2016 Fiscal Year Research-status Report
難治性黄斑疾患症例に対する観察研究の新規解析法の開発と臨床的有用性の検討
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16K11260
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小畑 亮 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80625434)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 観察研究 / IPTW法 |
Outline of Annual Research Achievements |
観察研究のデータを用い、統計的手法を駆使してバイアス処理を併用したデータ解析により統計的知見を得る研究報告は本邦の眼科領域においては未だ乏しい現状であるが、無作為対照試験の施行に様々な障壁が存在する本邦において極めて有益な研究手法であると考えられる。今年度の目的として黄斑疾患症例データベースを用いて臨床上因果関係を推定することが重要な因子に関し、異なる種の暴露群間での観察研究を行った。すなわち、滲出型AMDにおいて臨床上広く使用される2種の抗vascular endothelial growth factor (VEGF) 抗体薬剤を用いた治療を通常外来診療で行われた症例群に関して、長期的な視力予後に差があるか、を検討した。東京大学附属病院眼科外来を受診し、2009年6月から2014年8月の間に滲出型加齢黄斑変性に対して抗VEGF薬硝子体注射治療を開始し、2年以上経過観察された症例を黄斑専門外来症例データベースを用いて抽出した。導入期に使用された抗VEGF薬、年齢、性別、病型{polypoidal choroidal vasculopathy (PCV) またはそれ以外の病型}、光線力学療法(photodynamic therapy)施行歴の有無、ベースラインlogMAR視力、2年後の視力維持改善の有無、ベースライン網膜厚について過去の病歴から調査を行った。抗VEGF薬の違いと視力予後との関連について検討することを目的とし、バイアスとなりうる各因子を調整するためinverse probability of treatment weighting (IPTW) 法を用いて調整した条件のもとでのロジスティック回帰分析を行った。その結果、異なる抗VEGF薬間において、2年後の視力予後に有意な差は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
VEGF 阻害薬は無作為化臨床試験(RCT)で効果を示された頻回の投与は臨床実地においては施行が困難であり、そのような理想的な投与法から脱落した症例が多いために、RCT で示された成績が臨床実地では再現できないとの問題も提示されている。今回研究目的に則して黄斑疾患症例データベースを用いて、臨床上重要な暴露因子についての検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も同様の検討を行い、学会および論文発表の準備を進める。
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Causes of Carryover |
今年度の解析で用いたデータベースが比較的小規模であったためワークステーション購入が延期された。今後大規模データベースによるより複雑な解析を行うため、次年度以降に購入を行う予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ワークステーション備品などの購入に使用する予定である。
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