2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K11107
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小野 政徳 金沢大学, 附属病院, 講師 (70348712)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 哲夫 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (10209702) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 子宮筋腫 / 子宮筋腫幹細胞 / 組織幹細胞 / 子宮筋 / エストロゲン / プロゲステロン |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮筋腫は,雌性生殖器に発生する腫瘍のなかで最も頻度の高い疾患であるにもかかわらず,発生機序が明確でないために有効な治療法が無く,子宮筋腫に罹患した際の患者および社会における損失は極めて甚大である. 我々はこれまで子宮筋腫幹細胞候補としてSP細胞,CD34/CD49b陽性細胞を報告してきた。また,子宮筋腫の増殖に関わる因子として我々は,子宮平滑筋細胞を性ステロイドで処理すると,WNTリガンドが分泌され傍分泌的(パラクライン)に子宮筋腫幹細胞のCTNNB1のシグナルを増強するため,結果として性ステロイドがWNT/CTNNB1を介して子宮筋腫幹細胞を増殖させることを示した.また,子宮筋腫細胞のWNT/CTNNB1シグナルを制御することで細胞増殖を抑制した.エストロゲン受容体(ESR1)とプロゲステロン受容体(PGR)は,幹細胞の周囲にある分化した子宮平滑筋細胞や子宮筋腫細胞に多く発現している.一方,幹細胞自体におけるこれら性ステロイド受容体の発現は低い.エストロゲンおよびプロゲステロンによりWNTリガンドが幹細胞周囲の細胞から産生されて,パラクラインにfrizzled(FZD)受容体を介して子宮筋腫幹細胞に作用することにより,子宮筋腫幹細胞のCTNNB1のシグナルが活性化して細胞増殖が起こる.また,WNTリガンドが自己分泌的(オートクライン)に周囲の細胞自体にも作用し,TGF-β の生産亢進を介し細胞外基質を生産し,筋腫体積の増大を引き起こすと考えている. これらのメカニズムから,WNTやWNTリガンドの受容体であるFZDを標的にした治療が想定され、治療開発の研究を遂行している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、子宮平滑筋細胞を性ステロイドで処理する事により,Wingless-type (WNT)リガンドが分泌され,傍分泌(パラクライン)により子宮筋腫幹細胞のβ-カテニン(CTNNB1)のシグナルが増強され,性ステロイドがWNT/CTNNB1を介して子宮筋腫幹細胞を増殖させることを示した. また,CD34およびCD49bの発現に基づいて3つの子宮筋腫細胞集団すなわちCD34 + / CD49b +の子宮筋腫幹細胞、CD34 + / CD49b-の中間細胞、CD34- / CD49b-の成熟子宮筋腫細胞に分けられることを報告した(Yin, et al. JCEM)。またマイクロアレイ遺伝子発現プロファイリングおよび経路分析を行いインスリン様成長因子(IGF)経路に着目した。子宮筋腫幹細胞におけるIGFシグナル伝達経路においてIGF2とインスリン受容体-A(IR-A)が、子宮筋腫幹細胞の増殖にとって重要であることを示した。 現在これらの結果をふまえて子宮筋腫に対する新規治療戦略の開発を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
子宮筋CD34/CD49b陽性細胞にレンチウイルスベクターを用いて恒常的に蛍光とルシフェラーゼを発現させることでマーキングを行う.蛍光を発する子宮筋腫幹細胞候補集団を無標識成熟子宮平滑筋細胞ととともに免疫不全マウスの腎被膜下に移植する.再構築された子宮筋腫組織のサイズを計測し,腫瘍形成能の高い細胞集団を選定する. さらに免疫不全マウス腎被膜下で形成された子宮筋腫における各子宮筋腫幹細胞の病変部での位置を蛍光顕微鏡で観察する.子宮筋腫病変での細胞動態と子宮筋腫モデル動物病変を比較して子宮筋腫幹細胞の免疫不全マウス腎被膜下移植が子宮筋腫モデル動物として妥当かを検討する. 子宮筋腫モデルマウスを用いた薬剤効果の評価 1)子宮筋腫幹細胞を用いた子宮筋腫モデルマウスの中で性ステロイドが,Transforming frowth factor-β (TGF-β)/SMAD, WNT/β-カテニン(CTNNB1), Retinoic acid, Vitamin D, Peroxisome proliferator-activated receptor γ (PPARγ), IGF経路とどのように関わっているのか検討する.具体的には性ステロイドで処理した群と処理しない群での各シグナルの解析を行う.またレンチウイルスベクターで標識された幹細胞と周囲の細胞とでの発現の違いにも着目する. 2) 1)の結果をもとに幹細胞の増殖を抑制する可能性のある薬剤を選別する. 3) 2)の結果より,幹細胞をターゲットとした薬剤を投与することでモデル動物での治療効果判定を行う.
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