2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K11085
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 幸保 京都大学, 医学研究科, 非常勤講師 (00508236)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鶴山 竜昭 京都大学, 医学研究科, 特定教授 (00303842)
伊藤 美幸 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (00760951)
堀江 昭史 京都大学, 医学研究科, 助教 (30535836)
谷 洋彦 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (70615252)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 妊娠高血圧症候群 / 胎児発育不全 / 絨毛外トロホブラスト / 血管リモデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、プロテオミクス法による血管内EVT(eEVT)マーカーの抽出であるが、予定通りホルマリン固定されたパラフィン切片を用いて試みたが、固定時間の長短により抽出されるタンパク質プロファイルに変動があり、うまくいかなかった。今後は凍結切片を用いて行う予定である。 次に、絨毛組織の器官培養から分離したEVTから新しいEVT細胞株を樹立する試みであるが、当初予定していたhTERT遺伝子を導入するだけでは、既存のEVT細胞株と同様、線維芽細胞の性格をあわせもった細胞しか得られない可能性が高いと考えた。通常の分離EVTにはほとんど増殖能がなく1週間以内でそのすべてが細胞死に至るが、絨毛組織と共培養することでその生存期間が1ヶ月以上に延長することが、その後の検討で明らかとなった。マウスでは胚盤胞をfibroblast growth factor 4 (FGF4)の存在に培養することによりトロホブラスト幹細胞を分離することに成功しており(Tanaka S et al. Science 1998)、FGF4などの絨毛間質由来因子には分離EVTの分化を抑制する作用があると推察している。この性質を応用してEVT細胞株の樹立を試みることを予定している。 また、上記の研究に並行して、以前に行った血小板と共培養した分離EVTを用いたマイクロアレイ解析で抽出された分子の一つであるCD59(補体活性化の抑制因子)についても検討を行った。妊娠初期の着床部切片を用いた免疫染色の結果、CD59が血管内EVTに特異的に強発現していることが分かった。さらに、既存のEVT細胞株であるSwan71細胞においてCD59をノックダウンしたところ、補体添加による細胞死が増加した。以上の結果より、血管内EVTはCD59を発現することで、母体血中の補体活性化による排除を免れている可能性を考え、現在論文を作成している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記のように、当研究の律速段階であるプロテオミクス法を用いたタンパク質解析は、当初予定していたホルマリン固定されたパラフィン切片では成功しなかった。そのため、凍結切片に変更して行うことを予定している。しかし、分離EVTより新たなEVT細胞株を樹立するという目的に向けては、分離EVTを絨毛組織と共培養することで、1カ月をこえて生存させることに成功しており、ある程度進展したと考えてよいだろう。これら寿命の延長した分離EVT細胞にhTERT遺伝子を導入して不死化させ、これを既知のEVT特異的細胞表面マーカーであるHLA-Gやleaverinで標識し、セルソーターにより分取することでEVT細胞株の樹立ができると考えている。現在、プロテオミクスによりeEVTマーカーが抽出された後に速やかに機能実験に移れるように、新しいEVT細胞株の樹立を急いている。以上を総合して、我々の研究の評価区分を「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の流れは、1) 妊娠初期の着床部位切片において、cell column内にある分化初期段階のEVT(cEVT)と血管内EVT(eEVT)のタンパク質発現プロファイルをプロテオミクス法にて比較することで「eEVTマーカー」を抽出する、2) eEVTマーカーの発現を妊娠中期の正常胎盤とFGR/PIH胎盤とで比較することで「FGR/PIH関連分子」を抽出する、3) 新しく樹立したEVT細胞株を用いて母体血管リモデリングにおけるFGR/PIH関連分子の役割を解明する、4) FGR/PIH発症を早期に予知できる母体血中マーカーを見出す、である。 今後の方針として、まず妊娠初期のヒト着床部位の凍結切片からcEVTとeEVTの細胞集塊を切り出し、これらからタンパク質を抽出してプロテオミクス解析を行うことによりeEVTマーカーを抽出する。FGR/PIH関連分子の抽出に関しては、大きな変更が必要とは考えていない。 我々は分離EVTと絨毛組織と共培養することで、分離EVTの長期培養に成功した。この分離EVTにhTERT遺伝子を導入して不死化させた後、cEVT、eEVTないしは脱落膜を浸潤する間質EVT(iEVT)のいずれの分化段階のEVTを含有しているかを詳細に検討する予定である。その後、FACS Aria 2(BD Biosciences)を用いて発現分子によるセルソートを行い、それぞれの分化段階に対応したEVTを分取し、それぞれ細胞株を樹立することを目標としている。これらの新規EVT細胞株を用いて、計画書に準じて、分化誘導トリガーの同定および母体血管リモデリングの分子機構の解明を行い、最終的にはFGR/PIH発症を早期に予知できる母体血中マーカーの開発につなげたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初予定していた血管内EVTマーカーの抽出、EVT細胞株の樹立が遅れており、その後の実験が進んでいないため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
EVTマーカーの抽出を重点的に行うための試薬および実験器具の購入、実験補助者への人件費にあてる。
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Research Products
(11 results)