剤濃度やGCX定量化法について検討する必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目標は「臓器移植における免疫反応と血管内皮の多様性」を,血管内皮面のGCXを中心に明らかにすることである,これまで,in vivo ならびにin vitroのモデルで,内皮面のGCXを光顕・電顕的に可視化する方法を検討し、一定の成果を得ている.しかし,臓器移植免疫反応のin vivoもしくはin vitroのモデルに応用する必要があるが,現在それらのモデル作成が十分になされていない. マウス骨髄移植後GVHDモデルの作成については,研究者の時間的な余裕がなかったため,昨年度までの課題抽出の段階で停滞している.その課題としては,尾静脈からの骨髄細胞を移植する際の、移植骨髄細胞の肺塞栓による呼吸不全があり,骨髄組織の移植法(経静脈的投与法の検討、骨髄腔への直接注入)について検討する必要がある.研究期間を延長し,最終年度は動物モデルの作成を完成させ,臓器間や臓器内血管レベル間のGCXの量や性状について検討を加えたい. さらにin vitro の実験系として、今年度は抗癌剤(Gemcitabine)による内皮傷害をモデルとして,GCXと内皮細胞機能との関連性について検討を始めているが,未だ十分な進展が得られていない.本来移植免疫反応においては,補体や抗体あるいは炎症細胞による内皮傷害が問題でなり,最終的にそのためのモデル作成も必要であるが,まずはよりシンプルな内皮傷害モデルを作成し,HUVECとヒト糸球体培養内皮細胞と比較することで,内皮の臓器間多様性の要因を探りたいと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は引続き,①マウス骨髄移植後GVHDモデルの確立と解析,②培養内皮細胞のin vitroモデルを用いた検討を中心に行う.具体的な研究推進方策は以下の通りである. ①昨年度検討を行えなかった骨髄移植の方法は,投与する骨髄細胞の浮遊液にヘパリンを添加して肺塞栓を予防する他,骨髄内移植法も検討する.骨髄内移植はTakakiらの方法(J Autoimmunity ,31: 408-415, 2008)を参考にする.誘発された急性GVHD反応を,肺・腎・肝・小腸・皮膚を中心に病理学的に評価し,血管内皮面の変化(GCXや補体活性化、細胞接着分子の発現など)を明らかにする.血管GCXの糖鎖構成分の多様性を、種々のレクチンを利用して免疫組織学、免疫電顕法、光学電子顕微鏡相関(CLEM)法で解析する。GVHDが惹起された臓器や血管レベルの特性を組織学的に評価し,臓器間格差や血管レベルに応じた特性をGCXの性状の変化の観点で解析する. ②薬剤性ならびに免疫反応性の内皮傷害モデルを作成し、GCXと内皮機能の関係を解析する.また,細胞をHUVECの他にヒト糸球体内皮細胞(HGEC)に応用し,両者の反応性やGCXの変化の差異から臓器間血管内皮の多様性について考察する.また,移植免疫反応のin vitroモデルとしては、抗内皮抗体や未非働化血清による補体活性化,活性化した単球の共培養などで内皮細胞の刺激などを試みて、内皮の形態やGCX,内皮細胞の機能的変化について解析する。
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Causes of Carryover |
本年度は、マウス骨髄移植後GVHDモデルの作成において、十分な条件検討と解析が行えなかったこと、並びにGCX層の電子顕微鏡的可視化法やGCXを構成する糖鎖の多様性の解析のためのレクチン染色や糖鎖と内皮細胞の機能分子の関係についての検討が十分に行えなかったことにより未使用額が発生している。 次年度の研究費は、マウス骨髄移植後GVHDモデル作成のための更なるマウス購入、飼育費、病理学的解析、細胞培養実験のための培地、血清、増殖因子、グリコキャリックス検出や糖鎖成分の解析のためのレクチンや抗体の購入などに使用する。また、病理標本作成のための謝金、研究成果の発表や情報交換のための旅費としても使用する予定である。
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Monoclonal immunoglobulin G deposits on tubular basement membrane in renal allograft: is this significant for chronic allograft injury?2019
Author(s)
Sawada A, Kawanishi K, Horita S, Omoto K, Okumi M, Shimizu T, Taneda S, Fuchinoue S, Ishida H, Honda K, Hattori M, Tanabe K, Koike J, Nagashima Y, Nitta K.
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Journal Title
Nephrol Dial Transplant
Volume: 34
Pages: 711-717
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Successful entecavir plus prednisolone treatment for hepatitis B virus-associated membranoproliferative glomerulonephritis: A case report.2019
Author(s)
Kataoka H, Mochizuki T, Akihisa T, Kawasoe K, Kawachi K, Makabe S, Sawada A, Manabe S, Sato M, Amemiya N, Mitobe M, Akanuma T, Ito Y, Inoue T, Suzuki T, Matsui K, Moriyama T, Horita S, Ohara M, Honda K, Nitta K.
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Journal Title
Medicine (Baltimore)
Volume: 98
Pages: e14014.
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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