2016 Fiscal Year Research-status Report
転写補助因子Ncoa6のエストロゲン感受性調節を介した子宮体癌発症抑制機序の解明
Project/Area Number |
16K11128
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
川越 淳 山形大学, 医学部, 助教 (60375342)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永瀬 智 山形大学, 医学部, 教授 (00292326)
清野 学 山形大学, 医学部, 医員 (40594320)
太田 剛 山形大学, 医学部, 講師 (50375341)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | エストロゲン / エストロゲン受容体 / 子宮体癌 / 核内受容体転写補助因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
エストロゲンは核内受容体であるエストロゲン受容体(ER)に結合し、標的遺伝子の転写を介してその作用を発揮する。子宮内膜では、エストロゲンは内膜間質細胞のERを介し、子宮内膜上皮細胞の増殖を促進する。ERの転写活性は、更に転写補助因子により調節を受ける。我々は転写補助因子の一つNuclear receptor coactivator-6 (Ncoa6)に注目し、その子宮内における分子生物学的機能について検討を行ってきた。Ncoa6は培養細胞の研究ではERの転写活性を促進する因子と報告された。しかし、我々は、子宮内膜上皮および間質細胞のNcoa6発現を抑制したマウスを作成し、Ncoa6のマウス子宮における機能を解析したところ、子宮におけるNcoa6の機能喪失は逆にエストロゲンの感受性を増加させることを明らかにした。我々は、Ncoa6が、1)子宮内膜間質細胞のERのユビキチン化を介しERの過剰発現を抑制すること、2)子宮内膜上皮細胞のERのリン酸化を抑制すること、および3)子宮内膜上皮細胞のERの転写活性化因子であるSRC-3の発現を抑制すること、により子宮内膜間質細胞および上皮細胞の両面におけるエストロゲン感受性の抑制機能があることを明らかにした。さらに、Ncoa6の機能喪失は、エストロゲン感受性増加に伴うエストロゲン活性の亢進により妊娠初期における子宮内膜の分化を阻害し、胚着床障害及び子宮内膜の脱落膜化障害により女性不妊症となることも明らかにした。そこで、Ncoa6の発現低下が、エストロゲン感受性の上昇に伴って子宮内膜癌の発症に関与するのではないかと考える。また、Ncoa6は細胞老化に関わるp53やRbの共役因子であり、Ncoa6の機能低下は、それら因子の機能低下による細胞老化により、子宮内膜癌の発症に関与すると考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
臨床検体を用いて、正常子宮内膜および子宮内膜癌におけるNcoa6の発現についての検討では、当初の予想通り、正常子宮内膜上皮ではNcoa6の強い発現を認め、子宮体癌症例では多くの症例でNcoa6の発現低下を認めている。特に発現陰性例では一部臨床所見との相関を認め、癌の悪性度と関連している可能性が示唆されている。しかし、その一方で、cell lineを用いたNcoa6の細胞増殖や癌化に関する機能に関する検討では、当初使用を予定していたcell lineのauthenticityに嫌疑が生じ、まだ具体的な成果を得られていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
良性疾患にて子宮摘出を行った検体より子宮内膜上皮細胞および間質細胞のprimary cell cultureを行い、siRNAを用いた遺伝子抑制実験にてNcoa6の機能を検討する。具体的には、①まず、内膜上皮細胞においてNcoa6の発現抑制を行い、Ncoa6の細胞増殖に対する直接的な影響を、cell proliferation assayやKi67の発現などにより検討する。②次いで、内膜上皮細胞においてNcoa6の発現抑制を行った際に、エストロゲン標的遺伝子群、特に、cyclin D1やcdkn1aなど上皮細胞における細胞増殖に直接関与する因子についてRT-PCRで検討する。③また、間質におけるNcoa6が内膜上皮細胞の増殖にどのように影響するのか、間質のNcoa6に発現を抑制したうえで、内膜上皮細胞とco-cultureし、上皮の動態への影響を検討する。さらに、子宮体癌のcell lineを追加購入し、Ncoa6発現を認める試料を用いて、Ncoa6の発現抑制を行った際の、細胞増殖や癌関連細胞内シグナルへの影響を検討する。
|
Causes of Carryover |
当初予定していたマイクロアレイ解析が、使用する培養細胞の信頼性に嫌疑が生じたため施行できず、予算を消化しなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
臨床検体より子宮内膜上皮細胞および間質細胞のprimary cell cultureを行い、siRNAを用いた遺伝子抑制実験にてNcoa6の機能を検討する。primary culture樹立のための機材購入や、新たなcell line購入、マイクロアレイ解析などに繰り越し研究助成金を使用する。
|