2016 Fiscal Year Research-status Report
蝸牛感覚上皮予定領域におけるAtoh1発現の時空間的変化と有毛細胞分化制御
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16K11179
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
楯谷 智子 京都大学, 白眉センター, 特定助教 (10512311)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 有毛細胞 / Atoh1 / 蝸牛感覚上皮予定領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、有毛細胞を含む蝸牛感覚上皮の発生過程につき研究し、有毛細胞再生医療への応用を目指している。有毛細胞・支持細胞共通の前駆細胞が運命決定なされる過程で、有毛細胞分化促進因子であるAtoh1発現様式がダイナミックに変化することに着目し、2蛍光色3Dタイムラプス撮影により個々の前駆細胞におけるAtoh1発現様式の時空間的な変化および有毛細胞・支持細胞分化への関与を明らかにする。また、光照射依存的Atoh1発現制御法を開発し前駆細胞のAtoh1発現様式を再現することによって、蝸牛感覚上皮の再生を誘導することを目標としている。 当該年度においては、Atoh1陽性細胞のリアルタイム追跡(培養蝸牛の2蛍光色3Dタイムラプスイメージング)法を確立し、蝸牛感覚上皮予定領域内における個別の前駆細胞の2蛍光色輝度・位置情報・時間情報につき膨大なデータを得た。さらにImarisソフトウエアを用いて前駆細胞のトラッキングを行ない、個別の細胞の2蛍光色輝度・位置の変化を測定した。その結果、前駆細胞のうち有毛細胞に分化する細胞ではAtoh1発現量が急上昇し、このAtoh1急上昇は時期に応じて限られた場所で起こることがわかった。まず蝸牛感覚上皮予定領域の内側端で起こり、内有毛細胞へと分化し、次いで蝸牛感覚上皮予定領域の外側端で起こり、外有毛細胞へと分化した。また、Atoh1急上昇が起こると、細胞核が上皮頂端面に移動し、外有毛細胞の場合には頂端面へ動きつつ内側寄りへ移動することがわかった。さらに、蝸牛感覚上皮予定領域の外側端でのAtoh1急上昇の限定には、ヘッジホッグシグナルが関与していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度においては、Atoh1陽性細胞のリアルタイム撮影・追跡法を確立し、蝸牛感覚上皮予定領域内における個別の前駆細胞の2蛍光色輝度・位置情報・時間情報につき膨大なデータを得た。そのデータはまだ解析しきれていないが、撮影像の質が良いために信頼性の高い結果が得られてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
Atoh1陽性細胞のリアルタイム撮影を繰り返し行ない、外有毛細胞が選別される過程はほぼ描出された。今内有毛細胞が選別される過程の撮影回数が少ないので、今後は内有毛細胞に注力したい。同時に、光照射依存的にAtoh1の発現動態を人工的にコントロールできる実験系を確立したい。
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由と使用計画) 申請時にはHes5-mCherryマウスを作成中であったが、DNAインジェクション・体外受精の結果得られたトランスジェニックマウスが実験に使用できる十分な蛍光を持っていなければ、再度マウスを作成し直さなければならなかったため、その場合にかかる費用も考慮していた。しかし、一度目の実験で十分なmCherry蛍光強度を呈するトランスジェニックマウスを得ることが出来たために、今年度の使用額が減少した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
リアルタイム撮影に用いているカールツアイスLSM780・LSM880共焦点顕微鏡は、京都大学物質-細胞統合システム拠点に所属しているが、当該年度においては使用の際に課金されなかった。しかし次年度からは受益者負担で使用の都度課金されるようになるため、その費用に充当する予定である。
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