2016 Fiscal Year Research-status Report
振動刺激による新たな嚥下障害治療法確立のための神経基盤解明
Project/Area Number |
16K11237
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
齋藤 和也 熊本大学, 教育学部, 准教授 (20301997)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 振動刺激 / 嚥下障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は嚥下口腔相の固有感覚が咽頭相への移行に促進的に作用する可能性を明らかにすることを目的として計画された。作業仮説として、咬筋などの閉口筋群筋紡錘由来固有感覚のフィードバックが三叉神経中脳路核を介して脳幹網様体の嚥下関連ニューロン群の活動を調節していると考えた。これを実験的に検証するため、ヒトを対象にした臨床神経生理学的実験と、動物を用いた実時間光計測を行った。このうち、平成28年度は、ヒトを対象として振動刺激によって閉口筋、特に咬筋の筋紡錘を特異的に興奮させることで、その後の嚥下動態に与える影響を臨床神経生理学的手法により明らかにするための実験を中心に実施した。 振動刺激による嚥下動態への影響が確認されれば、次の段階としてその神経基盤を動物実験で調べる予定である。この場合の動物モデルとしてi)成熟動物での脳摘出標本作成が可能であること、ii)膜電位感受性色素を用いた広範囲の脳機能のイメージングを行うため、同色素に感受性があること、iii)比較的小型の動物であること、が求められる。以上の条件をクリアーするものとして、本実験では動物の確保、飼育が比較的容易なアカハライモリCynops pyrrhogasterを使用し、咬筋を振動刺激した時の感覚フィードバックの経路を膜電位感受性色素を利用した脳機能画像を中心に調べる予定である。 閉口筋への振動刺激によって嚥下反射惹起を促進するという新たな嚥下障害治療戦略が確立できれば、脳血管障害の急性期のリハビリテーションなど様々な臨床応用が期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は、嚥下動態評価のために、咬筋および舌骨上筋群の表面筋電図と、甲状軟骨運動をレーザー変位計の同時記録方法および解析方法を確立した。また咬筋への振動刺激のために周波数、振幅をシステマティックに変化させることの可能な振動発生器の導入を行った。振動刺激前後での嚥下動態の変化を記録解析している。 これまでのところ、嚥下動態に対して効果的に影響を与える至適条件(振動周波数、振幅、刺激部位、刺激方向)を決定するに至っていない点で、当初の予定からするとやや遅れていると評価している。 考えられる原因の一つは、振動子が単一のため、一方の咬筋のみを刺激するにとどまっていることである。今後この点を改善しながら研究を進めてゆく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は現在の実験をさらにすすめ、至適振動刺激条件を決定してゆく。十分な刺激効果が得られない場合は、振動刺激を両側の咬筋に同時に加えられるように、刺激装置の改良を加える予定である。また状況に応じて咬筋筋紡錘同様に三叉神経第三枝を介してフィードバックを行う歯根膜受容体への振動刺激を試みる予定である。遅くとも平成29年度中に至適刺激条件を決定し、当初予定の動物標本に対する脳機能画像を用いた実験にしてゆきたいと考えている。
|