2016 Fiscal Year Research-status Report
喉頭亜全摘出術SCL-CHEP:長期予後に関する包括的検討
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16K11243
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
中山 明仁 横浜市立大学, 医学研究科, 客員准教授 (20207955)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 頭頸部癌 / 喉頭癌 / 機能温存 / 亜全摘術 / 嚥下機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
喉頭亜全摘出術Supracricoid laryngectomy with Cricohyoidoepiglottopexyについて、 1)長期予後の臨床的解析と病理所見の関連性の解析を行う:喉頭癌は予後の良好な頭頸部悪性腫瘍の一つである。進行癌になると喉頭全摘出術が多用され、機能温存には化学放射線同時併用療法が用いられる。化学放射線治療後の再発例の救済手術では合併症が多く、治療が困難となる。喉頭癌進行例や救済手術としての亜全摘の治療効果と長期成績について検討した。亜全摘の腫瘍学的、機能面での治療成績は照射例でも非照射例でも変わらないことが証明されている。亜全摘100例の局所再発率は7%であった。局所再発は特にT3-T4の進行癌で多く認められ、患側披裂部後端~声門下領域での制御が困難な症例が多かった。長期成績を追跡し、大切片標本による局所進展形式と対比させることで、喉頭癌の進展の特徴を捉え、局所再発率を低下させる。 2)嚥下機能の長期経過の解析を行う:喉頭亜全摘出術の嚥下機能嚥下機能の獲得率や長期経過した時の誤嚥性肺炎の問題が指摘されている。長期経過症例の咽頭食道造影、嚥下内視鏡検査などを用いて経時的に嚥下機能の予備的集積を行っている。集積した結果を解析し、嚥下リハビリテーションの効果に還元する。80歳を超える亜全摘患者にしばしばみられる、咽喉頭粘膜のPliability柔軟性の向上が嚥下機能を代償している。新声門が機能するためには、Cricoarytenoid Unit(以下CAU)の温存は不可欠である。CAUは輪状軟骨と披裂軟骨(両側・片側)と内喉頭筋(後輪状披裂筋:後筋,外側輪状披裂筋:側筋,披裂筋:横筋)と上喉頭神経、反回神経からなる。CAUによってもたらされる新声門の閉鎖は術後の喉頭機能を維持する上で重要であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
喉頭亜全摘出Supracricoid laryngectomy with Cricohyoidoepiglottopexyについて、施行症例を集積し、順調に経験を重ねた。集積した119例について、舌骨と頸椎(A)、輪状軟骨前縁と頸椎(B)の距離を計測し、術後の新声門の開大の状況と照合した。その結果、Bの距離がAを上回った場合、有意に新声門の狭窄が起きることが明らかとなった。舌骨が輪状軟骨より後方に固定されると舌骨が内腔に突出し、披裂軟骨と近接して新声門の狭小化を来すことが分かった。119例の中の20%24例が二期的な修正手術を要した。24例の60%が新声門の狭小化による気道の狭窄例で、全例が経内視鏡的修正手術で適切な新声門のスペースを獲得できた。新声門の狭窄ではなく、拡大症例の二期的介入が困難であることも明らかとなった。頬部脂肪体採取し、ナビゲーションガイド下に新声門の責任部位に注入することを試み、誤嚥症状の改善を示した症例を経験した。注入脂肪は術後30%にまで吸収され減少することが明らかとなったが、介入時の過剰注入を意識することで、良好な結果をもたらすことが明らかとなった。二期的修正が必要な症例が20%あったことはやや高いと思われたが、今後亜全摘の術式を簡潔に、適切に修正することを検討することで、合併症の頻度を減らせればと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
喉頭亜全摘出Supracricoid laryngectomy with Cricohyoidoepiglottopexyについて、腫瘍学的側面の長期予後をさらに追跡する目的で、亜全摘標本における喉頭癌の局所進展と予後に与える影響を継続検討する。特に声門下進展を予測する因子を確認し、術前に評価可能か検討を行い、臨床診療に還元する。 前年度の検討にて119例の亜全摘の中で20%の症例に新声門の再修正が必要であったことが明らかとなったことから、この合併症の比率を低下させるために、手術術式の見直しを行う。具体的には外切開の侵襲を少なくし、腫瘍学的に問題のない範囲内で、不必要な筋組織への操作をどれだけ避けることができるかを検討する。さらに、経口的アプローチの併用が可能かについても検討する。ターゲットとする喉頭3/4について、上部1/3を経口的に操作できれば、下部2/3の操作で頸部側の侵襲を軽減させることができる可能性がある。いわゆる、ハイブリッド手術の可能性について検討する。経口的アプローチについては、いずれロボット手術を導入する可能性についても排除するものではない。機器の進歩により、低侵襲化がどれだけ進み、腫瘍学的に、機能的にも支障を来さないかについても検討する。
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Causes of Carryover |
当該年度は学会発表がなく、計上した旅費を使用しなかった。さらに謝金も発生しなかったことから使用額の次年度への繰り越しを計上した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たな研究資料の集積や学会発表を計画しており、旅費の消費が見込まれている。さらに研究アドバイザーの招請の可能性もあり、謝金を計上する可能性がある。
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