2016 Fiscal Year Research-status Report
メカノバイオロジーを基盤とする新規卵巣刺激法の開発
Project/Area Number |
16K11116
|
Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
河村 七美 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 研究技術員 (70323152)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河村 和弘 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (10344756)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 生殖医学 / メカノバイオロジー / 卵胞発育 / 卵巣刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞は生体内で様々な物理的刺激に晒されており、細胞で感知された物理刺激は細胞内でシグナルに変換されて生理的・病態的応答が生じる。我々は、卵巣を断片化し物理的刺激を与えることで顆粒膜細胞内のHippoシグナルが抑制され、CCN成長因子などが産生されて細胞増殖がおこり、2次卵胞が発育することを明らかにした。本研究では、卵巣への物理的刺激による2次卵胞発育誘導を基盤に新たな不妊治療法の開発を行うことを目的としている。本年度はまず、動物モデルによる卵巣Hippoシグナル抑制に必要な物理刺激負荷量の確定を行った。先行研究で用いたマウス卵巣の半切または1/3に切離したモデルでHippoシグナル抑制による2次卵胞発育誘導効果を証明したが、マウス卵巣は小さすぎて物理的刺激の負荷量を細かく変化させながらHippoシグナルの抑制を判定することは困難であった。そこで、比較的大きいウサギの卵巣を用いて、一連の試験を行う予定をしたが、安価なラット卵巣への針を用いた刺入刺激でもHippoシグナルが抑制されることを見出し、2次卵胞発育誘導のための至適穿刺回数を決定した。卵巣への物理的刺激によって得られた卵子の質を評価するため体外受精を行ったが、卵巣への物理的刺激を行わなかった群と比較して特に差を認めなかった。 さらに本年度は臨床応用の場面を想定し、多数回の卵巣への針穿刺による出血を予防するための針デバイスの開発を行った。針デバイスとしては、卵巣に刺さった部分のみが加熱される熱凝固による止血が可能なものを考え、企業との共同開発を進めている。現在のところ、2社が試作品を作成し、その止血効果と安全性を検証しながら、改良を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、動物モデルによる卵巣Hippoシグナル抑制に必要な物理刺激負荷量を確定し、卵巣への低侵襲な物理刺激を可能とするデバイスの開発を始める予定であった。卵巣Hippoシグナル抑制に必要な物理刺激負荷量の同定は、ウサギからラットに対象動物を変更することで順調に進み、すでに完了している。また、デバイスの開発計画は3年間を予定しており、初年度で試作品の作成まで達成しているので、研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
卵巣への低侵襲な物理刺激を可能とするデバイスの開発を進め、試作品の改良を繰り返し、最終的な試験品を作製する。その後、当該デバイスを用いた2次卵胞発育の誘導法のプロトコールを確定する。さらに、卵巣への物理的刺激による2次卵胞発育誘導効果を用いた卵巣刺激法の臨床試験を、不妊を呈する多嚢胞性卵巣患者および卵巣機能不全患者に対して実施する。
|
Causes of Carryover |
最近の知見により、卵胞発育過程における様々な刺激が、卵子のエピジェネティックな変化をもたらす可能性が指摘され、本研究においても卵巣への物理的刺激後に得られた卵子の詳細なエピジェネティック解析が必要となった。卵子の網羅的なエピジェネティック解析には多額の予算が必要であることから、多くの予算を次年度に繰り越し解析に用いることを予定した。 実際、動物モデルによる卵巣Hippoシグナル抑制に必要な物理刺激負荷量の確定するための試験は、用いる動物を当初予定していたウサギからラットに変更することで大幅なコストダウンができ、卵巣への低侵襲な物理刺激を可能とする針デバイスの開発においても、企業の持ち出しで試作品を作製できたため、コストダウンができた。その結果、十分な予算を次年度使用額として予定できた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用として繰り越した予算で卵子の網羅的なエピジェネティック解析を行い、卵巣への物理的刺激後に得られた卵子の正常性について詳細な解析を行う予定である。
|