2016 Fiscal Year Research-status Report
高脂肪食による加齢黄斑変性発症のレニン・アンジオテンシン系による制御
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16K11302
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
永井 紀博 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (10327611)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高脂肪食 / 酸化低比重リポタンパク / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
高脂血症は先進国における失明の主因である加齢黄斑変性の発症を5倍も増加させることが疫学研究で報告されている。我々は臨床研究において動脈硬化の病態因子である酸化低比重リポタンパク(酸化LDL)が、加齢黄斑変性を抑制する黄斑色素密度と逆相関することを明らかにした(Nagai , Ozawa et al, Retina 2015)。今回、高脂肪食による網膜、脈絡膜に対する作用と、レニン・アンジオテンシン(RA)系の関与について動物モデルを用いて解析した。 7週齢オスのBalb/Cマウスに高脂肪食、コントロール食餌を1ヶ月間または3ヶ月間投与し高脂肪食モデルを作成した。高脂肪食には32%の脂肪を含有する餌(High Fat Diet32、日本クレア)を用いた。RA系の抑制にはアンジオテンシンII 1型受容体阻害薬Valsartan(5mg/kg体重)を使用し、高脂肪食を3週間投与後に7日間腹腔内投与した。網膜機能の解析のために網膜電図を測定した。網膜色素上皮・脈絡膜における酸化LDLの発現をELISA法、免疫染色法で解析した。脈絡膜、腹腔内へのマクロファージ浸潤と極性を定量PCR法で解析した。 高脂肪食マウスでは内臓脂肪と体重の増加がみられた。酸化LDLは網膜色素上皮細胞と浸潤したCD68陽性細胞に発現しており、発現量は高脂肪食投与により増加し、Valsartan投与で減少した。脈絡膜および腹腔内において、M2マクロファージが高脂肪食で増加し、Valsartan投与で減少した。M1マクロファージの発現には変化がなかった。 高脂肪食によりマウスの内臓脂肪と体重が増加した。マウスの網膜・脈絡膜における酸化LDLとM2マクロファージ浸潤が高脂肪食による網膜障害に関わり、アンジオテンシンII 1型受容体阻害薬によって予防できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高脂肪食マウスでは内臓脂肪と体重の増加のモデルを作成した。また病態分子としての酸化LDLが網膜色素上皮細胞と浸潤したCD68陽性細胞に発現しており、発現量は高脂肪食投与により増加することを見いだした。また酸化LDLとレニンアンジオテンシン系の関連も見いだした。
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Strategy for Future Research Activity |
高脂肪食モデルマウスにおける視機能を評価するためにマウスの網膜電図(ERG)を使用する。さらに解析した網膜電図から読み取れる視機能低下の原因となる障害部(網膜)を中心に解析する。例えば、Oscillatory Potentials (OP)の異常であれば、網膜内層を重点的に解析する。さらに、シナプスタンパクであるシナプトフィシンや、視細胞に含まれるロドプシンとオプシンなど分子についての解析もWestern blot 法で行う。小胞体ストレスや電子顕微鏡による解析も行う。
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Research Products
(1 results)