2016 Fiscal Year Research-status Report
メニエール病の病因としてのアレルギーの関与に関する研究
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16K11173
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
江上 直也 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (10505895)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | メニエール病 / 内リンパ水腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
メニエール病の内耳では病理組織学的には内リンパ水腫が生じていることが広く知られているが、その病態については解明されていない点も多い。またメニエール病の原因としては、アレルギー・自己免疫・ウイルス・遺伝・水代謝異常など種々のものが考えられており、多因子疾患として病態の解明を目指した研究がすすめられている。 吸入アレルゲンや食物アレルギーに起因するメニエール病患者とアレルギーに関する臨床症例についての報告がなされている。正常内耳では内リンパ嚢が内耳の免疫反応機構を担うものと考えられている。実際にモルモットの内リンパ嚢への直接抗原刺激による実験的内リンパ水腫の報告がある。方法論としては内耳の局所感作よりも全身感作の方が抗原提示は容易であることから、実際の臨床においてメニエール病の原因となる可能性がより高いと考えられる。本研究では全身感作によるⅠ型アレルギー性内リンパ水腫動物を作成し、内リンパ水腫形成へのアレルギー関与の分子生物学的な病態解明を目的とする。 2,4-dinitrophenylated(DNP) Ascarisによる全身感作アレルギーモデル動物を作成し、形態学的にアレルギー性内リンパ水腫形成がされているかについて検討する。また肥満細胞のケミカルメディエーターであるヒスタミン及びロイコトリエン受容体の内耳における局在について免疫組織化学的に明らかにする。ヒスタミンはH1,H2,H3の各レセプター、ロイコトリエンはCysLT receptor type 1の関連が考えられる。ヒスタミンはH1,H2,H3の各レセプター、ロイコトリエンはCysLT receptor type 1の蝸牛及び内リンパ嚢における局在を免疫染色により確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2,4-dinitrophenylated(DNP) Ascarisによる全身感作アレルギーモデル動物を作成し、アレルギー性内リンパ水腫形成を確認する。これまで内耳形態学的検討手法では深麻酔下にホルマリンで経心灌流後側頭骨を採取、ホルマリンでの浸漬固定後にEDTAにて脱灰し、切片を作成、HE染色し、光学顕微鏡にて内リンパ水腫形成を確認していたが、HE標本は生体組織ではないこと、標本作製の際のアーチファクトが少なからず見られることなどの問題があった。そこで本研究では従来のHE標本による検討手法に加え、標本作製の過程で脱水処理等の操作を必要としないimaging画像撮影手法についても検討することとした。光干渉断層像(Optical Coherence Tomography, OCT)は、赤外光を用いて非侵襲的に生体組織などの不透明な構造物の断層画像を得る方法である。OCT画像ではにより蝸牛の骨壁だけでなく、その内部構造、ライスネル膜、らせん靱帯、コルチ器、基底板が観察され、HE標本で見られるのと同様の形態が認められた。 2,4-dinitrophenylated(DNP) Ascarisを2週おきに2回、背部皮下全身投与し、最終投与の1週後に2,4-dinitrophenylated(DNP) AscarisとDNP-BSA投与後、深麻酔下にホルマリンで経心灌流後側頭骨を採取、ホルマリンでの浸漬固定後にEDTAにて脱灰し、OCT画像にて内リンパ水腫形成を検討した ヒスタミンはH1,H2,H3の各レセプター、ロイコトリエンはCysLT receptor type 1の蝸牛及び内リンパ嚢における局在を免疫染色により確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
2,4-dinitrophenylated(DNP) Ascarisによる全身感作アレルギーモデル動物を作成し、OCT画像を用いて、アレルギー性内リンパ水腫形成を確認する。HE標本との差異について検討を加えアーチファクトが認められないことによる正確な内リンパ水腫の測定が可能であるかを確認する。OCTでは標本を動かすことにより、任意の断面像を得ることができるのでより詳細な水腫の観察が可能となることが推察される。 2,4-dinitrophenylated(DNP) Ascarisによる全身感作後、内リンパ嚢内腔へ出現する肥満細胞のケミカルメディエーターであるロイコトリエン受容体(CysLT1,CysLT2)及びヒスタミン受容体(H1,H2,H3,H4)の内耳及び内リンパ嚢での定量的研究を行う。ウエスタンブロット法にてロイコトリエン及びヒスタミン受容体のタンパク発現量を定量し、コントロール群と比較検討する。 先行研究において我々はロイコトリエン受容体拮抗剤及び第2世代抗ヒスタミン剤により内リンパ水腫の軽減を実験的に証明している。さらに本研究では次年度以降、ロイコトリエン受容体拮抗剤及び第2世代抗ヒスタミン剤により内耳及び内リンパ嚢での影響を分子細胞生物学的に解明する。2,4-dinitrophenylated(DNP) Ascarisによる全身感作アレルギーモデル動物にロイコトリエン拮抗薬および抗ヒスタミン剤をDNP-BSA投与1時間前に投与後し、DNP-BSA投与1時間後に採取した組織を用いてウエスタンブロット法にてロイコトリエンとヒスタミン受容体のタンパクの発現量を2,4-dinitrophenylated(DNP) Ascarisによる全身感作アレルギーモデル動物と比較検討する。
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Causes of Carryover |
アレルギー性内リンパ水腫モデル動物の形態評価法に関して当初の計画よりも進捗状況に遅れが生じ、国際学会等での発表に至らなかったため、当該助成金にわずかながら余剰が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験計画の必要を検討するほどの余剰ではなく、研究計画遂行に必要な試薬の追加購入等に使用する計画である。
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