2017 Fiscal Year Research-status Report
移植免疫寛容誘導の臨床試験実施に向けたTreg細胞の機能及び遺伝子発現解析
Project/Area Number |
16K11071
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
田邉 一成 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (80188359)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 同種異系キメラ誘導 / 心臓移植 / 免疫誘導 / タクロリムス / エベロリムス / 制御性T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、これまでにα-ガラクトシルセラミドリポソーム製剤(Lipo-aGC)と抗CD154 モノクローナル抗体(MR-1)を用いて、マウスにおいて同種異系キメラ誘導を介した移植免疫寛容誘導に成功している。本研究では、この免疫寛容誘導プロトコールに、移植領域で汎用されている免疫抑制剤のタクロリムス(TAC)もしくはエベロリムス(EVL)を併用し、これらの免疫抑制剤の免疫寛容誘導に与える影響について検証している。平成28年度は、この免疫寛容誘導プロトコールによるマウス同種異系キメラ誘導に対して、EVL(1 mg/kg/day)は影響を与えなかった一方で、TAC(5 mg/kg/day)は阻害することを確認した。 平成29年度は、両剤の免疫寛容誘導に対する影響の違いに関して、そのメカニズムについて解析した。Lipo-aGCとMR-1を用いた移植免疫寛容誘導法にELVを併用した群(EVL併用群)とTACを併用した群(TAC併用群)における制御性T細胞(Treg)について比較した。EVL併用群における脾臓内Treg数は、免疫抑制剤を併用しなかった群(コントロール群)と差はなかった。一方でTAC併用群ではTreg数が少なく、その増殖能も低かった。さらにCLTA-4発現も低く、その免疫抑制能も低下している可能性が示唆された。ホストリンパ球とドナー抗原提示細胞の混合リンパ球反応に対する作用について解析した結果、TAC併用群の脾臓より分離したTregでは、この混合リンパ球反応に対する調節作用が認められなかった。 これらの結果から、TAC併用群において、TACはTregの増殖や免疫制御能を阻害し、同種異系キメラ誘導に対して影響を与えた可能性が示唆された。さらに、Lipo-aGCとMR-1を用いた移植免疫寛容誘導法に併用する免疫抑制剤としては、EVLがより適切であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度確認した免疫寛容誘導プロトコールによるマウス同種異系キメラ誘導に対するEVLとTACの影響の差について、Tregに焦点を当てたメカニズム解析を行った。その結果、TACはTregの増殖や免疫制御能を阻害することを明らかにし、これらのTregに対する作用がキメラ誘導に対して影響を与えた可能性を示した。これまでに、免疫寛容誘導プロトコールに対するTACとEVLの影響について検証したとともに、そのメカニズムについても解析を進めることができたことから、本研究は順調に進捗したと考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、TAC併用群と同様に、EVL併用群についてもTregの免疫調節作用に対する影響に関して、CTLA-4発現やリンパ球混合反応に対する作用について解析する。さらに、関与するサイトカイン等についても解析を行う。これらの評価を行なった後に、結果をまとめて論文化を行う。
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