2016 Fiscal Year Research-status Report
凝固系因子の線維芽細胞や好酸球に対する作用に注目した好酸球性鼻副鼻腔炎の病態解明
Project/Area Number |
16K11212
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
清水 志乃 滋賀医科大学, 医学部, 医員 (50505592)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 猛史 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (00206202)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 好酸球性副鼻腔炎 / 線維芽細胞 / トロンビン / 活性化第10因子 / TGF-beta / fibronectin / PARs / eotaxin |
Outline of Annual Research Achievements |
好酸球性鼻副鼻腔炎は、成人発症の気管支喘息やアスピリン喘息に合併することが多い難治性疾患である。患者は増加傾向にあり、著明な好酸球浸潤を伴う再発しやすい鼻茸、粘度の高い鼻汁、嗅覚障害を特徴とする。いまだに発症機序は十分解明されておらず、治療の効果も限定的である。本研究では、好酸球性鼻副鼻腔炎における凝固・抗凝固因子の線維芽細胞や好酸球に対する作用を明らかにし、こうした作用をターゲットにした新たな局所治療薬の開発を目指す。 まず、好酸球性副鼻腔炎の鼻茸線維芽細胞を実験に用いた。Protease-activated receptors (PARs)のPAR-1, 2, 3, 4がいずれも発現していることをRT-PCRと蛍光免疫染色で確認した。次に細胞をトロンビンや活性化第10因子で刺激し上清中の各種成長因子、サイトカイン、細胞外マトリックスの変化を検討した。PDGF、VEDFなどの成長因子濃度に変化は認めなかった。一方、TGF-beta濃度は加えたトロンビンあるいは活性化第10因子の濃度に応じて増加した。細胞外基質のフィブロネクチン濃度も同様に増加することが分かった。PAR-1, 2, 3, 4それぞれのアゴニストペプチドによる刺激ではPAR-4以外の刺激でTGF-beta及びフィブロネクチン濃度は上昇した。トロンビンや活性化第10因子が鼻茸線維芽細胞に作用して、好酸球浸潤に関わるeotaxinやRANTESといったケモカインの産生も促進させることを確認した。こうした結果から、トロンビンなどの凝固因子が線維芽細胞からのサイトカインや細胞外基質を介して、鼻茸形成などの組織リモデリングや好酸球浸潤に関与すること明らかとなった。 好酸球性副鼻腔炎の鼻茸由来の線維芽細胞以外に、非好酸球性副鼻腔炎の鼻茸や下鼻甲介由来の線維芽細胞について同様の検討を行って病態との関連を比較する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
線維芽細胞を用いた検討は予定通り進行している。トロンビンや活性化第10因子などの凝固因子によって、サイトカイン、ケモカイン、細胞外基質の産生が更新することを確認した。Protease-activated receptors (PARs)それぞれのアゴニスト蛋白を用いてPARsの介在する反応であることも明らかにした。当初考えていた成長因子の産生刺激は限定的であった。 好酸球の検討は予定よりやや遅れている。末梢血から分離した好酸球を用いて測定した組織因子活性については、トロンビン・TNF-alfa刺激などの炎症性メディエーターによる活性促進作用を認めた。
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Strategy for Future Research Activity |
線維芽細胞については計画に沿って、トロンボモジュリンによるサイトカイン産生の抑制作用を検討する。好酸球は細胞株や末梢血好酸球での検討を先に進め、鼻茸分離好酸球の分離についても進めていく予定である。末梢血から分離した好酸球と鼻茸組織から分離した好酸球の機能の違いを、組織因子発現や、サイトカイン・ロイコトリエン産生の面から比較検討したい。 また、ラット鼻炎モデルにトロンボモジュリンを点鼻投与し、鼻粘膜の粘液産生、好中球・好酸球浸潤への影響など、その抗炎症作用を検討したい。
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[Journal Article] Thrombin and activated coagulation factor X stimulate the release of cytokines and fibronectin from nasal polyp fibroblasts protease-activated receptors2017
Author(s)
Shimizu, S., Tojima, I., Takezawa, K., Matsumoto, K., Kouzaki, H., Shimizu, T.
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Journal Title
American journal of rhinology & allergy
Volume: 31
Pages: 13-18
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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