2016 Fiscal Year Research-status Report
非侵襲的糖化終末産物計測による糖尿病合併症に対するリスク評価法の開発
Project/Area Number |
16K11283
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
村田 敏規 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (50253406)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 隆雄 信州大学, 医学部附属病院, 助教(特定雇用) (90735151)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 糖化終末産物 / 水晶体 / 糖尿病網膜症 |
Outline of Annual Research Achievements |
水晶体中の糖化終末産物advanced glycation endproducts (AGEs)含有量を間接的に計測できる、自発蛍光値(Lens AF)をClearPath DS-120を用いて測定した。対象は糖尿病群48例と年齢をマッチさせた非糖尿病群30例であった。水晶体の自発蛍光値と糖尿病の有無の関連をまず検討した。これは、内科医がいない状況での、人間ドックなどでの糖尿病のスクリーニングを、採血結果が出る前にある程度の判定を可能にすることを目指す。この検査は採血が必要ないので、簡便に多数の被験者に施行可能である。これが高値であれば、内科受診をすすめる根拠となる。 さらに糖尿病網膜症の病期(重症度)について関連を検討した。Lens AFは糖尿病群が非糖尿病群に比し有意に高かった(p<0.0001)。これは、このスクリーニング検査で糖尿病網膜症の有無をある程度判定できる可能性を示す。さらに国際重症度分類とLens AFの関係を統計学的に解析すると、Lens AFは非糖尿病群と比べ網膜症なし、軽度非増殖糖尿病網膜症では有意差は認めないが、中等度非増殖糖尿病網膜症、重症非増殖糖尿病網膜症、増殖糖尿病網膜症では有意に糖尿病なし群よりも高かった。(それぞれp>0.9999、=0.4090、=0.0295、<0.0001、<0.0001)。以上より水晶体内の糖化終末産物AGEs含有量を反映する水晶体の自発蛍光値は、糖尿病の有無と網膜症の重症度を評価する際に有効であることが示唆された。本方法は、非侵襲的で、時間を要さない検査である。将来的にはスクリーニング機器の一つとして使用できるデーターを揃える、第一歩となった研究と考えている。本内容については2016年5月にシアトルで行われた米国眼科学会年次総会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、水晶体中の糖化終末産物を糖尿病患者で計測して、これが糖尿病網膜症の有無と相関があること、更には至急治療を要する増殖糖尿病網膜症を始めとして糖尿病網膜症の進行程度とある程度相関すること、が症例数が少ないが統計学的有意差を持って明らかとなりつつある。しかもこの操作は患者の目に弱い光を当てるだけで可能であり、数秒で非侵襲的に行うことができる。現在糖尿病網膜症のスクリーニングには、眼底写真をとり後日眼科医の判定が必要だが、瞬時により確実に糖尿病網膜症の存在のリスクを判定できる。また糖尿病の診断ための採血のように時間をとらず即時に判定ができる。これらのことから、症例を増やして精度を上げれば、非侵襲的糖尿病網膜症のスクリーニング法として確立できる可能性がある。 研究実績の概要に記載した内容を以下の2箇所で報告した。 2016年5月にシアトルで行われた米国眼科学会年次総会で報告した。タイトルはAssociation of diabetic retinopathy severity with lens fluorescence ratio reflecting advanced glycation end product levelで、presentation number5441であった。 2016年8月に熊本県で開催された、第12回レドックス・ライフイノベーションシンポジウムにおいて、眼科領域における終末糖化産物含有量を反映する自発蛍光値の検討というタイトルで、招待講演を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
更に症例数を増やして、水晶体の糖化終末産物蓄積量を反映すると考えられる、水晶体の自発蛍光が、糖尿病の有無の非侵襲的で簡便かつ迅速なスクリーニングに使用できるか否かについて検討する。必要であれば、内科受診を被験者に勧告するcut off値を決定したい。 あわせて、自発蛍光値が高値になれば、糖尿病網膜症のリスクも上昇する。眼科医が眼底を観察しなくても、糖尿病網膜症の有無を推測できるまでの精度が得られるように、これも症例数の蓄積を計る。最終的には、糖尿病の有無を確定診断するための内科受診だけでなく、糖尿病網膜症のハイリスク群に、眼科受診を勧告できるまでの精度をもって、cut off値を決定したい。 もう一つの糖化終末産物測定機器で、広く使われているAGEreaderを用いて、水晶体と皮膚の糖化終末産物の測定値の相関を決定する。水晶体と皮膚、どちらも非侵襲的に短時間で糖化終末産物の沈着を自発蛍光値で計測できる。2つのデーターから総合的に判断すれば、糖尿病の有無のスクリーニング、および糖尿病網膜症のスクリーニング目的で使用できる可能性が高まる。確定診断はあくまでも、内科および眼科を受診しなければ決定できないが、その受診を内科医、眼科医がいない状況でも、被験者に勧める根拠となるほどの精度をめざす。
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