2017 Fiscal Year Research-status Report
前庭代償の新しい評価法を用いた前庭代償の促進薬の開発:動物モデルを用いた研究
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16K11183
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
武田 憲昭 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 教授 (30206982)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂田 ひろみ 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (50294666)
北村 嘉章 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学系), 講師 (60380028)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 前庭代償 / 脱代償 / Fos / 前庭神経核 / 促進薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
Wistar系雄ラット(約150g)に右)内耳破壊手術を実施し、経時的(内耳破壊後1~21日)にMK801(1.0 mg/kg)を腹腔内に投与して脱代償を誘発し、還流固定後に、脳幹を取り出し、免疫組織化学法によりFosを染色した。左)前庭神経核のFos陽性ニューロンを、Image Jを用いて定量した。経時的にMK801を投与して脱代償を誘発し、左)前庭神経核のFos陽性ニューロンを測定したところ、内耳破壊1日後でピークとなり、14日後に消失した。すなわち、前庭代償の初期過程の完成は1日後、後期過程の完成は14日後であることが明らかになった。前庭代償の初期過程の完成は、内耳破壊術後に生じる自発眼振の消失時期と同時期でもあることから、内耳破壊術後の眼振の経時変化は前庭代償の初期過程を反映することが明らかとなった。以上より、前庭代償モデルラットのコントロール群を作成した。 ヒスタミンH3受容体は中枢ヒスタミン神経のシナプス前部に存在し、ヒスタミンの合成や遊離を抑制する自己受容体であることから、H3受容体拮抗薬は前庭神経ニューロンを興奮させる可能性が示唆されている。右)内耳破壊術術後ラットにH3受容体拮抗薬であるthioperamideを浸透圧ポンプにより持続投与(3.5mg/kg/日)し、前庭代償の初期過程と後期過程に及ぼす効果を検討した。Thioperamide投与群は、コントロール群との間に内耳破壊術後の自発眼振数の経時変化に有意差を認めなかった。一方、thioperamide投与群は、コントロール群と比べ、術後7.10.12日目において脱代償で発現する左)前庭神経核のFos陽性ニューロン数を有意に早期に減少させた。つまり、H3受容体拮抗薬であるthioperamideは、前庭代償の前期過程には影響せず、後期過程を促進することで前庭代償を促進させることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度(平成28年度、初年度)に本研究の特色である前庭代償の新しい評価法を開発したが、その開発スケジュールがやや遅れたため、本年度(平成29年度)の研究にもやや遅れが生じた。具体的には、本年度に純粋なH3受容体拮抗薬であるthioperamideが前庭代償の後期過程を促進することを明らかにしたが、臨床で用いられるH3受容体拮抗薬であるbetahistineの前庭代償に与える影響については現在、実験を継続中である。また、前庭代償の初期過程に影響すると考えているGABAA受容体のαサブユニットに結合してGABAの作用を増強するdiazepamは、通常の浸透圧ミニポンプでは予定していた用量での投与が困難であったため、腹腔内投与で実験を行ったが、その鎮静効果が眼振に影響することがわかった。そこで大型の浸透圧ミニポンプに変更して現在、実験を継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床で用いられるH3受容体拮抗薬であるbetahistineの前庭代償に与える影響については、ほぼthioperamideと同様の結果が得られる予定である。また、GABAA受容体のαサブユニットに結合してGABAの作用を増強するdiazepamは、投与方法として大型の浸透圧ミニポンプを採用したことで順調に実験は進んでおり、前庭代償の初期過程に対する影響について結果が得られる予定である。来年度(平成30年度)は、betahistineとdiazepumをともに大型の浸透圧ミニポンプで併用投与することで、予定通りに研究が推進できると考えている。
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Causes of Carryover |
理由:昨年度の前庭代償の新しい評価法の開発スケジュールがやや遅れたため、本年度の研究にもやや遅れが生じ、betahistineやdiazepamなどの試薬の購入が遅れたため。
使用計画:平成30年度にbetahistineやdiazepamなどの試薬を購入して使用する。
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