2017 Fiscal Year Research-status Report
小耳症軟骨細胞を用いて誘導した再生軟骨とその長期移植成績
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16K11389
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
磯貝 典孝 近畿大学, 医学部, 教授 (90203067)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
諸富 公昭 近畿大学, 医学部, 准教授 (10388580)
楠原 廣久 近畿大学, 医学部, 講師 (50388550)
朝村 真一 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20340804)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 軟骨再生 / 小耳症 / ナノファイバ- / OP-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでわれわれは、体内より採取が可能な軟骨(関節軟骨、肋軟骨、鼻中隔軟骨および耳介軟骨など)に注目し、動物(ウシ)由来の軟骨細胞をこれらの4部位から採取し、各軟骨細胞をin vitroにて培養して細胞増殖能および基質産性能を比較検討した。さらに、in vivoで再生誘導した耳介形状軟骨の3次元形状の再現性およびmRNA発現の長期結果について検討した。その結果、耳介軟骨細胞から再生誘導された軟骨組織では、長期的に3次元形状および細胞外基質が維持されていることを報告した。これらの報告から、耳介の軟骨再生における至適細胞供給源として、耳介軟骨細胞が有力な候補となりえることが示唆された。 一方、これまでの耳介形状軟骨の再生誘導に関する研究において、ヒト由来の軟骨細胞を用いた報告は数少なく、ヒト耳介軟骨細胞から耳介特有の質感を反映する軟骨再生が可能かどうか、さらに小耳症軟骨を細胞供給源として利用することは可能かどうかに関しては、未解決な問題として残されている。 そこで、本研究では、ヒト耳介軟骨の性状に近いたち耳軟骨および小耳症軟骨の2種類のヒト耳介由来軟骨組織から単離した軟骨細胞を用いて再生誘導を試みた。 平成28年度の実験実績では、培養したヒトたち耳軟骨細胞および小耳症軟骨細胞を生分解性高分子に播種した。長期移植成績の特徴を詳細に理解するため,無胸腺マウスの背部皮下に細胞・高分子の複合体を移植して軟骨再生を誘導し、再生軟骨の形状、組織像およびmRNA発現の変化について比較検討した。さらに平成29年度の実験実績では、軟骨再生に重要な役割を果たすサイトカインとしてOP-1を選択し、細胞増殖因子(OP-1)徐放化システムが再生軟骨組織に及ぼす影響について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
理由)平成28年度:ヒトたち耳および小耳症軟骨細胞を用いた軟骨再生と長期移植成績、について以下の点を明らかとした。 1.ヒトたち耳および小耳症軟骨細胞を高分子に播種して、2群の複合体を作製した。 複合体を無胸腺マウスの背部皮下に移植し、in vivoにおける再生軟骨組織の経時変化を、肉眼所見、組織学的、分子生物学的に検討した。その結果、両群のすべての複合体から、白く光沢があり、本来の高分子形状が比較的維持された再生軟骨が観察された。 2.サフラニンO染色を用いた組織学的検索では、両群の複合体において、軟骨基質は経時的に強い陽性反応を示し、軟骨細胞から産生されるプロテオグリカンは、経時的に増加する傾向を示した。3.RT-PCR法により、軟骨関連遺伝子であるⅡ型コラーゲン、Elastin、およびSox 5のmRNA発現の経時的変化を調べ、再生軟骨組織の制御機構を検討した。その結果、両群において、再生軟骨組織におけるmRNA発現は、経時的に増加傾向を示した。これらの結果より、小耳症軟骨細胞を細胞供給源とする再生軟骨の成熟過程は、正常軟骨と同様な過程を経て進行することが判明した。 平成29年度:細胞増殖因子(OP-1)徐放化システムが軟骨再生に及ぼす影響 平成28年度と同様に、2群の細胞・高分子の複合体を作成した。それぞれの複合体に細胞増殖因子(OP-1)徐放化システムを導入した。その後、無胸腺マウスの背部皮下に移植した。その結果、肉眼所見、組織所見、RT-PCR法による軟骨関連遺伝子(Ⅱ型コラーゲン、Elastin、およびSox 5)のmRNA発現量に変化は認めなかった。このことから、再生軟骨組織において細胞増殖性サイトカインであるOP-1を添加しても細胞外マトリックス形成が促進する所見は観察されなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度、および平成29年度の研究成果は、本年度(平成29年度)に開催された国際学会にて報告した。本研究結果は、Plastic and Reconstructive Surgery 139:911-921, 2017に掲載された。本年度は、平成29年度に実施した研究の追試を行い、より正確なデータ取得を目指す予定としている。今後は、小耳症軟骨を細胞供給源とする3次元軟骨再生誘導を推進し、細胞レベルから組織小片(organoid/tissue chip)としてより臨床応用可能な再生誘導法の導入を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)本研究では、小耳症軟骨(ヒト)より採取した軟骨細胞を細胞供給源として用いる。当初の研究において予見しえなかった本年度の症例数の減少により、小耳症軟骨細胞の採取量が少なく、当初の研究計画通りの進行が出来なかった。それにより、年度内使用完了が困難になり、1489175円が次年度持ち越しとなった。 (使用計画)生じた差額は、来年度に繰り越し、来年度の研究を加速して使用する予定としている。
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Research Products
(8 results)