2017 Fiscal Year Research-status Report
子宮内環境是正への治療的戦略:次世代の生活習慣病発症予防を目指して
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16K11092
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
杉山 隆 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (10263005)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤岡 徹 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (10253303)
松原 圭一 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (80263937)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | DOHaD / マウス / 子宮内過栄養 / 炎症 / 抗炎症 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
高脂肪食が次世代への糖・脂質代謝への影響について高脂肪食(HFD)負荷妊娠モデルマウスを用いてエピジェネティクスの視点より検討し、出生した仔の表現型や遺伝子発現を網羅的に比較解析した。 その結果、HFD母獣より出生した仔の表現型として、正常食(CD)群に比し、耐糖能が低く、インスリン抵抗性が高かった。また、HFD群の仔の血清脂質は高値を呈し、内臓脂肪細胞の肥大化や脂肪組織において炎症性マクロファージの増加を認めた。仔の内臓脂肪を用いてDNAマイクロアレイ解析の結果、HFD群とCD群間で発現が変動した遺伝子が142個抽出された。これら遺伝子についてオントロジー解析したところ、脂質合成・脂質代謝に関与する遺伝子やステロイド合成関連・ステロイド代謝に関与する遺伝子が変化することが判明した。またパスウェイ解析では、代謝経路が強く関連し、この中には脂肪酸合成・代謝系やコレステロール合成系が含まれた。これらの結果より、妊娠時高脂肪餌負荷は内臓脂肪の肥大化を介して、仔のインスリン感受性に影響を与えている可能性が示唆された。すなわち、妊娠の成立から出生、授乳という流れの中で、胎生期の母体脂質摂取の増大による栄養環境の変化が、次世代のインスリン作用の減弱という“胎児プログラミング”を引き起こしていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規大学院生、実験助手により実験はおおむね順調に進行している。 以下にその理由を列記する。 1.以前に確立した高脂肪食(HFD)負荷妊娠モデルマウスを用いて次世代の影響を解析できるモデルを確立できた。 2.これまで次世代に関して主に表現型を解析したが、内臓脂肪組織を用いてエピジェネティクスの視点より、仔の遺伝子発現を網羅的に比較解析した。 3.その結果、仔の内臓脂肪を用いてDNAマイクロアレイ解析の結果、HFD群とCD群間で発現が変動することを確認できたこと。 4.さらに興味深い遺伝子について内臓脂肪や皮下脂肪を用いてメチル化の差異を検討していること。
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Strategy for Future Research Activity |
最近の疫学研究によると、母体の子宮内過栄養のうち、母体の妊娠糖尿病のような高血糖環境のみならず、母体肥満も次世代の将来のメタボリック症候群を含めた生活習慣病の発症に同等以上に影響を与えることが報告されている。 したがって、ヒトにおいても本モデルマウスと同様の現象が生じている可能性がある。そのメカニズムとして、インスリン抵抗性が炎症のシグナリングを介して伝播される可能性が明らかとなり、一昨年の成果も含めて今後さらなるエピジェノムの解析により、エピジェネティック制御のキャンセルスイッチを見つけたいと考えている。
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Research Products
(3 results)