2016 Fiscal Year Research-status Report
視細胞保護のための光作動性ペプチド誘導ベクターの開発
Project/Area Number |
16K11314
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
菅野 江里子 岩手大学, 理工学部, 准教授 (70375210)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富田 浩史 岩手大学, 理工学部, 教授 (40302088)
田端 希多子 岩手大学, 理工学部, 学術研究員 (80714576)
坂尻 徹也 盛岡大学, 栄養学部, 助教 (40412928)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 視細胞変性 / オプトジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、光作動性ペプチド誘導ベクターの開発を目指す。 本年は、SyPixEのSyPixDに対する結合ドメインの検索を行ったが、SyPixEの情報が極めて少ないため、候補の絞り込みが難しく候補が多数となることが分かった。そこで光徐放システムが機能するかを調べることを第一目的すること、と変更した。そのため、SyPixEをコードする遺伝子1143bpを全て発現させることとした。そこでまず、本光徐放システムを簡易系で確認し、その後、ドメインの検討実験を行っていくこととした。 簡易系のターゲットとして、チオレドキシン(Trx)を用いることとした。Trxは正常な細胞であれば細胞質等に存在するが、酸化ストレスを受けることにより、核内に移行し、転写因子Ref-1と結合して酸化的DNA障害を修復することが知られている。そこで、PixDとPixEが結合した状態ではタンパク質としてのサイズが大きく核移行できない、しかし、光により遊離した場合には、PixE-Trxが移行し修復する、この様子を観察できないか、と考えた。本実験の第一に、このTrxがSyPixEと融合した状態で発現させた場合、Trxは機能を持つのか、SyPixE-Trx発現株を作製し調べる予定である。 更に、Trxは通常Ask1と複合体を形成し、Ask1の活性化を抑制しており、酸化ストレスと共にTrxが解離することによってAsk1が活性化し、Ask1依存的な細胞死を誘導するシグナル伝達系が報告されている。眼内、特に視細胞においては光が酸化ストレスの誘導を起こす。そこで、光依存的にTrxが遊離されれば、生来のTrxとAsk1複合体が解離する必要がなく、Ask1依存的な細胞死は起きないと推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シアノバクテリアの光受容体SyPixDと光刺激により解離するSyPixEドメインを利用したベクターの構築を検討した。オプトジェネティクスを用いた徐放に関する報告がない、また、SyPixEに関して未知の部分が多い。当初、SyPixEのSyPixDへの結合ドメインを決定し利用する計画であったが、ドメインの決定よりも、光刺激による徐放が可能かを調べることを第一とするため、SyPixEをコードする遺伝子1143bpを全て発現させることとした。また、機能の確認を第一とするため、簡略化した実験系を用いることとした。当初、カルパインインヒビターの徐放効果を検討する予定であったが、チオレドキシン(Trx)の徐放効果を検討することとした。Trxは正常な細胞であれば細胞質等に存在するが、酸化ストレスを受けることにより、核内に移行し、転写因子Ref-1と結合して、酸化的DNA障害を修復することが知られている。今後は、光刺激により、SyPixE-TrxがSyPixDと解離し、保護作用を示すか、検討を行う。本実験の第一に、このTrxがSyPixEと融合した状態で発現させた場合、Trxは機能を持つのか、SyPixE-Trx発現株を作製し調べる予定である。 本年は、タンパク質立体構造からのドメインの検索などを検討してきた。検討に時間を要するため、検討の継続と共に、実験を先に進めることとした。この検討は、光徐放システムが機能することが認められた後に、効率的にタンパク質を細胞小器官を透過させるために必要となると考えられる。検討の中で、候補が多いことから、ドメインの検証を後の実験とすることとした。以上のように、タンパク質のドメイン検索から、新たな可能性が見出され、一部、計画の変更があったものの、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
CAG-SyPixD-Venus-Ires-SyPixE-mCherryのベクターを作製し、エレクトロポレーションにより、遺伝子導入を行う。これを蛍光タグを標識にセルソーターで細胞を回収し、樹立株を作製する。この細胞にUV光を照射あるいは暗状態にしながら細胞固定を行う。光照射・非照射下のSyPixD-SyPixEの発現挙動(蛍光タグ)を共焦点顕微鏡で確認する。 Trxの機能については、SyPixEと融合した状態で発現させた場合について、SyPixE-Trx発現株を作製し調べていく。 また、CAG-SyPixD-Venus-Ires-SyPixE-trx2を作製し、上記同様にVenusをタグとして、セルソーターで細胞を回収し、樹立株を作製する。この細胞に4-HNEやC2セラミド等の酸化ストレスを与える。この際、光照射を行い、細胞死の軽減を検討する。また、核タンパク質を抽出し、核中のTrx2をウエスタンブロッティング等で検出する。更に核内でのDNA修復に関わる系について調べ、光によりTrxがSyPixDから解離し、保護効果を示すか調べる予定である。Trxは内在性でタンパク質であるため、光照射の有無の他、コントロールとしてCAG-SyPixD-Venus-Ires-SyPixE-mCherryを用いる。
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Causes of Carryover |
当初、SyPixEのSyPixDへの結合ドメインを決定し利用する計画であったが、SyPixEに関して未知の部分が多く、候補の絞り込みに時間がかかり、実験費用に未使用分が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に遺伝子合成や細胞株樹立等を予定しており、合成費用及び試薬等に使用する予定である。
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