2017 Fiscal Year Research-status Report
グルタミン酸イメージングによる加齢性難聴の病態解明
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16K11204
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
鷹合 秀輝 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 感覚機能系障害研究部, 研究室長 (70401354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大島 知子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 感覚機能系障害研究部, 流動研究員 (50731783)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 加齢性難聴 / グルタミン酸イメージング / 蝸牛 / 有毛細胞 / 蝸牛神経 / シナプス / 聴覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では加齢性難聴モデルとしてC57BL/6JマウスおよびDBA2/Jマウスを用い、若齢群と加齢群に分けて内耳・内有毛細胞および外有毛細胞のシナプス伝達機能を細胞レベルで比較する。このために興奮性シナプスの神経伝達物質であるグルタミン酸に結合する蛍光プローブを活用して、内耳にある内・外有毛細胞と蝸牛神経間のシナプスを対象としてグルタミン酸の開口放出を可視化する。そして若齢群と加齢群の神経伝達物質放出様式を比較し、「加齢に伴い有毛細胞シナプスにおける神経伝達物質放出量が減少する」という仮説を検証して加齢性難聴の病態を解明する。以下に平成29年度の研究成果を記す。 1. 若齢C57BL/6Jマウスの内耳・内有毛細胞を対象としてグルタミン酸イメージングを行い、時間解像度が不十分ながらも神経伝達物質放出による蛍光シグナル上昇を確認し得た。 2. 加齢C57BL/6Jマウス蝸牛からコルチ器を状態良く取り出すことが容易でないため、有毛細胞を単離する方法に切り替え、条件検討を進めているところである。 3. 若齢C57BL/6Jマウスの内耳・外有毛細胞からカルシウム電流を測定し、先行研究(Beurg et al. J Neursoci. 28:1798-1803, 2008.)と同様の結果を得ている。 4. 聴覚中枢・Calyx of Heldにおいてシナプス前部NMDA型グルタミン酸受容体の活性化により電位依存性カルシウムテャネルが抑制されて神経伝達物質放出が減少するという知見を、国際誌に発表した(Oshima-Takago & Takago, Open Biol. 7. pii:170032, 2017)。 更に、聴覚系のイオンチャネル型グルタミン酸受容体に関する総説を国際誌に発表した(Takago & Oshima-Takago, Hear Res. 362:1-13, 2018)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
若齢C57BL/6Jマウス蝸牛・内有毛細胞を対象としてグルタミン酸蛍光プローブを用いてイメージング実験を行い、神経伝達物質であるグルタミン酸の放出による蛍光シグナル上昇を確認した。しかしながら、膜表面に結合した蛍光プローブのシグナルが弱いために十分な時間解像度が得られず、秒単位での記録に留まった。この問題の解決に向けての糸口をつかむため、蝸牛有毛細胞シナプスと類似の構造を有する網膜双極細胞シナプスに着目し、網膜双極細胞シナプスも対象としてグルタミン酸イメージング実験を行いながらプローブの改良を進めた。 また、加齢マウス蝸牛よりコルチ器標本を作製したが、細胞のコンディションが不安定なため、グルタミン酸イメージング実験に供することができなかった。このため、単離有毛細胞を実験に用いることとし、酵素濃度等の条件検討を進めている。 更に、若齢C57BL/6Jマウス外有毛細胞のグルタミン酸イメージングへの準備として、シナプス機能と関連するカルシウム電流の測定を行った。 これらの実験と並行して、聴覚系のイオンチャネル型グルタミン酸受容体に関する論文を2報国際誌に発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
改良したグルタミン酸蛍光プローブを用いて、加齢マウス有毛細胞のグルタミン酸イメージング実験を行う。そして、弱齢マウスと加齢マウスから得られたデータを比較して、加齢性難聴における有毛細胞シナプス障害のメカニズムを解明し、研究成果を発表することを目指す。
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Causes of Carryover |
理由:実験動物を所属施設内の経費にて調達することができたため。 使用計画:実験動物購入費、試薬購入費、学会出張費など。
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