2018 Fiscal Year Research-status Report
乳癌のサブタイプ別に化学療法の治療効果を決定づける因子の解析と治療予測効果の検討
Project/Area Number |
16K11161
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
中嶋 亘 日本医科大学, 医学部, 講師 (40557500)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 信之 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (80222115)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アポトーシス / 乳癌 / 微小管阻害薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
転移性乳癌に対しては薬物療法が主体となり、特に内分泌療法の効果が期待できないタイプの乳癌では化学療法に頼らざるを得ないのが現状である。化学療法薬の一つである微小管阻害薬は細胞分裂に重要な作用を持つ微小管に異常な重合を促進した後に癌細胞の増殖を停止させることで、細胞死(アポトーシス)を誘導する。しかし、微小管阻害薬により細胞増殖を阻害しても、アポトーシスが誘導されにくいタイプであった癌細胞はやがて薬剤抵抗性を獲得してしまい、再び細胞分裂を繰り返し細胞増殖が進行しその後の治療に難渋することが多い。したがい、微小管阻害薬によるアポトーシス誘導を促すために必要な分子機構を理解することによって、微小管阻害薬の治療効果を高めることにつなげることが本研究の目的である。 本研究では、乳癌細胞株を用いてアポトーシスに関与する遺伝子群の発現をRNA干渉法でスクリーニングしたところ、アポトーシスを引き起こすのに重要な候補因子を同定することができた。この候補因子を発現抑制した乳癌細胞株では微小管阻害薬処理後のアポトーシスの誘導に顕著な抵抗性を示した。また候補因子の発現量が元来少なかった細胞株では微小管阻害薬に対する感受性が低くアポトーシス誘導が抑制されていたのに対し、候補因子を高発現する細胞株では微小管阻害薬に対する感受性が高いことが明らかとなった。これを実証するために、実際の乳癌患者から採取された組織臨床検体の残余分を用いて、同様にこの候補因子の発現量が微小管阻害薬の治療効果を制御しているのかを検討した。さらには、この候補因子の発現量が低い細胞株では、候補因子がエピジェネティックな制御を受けていることが明らかとなり、この候補因子の転写抑制の状態を解除させることで微小管阻害薬の治療効果を高めることができるのではないかと検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年末に、研究室が同じ大学内にある他キャンパスに移転することになり、移転による研究設備の不備、故障によりかなりの時間が修理に費やされたことで解析データを得るのに遅れが生じた。しかしながら、実験はおおむね終わっており、あとは論文としてまとめ作業が必要なだけである。
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Strategy for Future Research Activity |
実際、ほとんどの実験は終了しており、あとは解析結果をまとめて論文作成または国際学会で報告するのみとなっている。
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Causes of Carryover |
予定していた研究計画の最終年度に、研究実施場所の学内移転が決まりその準備や移転にかなりの時間が割かれた。また、移転後も運搬による実験装置機器の故障が散見されたため、修理するのにかなりの時間を要してしまった。したがってこの移転によって当初の計画よりも約4ヶ月の遅延してしまったので、そのための研究計画に充てたい。
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