2016 Fiscal Year Research-status Report
匂い分子結合タンパク質の生理機能の解明とドラッグ・デリバリーへの応用
Project/Area Number |
16K11206
|
Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
澤田 研 室蘭工業大学, 工学研究科, 准教授 (50304308)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 匂い分子結合タンパク質の生理機構 / 嗅覚輸送によるタンパク質の脳での分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
両生類の嗅粘液に存在する匂い分子と結合する匂い分子結合タンパク質の生理的役割を解明し、本タンパク質を用いた脳への薬剤輸送系の確立のための基盤研究が目的である。 ①平成28年年度は生理機能の解明においては本タンパク質による嗅神経細胞の匂い分子に対する感度上昇現象の詳細な解析を行った。嗅神経細胞の濃度依存性を解析した結果、複数の神経細胞の応答性の異なる神経細胞があり、これらの神経細胞の応答性の組み合わせにより匂い分子とその濃度の同定を行っていることが明らかになった。嗅神経細胞の本タンパク質による感度上昇は少なくとも10倍以上の感度上昇が見られた。この時、本タンパク質とμMオーダーで結合できる匂い分子では感度上昇が見られた。また、嗅神経細胞の選択性があることも確認できた。水棲時と陸棲時での分布に違いがあることを見出しその時間依存性を解析した結果、本タンパク質は発現細胞であるボウマン線では水陸時でタンパク質の発現は見られたが、生理機能を行う粘液には陸棲環境の場合のみで陸棲後10分程度で粘液に分泌されていることがわかった。イモリの陸棲環境への適応変化の1つであることを見出した。また、解析した匂い分子がイモリにとってどのような行動学意義があるかを実験装置を作成し解析した結果、解析した匂い分子において嫌悪感を示す結果が得られた。このうち、嫌悪感の強い匂い分子では忌避行動が見られた。 ②本タンパク質を用いた嗅覚輸送を用いた脳へのドラッグ・デリバリー・システムの確立において本タンパク質の匂い分子結合選択性を解析した結果、異なる環構造だけでなく鎖式構造の分子に対する結合能を有する変異体を作成た。また、本タンパク質をマウスの嗅組織から投与することで約1時間程度で脳全体にタンパク質が輸送されていることがわかったが、本タンパク質に結合した蛍光分子Bis-ANSの輸送は現在解析中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本タンパク質の生理機能解析では当初の予定通り研究は進んでいる。 しかし、本タンパク質を用いた嗅覚輸送による脳へのドラッグ・デリバリー・システムの確立の方では、嗅覚輸送経路自体が不明な点がおおくあり、特にタンパク質を嗅組織に投与する方法と特に添加量の検討に時間を予定以上に費やした。ただ、現在ではこの点は改善されており、ある程度の時間依存的な脳での分布を明らかにした。本計画の予定では本タンパク質に結合した低分子の脳での分布確認もタンパク質の分布と並行して行っていたが添加量の問題から低分子の観察ができていなかった。しかし、上記したようにこの点は改善されてからは優先的にタンパク質の分布の方に集中して解析しており、現在は低分子の分布の解析を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究計画は概ね順調に進展しており引き続き研究実施計画通り推進してく予定である。具体的には、本タンパク質の生理機能解析において本タンパク質による嗅神経細胞の匂い分子に対する感度上昇に関与するアミノ酸領域の同定を目指す。また、感度上昇において匂い分子の構造との関係を解析する。匂い分子の生理的役割は28年度に引き続き解析を行う。特に水棲時での解析を行う。 一方、ドラッグ・デリバリーシステムの解析では、28年度に引き続き投与タンパク質と低分子の分布を明らかにするとともに嗅覚異常モデルのマウスを作成し、薬剤投与による治療との解析を開始する。
|
Research Products
(5 results)