2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K11125
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
北谷 和之 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 助教 (40539235)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | セラミド / がん転移 / セラミド合成酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
新規に易転移性卵巣がんSKOV3細胞株(4株:M1-1, M1-2, M1-3, M1-4)を樹立した。これらの易転移性細胞株の細胞内セラミド量および遺伝子発現変動を、それぞれ質量分析法およびRNAseq トランスクリプトーム解析法を用いて探索した。その結果、いずれの易転移性細胞株(4株:M1-1, M1-2, M1-3, M1-4)のセラミド量およびセラミド合成酵素2の遺伝子発現は親株に比して有意に低下していることが判明した。 そこで、セラミド合成酵素2のがん転移制御への関与を明らかにするために、担癌マウスモデルにおいてセラミド合成酵素2遺伝子ノックダウンの腹膜転移への影響を検討した。その結果、セラミド合成酵素2ノックダウンにより、がん転移は促進することが明らかとなった。 さらに、セラミド合成酵素2を介した抗がん転移機序の解明のために、まず細胞運動性および浸潤性に対するセラミド合成酵素2ノックダウンの影響を探索した。その結果、セラミド合成酵素2ノックダウンにより、細胞運動性が亢進することが判明した。しかしながら、細胞浸潤性は変動しなかった。さらに同条件下に細胞内セラミド量を測定したところ、セラミド合成酵素2ノックダウン細胞では有意に極長鎖セラミド量が減少した。 セラミド合成酵素2を介して生成されたセラミドは細胞膜に輸送され、細胞膜上もしくは近傍において細胞運動性を抑えると考えられる。そこで、選択的に細胞膜セラミド量を増加させたところ、細胞運動性は有意に低下した。 以上のことから、セラミド合成酵素2を介したセラミド生成は卵巣がん細胞の運動性を抑えることでがん転移を抑制すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画が実施することができた。さらに研究結果は現在の研究仮説を指示するものであったため、スムーズに研究が実施されたと思われます。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、卵巣がん転移でのセラミドの臨床的意義を明らかにする. 婦人科腫瘍において,セラミド生成・代謝酵素遺伝子のがん組織での発現量変化を示す研究は皆無である.卵巣がんでの候補セラミド生成・代謝酵素遺伝子の臨床的意義を解き明かす. i) 卵巣がん組織候補セラミド生成・代謝酵素遺伝子発現とがん進行度/患者予後との関連性を明らかにする. 責任セラミド生成・代謝酵素遺伝子の臨床的意義を明らかにするために,卵巣がん患者の病期および予後と発現との関連性を探索する.まず,東北大学病院婦人科病理組織バンクから卵巣がん患者検体および予後情報を抽出する(50 人).病理組織での責任セラミド生成・代謝酵素遺伝子タンパク質の発現を組織免疫科学染色法により検出する.さらに責任セラミド生成・代謝酵素のタンパク質発現と患者病期・予後(全生存期間)との関連性を多変量解析法により明らかにする. ii) 卵巣がん組織セラミド量と患者予後との関連性を決定する. セラミド量の臨床的意義を明らかにするために,卵巣がん患者の予後との関連性を探索する.卵巣がん手術を施行された患者から得られたがん組織(50 検体)でのセラミド量を質量分析法により決定する.がん組織セラミド量と患者病期・予後(全生存期間)との関連性を多変量解析法により明らかにする.これにより,セラミドの卵巣転移での臨床的意義の存在を明確にする.
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Causes of Carryover |
予定していた当該年度最終実験を実施できなかったため、次年度に延期した。その結果、繰越金が10949円生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新年度早々、延期した実験を実施するにあたり、10949円の繰越金を使用する計画である。
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