2016 Fiscal Year Research-status Report
小児固形悪性腫瘍に対する、免疫学的糖鎖解析法を用いた新規診断システム法の開発
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16K11347
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木下 義晶 九州大学, 大学病院, 准教授 (80345529)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田口 智章 九州大学, 医学研究院, 教授 (20197247)
宗崎 良太 九州大学, 大学病院, 助教 (10403990)
三好 きな 九州大学, 医学研究院, 助教 (20621709)
久田 正昭 九州大学, 医学研究院, 助教 (40381230)
瀬戸山 大樹 九州大学, 大学病院, 助教 (30550850)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 小児固形悪性腫瘍 / 免疫学的糖鎖解析法 / AFP / 診断システム |
Outline of Annual Research Achievements |
代表的腫瘍マーカーであるAFP(Alpha-feto protein)には3つの分画(L1,L2,L3)があり、成人の肝細胞癌ではL3分画が特異的に高値を示す。採血検体からL3分画を簡易的に測定できるシステムが1990年代後半に確立されたが、この診断システムは分析方法の限界によりL2とL3分画を分離して測定できないため、測定値にはL2値を含む。小児期においては生理的にL2分画が新生児期~幼児期には高いこと、小児固形悪性腫瘍としてはL2分画が高いとされる卵黄嚢癌、L3分画が高いとされる肝芽腫があることなどより、このシステムではL3分画が高値と測定されても生理的高値なのか、卵黄嚢腫瘍成分を反映しているのか、肝腫瘍成分を反映しているのか区別できない。本研究では免疫学的手法、質量分析法などを用いてL2分画をL3より分離して測定することを可能にし、非侵襲的新規簡易診断システムの開発を行うことを目的とする。 研究材料として九州大学小児外科で経験した小児固形悪性腫瘍患者150例 (被験者群) 、および当科診療中の良性疾患患者・術後経過観察中の児100例 (対照群) の血清検体、組織検体を対象とする。平成28年度はCon Aレクチンを用いた免疫電気泳動法によるL2分画の分離、定量化を行い、得られたデータより新生児期・乳児期における生理的L2分画の基準値設定を行う。平成29年度は糖鎖抗原に対するモノクローナル抗体の作製とECLIA法によるL2分画測定ならびに、病理組織学的解析を行う。平成30年度以降は質量分析法による精製糖鎖%L2の測定を行い、データの整合性が得られれば機器システムの製作へ進める。現在平成28年度の計画が遂行されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当科で経験した小児固形悪性腫瘍患者150例 (被験者群) 、および当科診療中の良性疾患患者・術後経過観察中の児100例 (対照群) の血清検体、組織検体を対象とした。平成28年度は以下の2点につき研究を遂行した。 1)Con Aレクチンを用いた免疫電気泳動法によるL2分画の分離、定量化新生児期・乳児期における生理的L2分画の基準値設定 2)糖鎖抗原に対するモノクローナル抗体の作製とECLIA法によるL2分画測定 1)レンズ豆レクチンゲルにおける電気泳動では、L2分画とL3分画を完全に分離できない。しかし、ジャック豆レクチン (Concanavalin A: Con A) を用いると、L2分画とL1分画・L3分画を分離できることが知られている (Taketa K, Electrophoresis, 1998)。そこで、被験者群ならびに対照群の血清中L2分画を、Con Aを用いたレクチンゲル電気泳動法により分離する。卵黄嚢腫瘍においてはL2を示唆するバンドが認められた。さらに、抗AFP抗体を結合した膜にブロッティングを行った 。現在抗体法で染色したバンドパターンを画像解析ソフト (Bio Image®) で解析・数値化し、腫瘍例と非腫瘍例および腫瘍別に比較検討している。 2) 新生児期・乳児期における生理的L2分画の基準値設定:乳児のAFP値は胎児期に産生されたAFPを反映し、出生後高値を示す。その後、経時的に減衰する。対照群のうち、生後12か月未満の新生児・乳児症例について、1) と同様にCon Aを用いたレクチンゲル電気泳動でL2分画値を求めた。採血時日齢とL2分画の割合をプロットし、推移曲線を描出し、乳児期のL2分画基準値を設定する解析作業を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降以下の研究内容を予定している。 1)糖鎖抗原に対するモノクロナール抗体の作製とECLIA法によるL2分画測定:AFP-L2分画は、糖鎖中にbisecting GlcNAcという糖鎖構造を有し、本構造がLCAによる電気泳動の分画差異を生み出している。AFP-L2分画を特異的に分離算出するため、bisecting GlcNAcをエピトープとする抗AFP-L2モノクローナル抗体の作製を目指す。糖鎖は免疫原性が低く、単独では抗原認識されにくい。そのため、本研究では糖鎖に脂質などのアジュバントを共有結合させ、抗原認識の確率を高める試みを行う。抗体はハイブリドーマ法により作製する。作製した抗体を用いて、現在のAFP測定法である電気化学発生免疫測定法 (ECLIA)により、L2分画値を測定する。その結果と平成28年度の研究結果を比較し、検査の同等性を評価する。 2)病理組織学的解析:作製したL2分画モノクロナール抗体を用 い、被験者群の腫瘍組織の免疫染色を行い、血清のL2分画が実際に腫瘍組織由来のものであることを確認する。 3)質量分析法による精製糖鎖%L2の測定:糖鎖解析に最適化したFT-MS定性分析、LC-MS MRMモードによるAFP-L2分画定量法の確立 MassSpectorpmetryを用いた質量分析法(LC-MS法,GC-MS法,FT-MS法,MALDI-MS法)に基づいた細胞内低分子代謝物の定性・定量分析技術を、糖鎖分析に応用し、L2分画質量分析を行う。
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Causes of Carryover |
新生児期・乳児期における生理的L2分画の基準値設定継続するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
採血時日齢とL2分画の割合をプロットし、推移曲線を描出し、乳児期のL2分画基準値を設定する解析作業を行う。
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Research Products
(18 results)