2016 Fiscal Year Research-status Report
次世代補償光学眼底イメージングを用いた萎縮型加齢黄斑変性の病態解明と治療開発
Project/Area Number |
16K11321
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大音 壮太郎 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (10511850)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 華子 京都大学, 医学研究科, 准教授 (20372162)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 眼科学 / 網膜 / 視細胞 / 眼底イメージング / 補償光学 |
Outline of Annual Research Achievements |
萎縮型加齢黄斑変性(AMD)は地図状萎縮が形成される加齢黄斑変性であり、後期AMDの一型として分類される。脈絡膜新生血管が形成される滲出型AMDは病態の解明が進み、抗VEGF治療により視力の維持・改善が可能となったが、萎縮型AMDは過去の病理組織学的検討も乏しく、病態は未解明のままで現在に至るまで有効な治療法はない。 近年、天文学の分野で開発されてきた補償光学(adaptive optics: AO)を眼底イメージングに応用することにより、高解像度のイメージングを実現できるようになった。AOを走査型レーザー検眼鏡(SLO)に適用したAO-SLOでは、非侵襲的に錐体細胞をイメージングすることができる。我々は次世代のAOイメージングとして、split detector AO-SLOを開発している。次世代AO-SLOにより、錐体細胞のみならず、杆体細胞までイメージングが可能で、内節領域を明瞭に描出することが可能となる。 本研究の目的は、次世代AO-SLOを用いて萎縮型AMDの視細胞錐体・桿体の内節を可視化し、詳細な病態解析を行うことにある。錐体・桿体細胞変性と網膜色素上皮(RPE)細胞変性との関係、脈絡膜毛細血管との関係、complement factor H (CFH)遺伝子やage-related maculopathy susceptibility 2 (ARMS2)遺伝子などの遺伝子多型との関係を多角的に検討する。本年度はデータベースの構築中であるが、既存のイメージング機器では描出出来なかった視細胞の異常・脈絡膜毛細血管の異常が検出されており、遺伝子多型との関連を解析中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)次世代AO-SLOで得られる黄斑部視細胞の正常データの蓄積:健常眼における黄斑部視細胞錐体・桿体の細胞密度、細胞形態に関するデータを蓄積した。対象者は50-80歳の健常者し、のべ20名撮影した。中心窩から0.5mm,1mm,2mmの視細胞像を上・下・鼻・耳側で取得した。一般的眼科検査(視力、眼圧、視野、細隙灯、眼底)のほか眼底写真・OCT撮影を行い、病理眼を除外した。 2)次世代AO-SLOによる萎縮型AMDの黄斑部視細胞の形態評価:萎縮型AMD患者眼における黄斑部視細胞錐体・桿体の細胞密度、細胞形態に関するデータを収集した。のべ15名撮影した。中心窩から0.5mm,1mm,2mmの視細胞像を上・下・鼻・耳側の視細胞像を取得した。従来のconfocal AO-SLOモードでも画像化し、split detector AO-SLOと比較解析中である。一般的眼科検査(視力、眼圧、視野、細隙灯、眼底)のほか眼底写真・Swept-source OCT・眼底自発蛍光検査を施行した。 3)RPE・脈絡膜毛細血管の形態・機能評価:眼底自発蛍光のシグナルで示されるRPEの機能評価を行った。 Swept-source光干渉断層計のen face像で得られるRPEの異常面積、および加算平均画像から得られる脈絡膜毛細血管の面積をImageJで定量化する。 4)萎縮型AMD患者・正常対照者の遺伝子解析:萎縮型AMD患者・正常対照者から採血を行い、DNAサンプルを保存している。DNAサンプルを用いてCFH, ARMS2, C3, C2, CFB, ApoE遺伝子等の様々なターゲット部位をPCR増幅し、ダイレクトシークエンス法・Taqman SNP assayで遺伝子多型を検出した。
|
Strategy for Future Research Activity |
次世代AO-SLOで得られる黄斑部視細胞の正常データの蓄積:京都大学医学部附属病院内に設置した次世代AO-SLOにより、萎縮型AMD症例と年齢・性別がマッチした正常ボランティアの視細胞錐体・桿体密度、細胞形態に関するデータを蓄積する。 次世代AO-SLOによる萎縮型AMDの黄斑部視細胞の形態評価:次世代AO-SLOにより、萎縮型AMD患者の黄斑部視細胞錐体・桿体を経時的に観察し、細胞密度、細胞形態に関するデータを蓄積し、地図状萎縮の進行に関与するパラメータを探求する。更に従来のconfocal AO-SLOを併用することにより、内節・外節の状態を個々に評価する。 RPE・脈絡膜毛細血管の形態・機能評価:得られた正常および萎縮型AMD患者の黄斑部視細胞錐体・桿体の形態に関するデータと、眼底自発蛍光のシグナルで示されるRPEの機能・Swept-source OCTのen face像で得られるRPEおよび脈絡膜毛細血管の形態との関連を検討する。 遺伝子多型と視細胞錐体・桿体異常:近年、AMDの発症・進展に関与する因子として報告されているARMS2 (Age-related maculopathy susceptibility 2)遺伝子やCFH (complement factor H)遺伝子など、種々の遺伝子多型と視細胞錐体・桿体の形態異常にどのような関連があるかを検討し、地図状萎縮形成に関するメカニズムを明らかにする。
|
Causes of Carryover |
物品費が少なかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に行う遺伝子解析で使用予定である。
|