2017 Fiscal Year Research-status Report
妊娠初期の嚢胞化絨毛特異的分子マーカーの同定とその臨床的意義に関する研究
Project/Area Number |
16K11144
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
長谷川 ゆり 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (70627752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 清徳 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (00363490)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 全胞状奇胎 / 部分胞状奇胎 / 遺伝子診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】全胞状奇胎と部分胞状奇胎は奇胎娩出後の続発性侵入奇胎や絨毛癌の発生率に大きな違いがあるにもかかわらず(続発性侵入奇胎は全奇胎の10から20%、部分奇胎の2から4%、絨毛癌は全胞状奇胎の1から2%)、画像的に両者を鑑別することが困難なこともあり、最終診断は病理学的に行われることが多い。当科では病理学的な診断に加え、患者および配偶者の同意が得られた症例については遺伝子診断を行っており、その結果を報告する。 【対象と方法】2013年から2017年までに長崎大学産婦人科を受診し、胞状奇胎と診断した14例を対象とした。14例のうち患者および配偶者の同意を得られたのは4例であった。病理学的診断と遺伝子診断について検討した。遺伝子診断は子宮内容除去術もしくは子宮全摘術によって得られた嚢胞化絨毛、患者および配偶者の血液からDNAを抽出し、STR-PCR法により解析を行った。 【結果】4例のうち病理学的診断で3例が全胞状奇胎、1例が部分胞状奇胎と診断された。部分胞状奇胎の1例は、免疫染色において一部の細胞性栄養膜細胞および絨毛間質細胞の核にp57(Kip2)が陽性であった。しかしながら遺伝子診断では4例すべてが1精子受精の雄性発生であり、全胞状奇胎と診断された。 【結語】全胞状奇胎と部分胞状奇胎の鑑別には病理学的検索に加え、遺伝子診断が有用であると考えられた。 【今後の研究】遺伝子診断により病理検査では診断困難であった症例について確定的な診断が可能となった。今後は各症例について特異的な分子学的マーカーを同定していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全胞状奇胎と部分胞状奇胎の鑑別は現在も病理診断およびp53kip2を用いた免疫染色が確定的な手法と考えられている。当初は個々の絨毛性疾患(全胞状奇胎、部分胞状奇胎、侵入奇胎など)に特異的なマーカーを同定することを目的としていた。しかしながら、病理結果と遺伝学的検検査による診断が異なることが判明した。疾患特異的な分子マーカーを同定するためには、まず正確な診断を行うことが重要であり、これを優先して行った。そのため、まずは絨毛、患者および配偶者の血液からDNAを抽出し解析することによって、確実な診断手法を得ることができた。その上で当初の目的である疾患特異的な分子マーカーを同定するための実験を平成30年度に行う予定である。長崎大学産婦人科では以前より疾患特異的microRNAの同定を行い、報告している。絨毛性疾患においても同様に疾患特異的なmicroRNAを同定するための実験を平成30年度に行っていくため、microRNAの抽出やプローブの購入に費用を使用する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
症例をさらに蓄積していく。現時点では11症例であるが、年間約5例の症例を蓄積することが可能と考えている。これらの症例の確定診断を行った上で、疾患特異的な分子マーカーの同定を行うため、実験を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初は絨毛性疾患の診断が免疫染色を含む病理学的検索によって確定可能と考えていた。しかしながら、本年度までの検討により正確な診断を確定するためには遺伝学的検査を行うことが必要と判明した。本年度までは当初の予定を変更して絨毛性疾患のより正確な診断(特に全胞状奇胎と部分胞状奇胎の鑑別)を病理学的検討およびSTRーPCR法を用いて行った。次年度には新たな症例を蓄積することに加え、正確な診断が確定した症例に対して疾患特異的なマーカーを同定するための実験を次年度行う予定としており、次年度に予算を使用することとなった。
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Research Products
(3 results)