2016 Fiscal Year Research-status Report
急性感音難聴の分子病態と治療の動態的解析-次世代シークエンスでの統合遺伝子解析-
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16K11181
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
前田 幸英 岡山大学, 大学病院, 助教 (00423327)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
假谷 伸 岡山大学, 大学病院, 講師 (10274226)
菅谷 明子 岡山大学, 大学病院, 医員 (20600224)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 蝸牛 / 遺伝子発現 / 次世代シークエンサー / DNAマイクロアレイ / 音響外傷 / 免疫機能 / 炎症機能 / パスウェイ解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度にはマウスを120dBオクターブバンドノイズに暴露し、急性感音難聴を発症させた。直後にデキサメタゾン10mg/kgまたはコントロール生食を腹腔内投与した。騒音暴露後12、24、48時間後に、以下の各群から蝸牛組織を剖出し、Total RNAを抽出した。Noise:騒音暴露後12時間デキサメタゾン投与なし、Baseline:騒音暴露前、デキサメタゾン投与なし、Dex12h:騒音暴露、デキサメタゾン投与後12時間、Control12h:騒音暴露、生食投与後12時間、Dex24h:騒音暴露、デキサメタゾン投与後24時間、Control24h:騒音暴露、生食投与後24時間、Dex48h:騒音暴露、デキサメタゾン投与後48時間、Control48h:騒音暴露、生食投与後48時間。これらのサンプルでの遺伝子発現をRNA-seqおよびDNAマイクロアレイで解析し、両者のデータで発現量が2倍以上(または1/2以下)に変動する遺伝子を、Noise vs Baseline、Dex12h vs Control12h、Dex24h vs Control24h、Dex48h vs Contro48hの比較でそれぞれ330、490、262、410種類検出した。変動遺伝子の機能をパスウェイ解析したところ、騒音暴露後12時間の蝸牛では、chemokine signaling activity、cytokine-cytokine receptor interaction、cell adehesion molecules in the immune systemといった、炎症、免疫機能に関係する遺伝子群が変動し(Noise vs Baseline の比較)、デキサメタゾン投与により、投与12時間以内で、これらの機能が制御される(Dex12h vs Control12hの比較)と示された。一方、投与後48時間経過した場合には、Neuroactive ligand-receptor interaction、synaptic transmissionといった神経伝達機能が制御されていた(Dex48h vs Control48hの比較)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の交付申請書および前倒し請求の際の計画は以下の様なものであった。マウスを騒音に暴露し、難聴を発症させる。騒音暴露直後にデキサメタゾンを全身投与し、0-12、12-24、48時間後に、内耳での遺伝子発現をRNA-seqおよびDNAマイクロアレイで検討する。 平成28年度には騒音暴露後12、24、48時間での実験を実行し、以下の様な有意なデータを得た。1)騒音暴露のみ、デキサメタゾン投与後12、24、48後に蝸牛で発現量が変動する遺伝子群を330、490、262、410種類検出した。2)これらの遺伝子群の機能をパスウェイ解析したところ、騒音暴露に起因する難聴でも、発症時には炎症、免疫機能が変動すると示された。また、デキサメタゾン投与により、投与12時間後に炎症、免疫機能が制御される。3)さらに48時間経過した時点では、デキサメタゾン投与群で、コントロール群にくらべて、神経伝達機能に関わる遺伝子群の変動を認める。4)これらの分子機能に加えて、デキサメタゾン投与12および24時間を通じて変動する聴覚関連遺伝子を10種類同定した(Trpa1、Trpv1、 Ngb、 Serpina3n、 Ret、 Prph、 Insm1、 Ngfr、Birc5、 Ccnb1)。 これらの知見は急性感音難聴における病態と治療の理解に役立つものである。当研究の目的はRNA-seqとDNAマイクロアレイを用いて、急性感音難聴の病態と治療の動態的かつ網羅的なデータを打ち出すことである。平成28年度にはこの目的にそったデータを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度中に得られたデータにより、英文原著論文をすでに執筆、投稿したので、平成28年度末から平成29年度にかけて、まず論文成果を出版する。 平成28年度に得られた主な知見では。網羅的解析で得られた仮説として、騒音暴露に起因する難聴の発症時にも、蝸牛では炎症、免疫機能が変動することが挙げられる。デキサメタゾンの作用に抗炎症作用、免疫抑制作用があることは広く知られ、当研究でもデータとして示されている。したがってこの仮説は急性感音難聴の発症、治療時のデキサメタゾンの作用機序を説明しうるものである。今後の研究の推進方策としては、音響外傷による難聴発症マウスの蝸牛組織で、解析対象を炎症、免疫機能に限定した、RT-PCRアレイを用いることが考えられる。平成28年度の遺伝子発現データはRNA-seqとDNAマイクロアレイによる網羅的データであったが、個々の遺伝子発現データとしては、RT-PCRによるデータがより信頼度が高い。RT-PCRを用いて、炎症、免疫制御に特に着目した解析を計画する。 また、平成28年度に我々の研究室で確立した実験技術としては、マウス蝸牛から、高品質のRNAを抽出する技術が挙げられる。DNAマイクロアレイやRT-PCRを用いた実験の応用として、解析対象を非コードRNAに拡大することが可能である。平成28年度におこなったマイクロアレイデータを新たに解析することにより、あるいはNon-coding RNAアレイのデータを採取することにより、難聴発症時における、非コードRNAの変動を検討することができる。
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Causes of Carryover |
平成28年度には前倒し請求した予算を含めて、以下の様な実験を行う計画だった。マウスを騒音に暴露し、騒音暴露後0-12時間、12-24時間、48時間以降に、マウス蝸牛を剖出する。蝸牛組織からRNAを抽出し、遺伝子発現を次世代シークエンサー(RNA-seq)およびDNAマイクロアレイで検討する。騒音暴露後にコントロール生理食塩水又はデキサメタゾンを腹腔内投与し、遺伝子発現を比較検討する。平成28年度にこれらの実験は問題なく実行することができた。騒音暴露による難聴の発症と、デキサメタゾンによる治療について有益なデータが得られたので、平成28年度中に、すでに英文原著論文を執筆し、投稿した。 以上の様に平成28年度には計画した実験が、問題なく実行できた。計画段階で、実験の条件設定のために必要と見積もっていた費用が残ったので、平成29年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度には、平成28年度に得られた研究成果を踏まえて、騒音暴露により難聴発症したマウスの内耳で、遺伝子発現をさらに詳細に検討する。具体的には1)分子機能を炎症、免疫機能に限定した、RT-PCRでの検討を行う。また、2)解析対象を非コードRNAに拡大した、遺伝子発現の検討を行う。 次年度使用額と、平成29年度の予算を合わせて、これらの検討に必要な、マウス購入費用、RNA抽出、RT-PCR(RT-PCRアレイ)、DNAマイクロアレイといった実験のために使用することを計画する。RT-PCRアレイ、DNAマイクロアレイは受託実験とする。 また、平成28年度に得られたデータには、解析方法を変えることにより、さらに有用な知見がもたらされる可能性がある。平成28年度中に得られた実験結果のさらなるデータ解析にも、次年度使用額を用いることを計画する。
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Research Products
(3 results)