2016 Fiscal Year Research-status Report
多血小板血漿と脂肪由来幹細胞を利用した新しい乳房再建法確立の試み
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16K11367
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
八木 俊路朗 鳥取大学, 医学部附属病院, 准教授 (00378192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福岡 晃平 鳥取大学, 医学部附属病院, 医員 (40548781)
久留 一郎 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60211504)
陶山 淑子 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (90448192)
森川 久未 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (90707217) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脂肪由来幹細胞 / 乳房再建 / 多血小板血漿 / 再生医療 / 移植 / 脂肪 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は乳癌に対する乳房温存術後の乳房変形に対する皮下脂肪細胞と皮下脂肪由来幹細胞(Adipose derived stem cells: ADSCs)移植の際に多血小板血漿(platelet rich plasma:PRP)を同時に移植することにより脂肪細胞の生着率を向上することである。 多血血小板血漿(Platelet-Rich Plasma : PRP)は、血管新生、線維芽細胞の活性化およびコラーゲン産生に関する成長因子を多く含む。そのため、PRPを用いた血管新生、骨再生、血管修復、創傷治癒および抗加齢療法に関する研究が報告されている。これまで我々は、脂肪組織由来幹細胞(Adipose derived Stem Cells : ADSCs)を用いた乳がん術後の乳房再建術の基礎研究および臨床研究を行ってきた。この結果、注入脂肪組織の経時的な萎縮が問題となってきた。これらの問題を解決するために、本研究では、脂肪とADSCsの移植時に、PRPを混合付加することによって、血管新生を誘導し、移植した脂肪組織の萎縮を予防することができる新たな治療法の開発を行うことを計画した。 今年度はまず、ラットからのPRPの採取法の確立を行った。遠心分離を複数回行うことにより、高度に濃縮されたPRPの単離に成功した。続いて、単離したPRPを乳房再建モデル動物へ移植した。この結果は我々の予想に反し、PRP移植量の増加に応じて、脂肪塊の重量が減少し、脂肪塊中の繊維芽細胞の含有量が増加する傾向にあることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は乳癌に対する乳房温存術後の乳房変形に対する皮下脂肪細胞とADSCs移植の際にPRPを同時に移植することにより脂肪細胞の生着率を向上することである。 今年度は、まず、PRPの採取方法の確立から着手した。PRPは、末梢血中から、遠心分離を複数回行うことにより、容易に単離することができる。そこで、本研究では、ラットの大腿骨から末梢血を採取し、遠心分離を2回行う方法を検証した。遠心分離前後の血液検体を比較すると、遠心分離後の検体で、PRPが濃縮されていることが判明し、PRPの単離法を確立することができた。 続いて、単離したPRPのモデル動物への移植実験を行った。移植実験には乳房再建モデル動物を用いた。これは我々が開発したモデルであり、ヌードマウスの背部・皮下にラットの皮下脂肪と幹細胞を混合後、臨床と同じ注入器を用いて注入することにより作製する。今回は、PRPの効果を検証するために、PRP移植量を1倍量・2倍量・3倍量と3段階に分けて移植を行った。移植後1ヶ月後に移植片を採取し、移植片の重量と移植片に含まれる繊維芽細胞の量をマッソン・トリクローム染色により定量した。これらの実験結果から、移植片の重量はPRPの移植量に反比例し、PRP移植量の増加に応じて減少する傾向にあることが分かった。一方で、移植片中の繊維芽細胞量はPRP移植量に比例して増加する傾向にあることが判明した。これらの結果から、PRP移植は、移植脂肪の維持に、逆の効果を示すことが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
PRPは多様な成長因子、サイトカインを含むため、血管新生などを誘導することができ、脂肪との混合移植による乳房再建においても、移植細胞の生存を助けるとともに、より効率良く移植組織に新生血管を導くことができると考えられていた。しかしながら、今回の研究結果は我々の予想に反し、PRP移植によって、移植片の重量が減少し、移植組織の線維化が促進されるという結果となった。これは、PRP移植により、損傷治癒が亢進されているとも考察できる。今回の実験は移植後1ヶ月という短期の解析であったため、長期にわたる解析など、さらなる検証が必要である。またこの治療法に結論を出すためには、解析例数を増やした検討や血管新生の増減についてもさらなる検証が必要である。 また、PRP投与により移植細胞の体積が減少する理由としてPRPから分泌されるサイトカインにより炎症を惹起し脂肪組織の生着やADCsからのサイトカインの分泌を阻害している可能性が考えられる。このメカニズムを解明するためADCsからのサイトカインの分泌がPRP投与によりどのように変化するかをマイクロアレイを用いて評価を行う。加えて移植片でのサイトカインの発現をリアルタイムRT-PCRによって測定する。 移植した脂肪幹細胞がパラクライン効果とは独立して脂肪や血管のみならず線維芽細胞に分化している可能性があるために、脂肪幹細胞の生体内での分化能を観察するために標識された脂肪幹細胞を移植した追跡実験が必要となる。そこで次年度は緑色蛍光蛋白(GFP)とルシフェラーゼ遺伝子を搭載した移植可能なトランスジェーニックラットを作成を計画し、これを用いて脂肪幹細胞の生体内での分化能とそれに対するPRPの効果を検討できると考えてる。
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Causes of Carryover |
資料集、各種調査および研究成果報告のための旅費が予定額より少なかったため。研究補助および研究解析の人員を本年度は雇用しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度の研究ではPRPが脂肪、ADCs移植の際に線維化を誘導し移植脂肪の体積を減少させるといった結果が得られた。29年度ではこの結果を基にPRPがADCsから脂肪への分化誘導にどのように影響しているかの研究を行う。そのための試薬物品費に経費を要するため次年度使用額を一部物品費に利用する。
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Research Products
(1 results)