2017 Fiscal Year Research-status Report
外有毛細胞シナプスにおけるグルタミン酸受容体の局在の同定と難聴発症機序の解明
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16K11174
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
藤川 太郎 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60401402)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川島 慶之 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (10376759)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 加齢性難聴 / グルタミン酸受容体 / デルタ型受容体 / Cbln1 / 有毛細胞シナプス / 透過型電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な目的は神経系で普遍的に発現し神経伝達に重要なはたらきをしているグルタミン酸受容体の蝸牛有毛細胞での局在と機能を明らかにすることである。主な研究手法は、ノックアウトマウス(KO)を用いて、聴性脳幹反応(ABR)やDPOAEによる聴覚機能の評価と、免疫組織化学と共焦点顕微鏡や電子顕微鏡を用いた形態学的評価である。現在は特にグルタミン酸受容体のなかでも特異な存在であるデルタ型受容体に注目して研究を行っている。デルタ型受容体はAMPA型などその他のイオン透過型グルタミン酸受容体と構造の相同性がありながら単独では受容体機能を有さない。またサブタイプであるデルタ1受容体(GluD1)はとくに小脳と内耳に強く発現があり、GluD1-KOは構音障害型難聴を示すことが知られている。さらに共同研究先である慶應義塾大学生理学教室による先行研究から、デルタ型受容体がCbln1と共役してシナプスの安定化に寄与していることがわかっている。GluD1-KOを用いた現在までの研究から、1)KOは高音域から始まる進行性の難聴を示すこと、2)GluD1の免疫染色は技術的に困難であるが、GluD1の共役の相手であるCbln1は外有毛細胞遠心性シナプスに発現していると考えられること、3)GluD1-KOおよび野生型マウスの非脱灰標本を用いた透過型電子顕微鏡による観察で外有毛細胞の遠心性シナプス間隙に形態学的に有意な変化が見られないことが分かった。以上の結果から、GluD1-Cbln1は内耳機能において何らかの重要なはたらきを有することが示唆されるが、GluD1の局在と機能を形態学的に解明することは現時点で困難であることが予想される。今後の方針として、Cbln1-KOとTagマウスを用いて機能と局在の解析を行い、間接的にGluD1の内耳における機能的意義を明らかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は内耳機能におけるGluD1の重要性を明らかにすることである。GluD1-KOを用いた聴覚機能の評価では、高音域から始まる進行性難聴を示すことが示されつつあるが、研究室のABR測定システムの動作不良のため解析が途中で止まっている。またGluD1の局在と形態学的評価については、免疫染色の手法でさまざまに条件検討を行ったがGluD1の有意な標識を得ることができなかった。また透過型電子顕微鏡でもGluD1-KOでシナプスの形態に有意な変化が観察されなかった。しかしGluD1の共役の相手であるCbln1が外有毛細胞遠心性シナプスに発現していることが免疫組織化学で示唆されている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)GluD1-KOを用いて、聴覚機能の解析と電子顕微鏡によるシナプスの形態学的解析を継続する。ABR測定システムの修繕費用はその他の研究費を合わせて来年度に予定している。 2)共同研究先である慶応義塾大学生理学教室がすでに保有しているCbln1-KOとCbln1-tagマウスを譲与いただけることになっている。これらを繁殖させて、聴覚機能評価と免疫染色を含めた形態学的評価を行う。 3)Cbln1-KOを用いた先行研究で、小脳ではプルキンエ細胞のシナプス形成が有意に減少することとPSDの形態の変化が出現することが明らかになっている。同様の変化が内耳有毛細胞シナプスでも観察されるかどうかを確認する。
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Causes of Carryover |
(理由)本研究に必要なノックアウトマウスなどのリソースが、共同研究先(慶応義塾大学生理学教室、柚崎通介教授)から提供を受けることができた点が大きい。 (使用計画)一部はABR測定システムの修繕費用となる。GluD1-KO、Cbln1-KO、Cbln1-tagマウスの飼育費用に用いる。また抗体や電子顕微鏡に必要な消耗品に用いる。意見交換や研究成果の発表のための渡航費用に用いる。
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