2016 Fiscal Year Research-status Report
無細胞液性因子による損傷脊髄の再生の促進―臨床応用を目指して―
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16K11390
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Research Institution | Aino University |
Principal Investigator |
井出 千束 藍野大学, 医療保健学部, 教授 (70010080)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
兼清 健志 藍野大学, 中央研究施設, 講師 (20525399)
中野 法彦 藍野大学, 中央研究施設, 准教授 (40322721)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 骨髄間質細胞 / 培養上清 / 有効因子分画 / 脊髄損傷 / 歩行運動 / 内在的再生能 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的は、骨髄間質細胞の培養上清に含まれる神経再生因子を同定し、脊髄損傷の治療に応用することである。研究実施計画に沿って、培養上清を種々なカラムによって分画し、それぞれの分画に対して培養ニューロンの突起伸長を指標にバイオアッセイを行っている。これまで10種類近くのカラムによって分画を試みて来た。これまでに判明したことは、有効因子は一定の分子量の範囲にあり、オーソドックスな分子ではないことである。要は、どんなカラムを用いるかが鍵で、最近、漸く有力なカラムを見い出して、精力的に分画とアッセイを行っている。 これと並行して、in vivoでのアッセイ系の確立のために、培養上清の投与による脊髄損傷の治療効果を調べた。脊髄に挫滅損傷を与えたラットに対して、骨髄間質細胞の培養上清を、Alzet の osmotic pump によって、髄液経由で2週間の連続投与を行った。投与開始から4週間で調べた。投与群において、歩行運動回復がすでに投与1週から顕著であり、且つ投与群の損傷部に、より多くの再生軸索が伸びていた。この結果は、有効因子の投与が脊髄損傷の治療に有望であることを示唆するものである。培養上清は種々な因子を含み、単一な有効因子だけで脊髄損傷の治療に足りるとは思われない。培養上清に含まれるどのような因子が再生に関与するかも今後の課題である。 この研究から明らかになって来たことは、脊髄損傷の治療には、有効因子の投与で十分であることである。細胞移植では、移植細胞が宿主組織におとなしく組み込まれることを期待しているが、そもそも移植される細胞は脊髄にとって異物であるので、長く生き残るのは宿主にとって好ましいものではない場合が多いと思われる。脊髄においては、細胞移植を最善とする従来の概念を再考する必要がある。脊髄には本来備わった再生能があり、それを活性化することが重要であろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有効因子の分画は、通常のカラムによる分画操作ではなかなかうまく行かない状態であった。多くのカラムを試したが、これまで決定的なものは見当たらなかった。しかし最近になって、一般にはあまり使われていないカラムを試したところ、有望であることが分かったので、今後はこのカラムを用いて分析を進める。分子量の範囲についてはかなり早い段階で決めることが出来、以後はその分子量の範囲内にある分子の分析を行っている。この程度の進捗状態は通常の研究のレベルである。 in vivo における培養上清投与の効果については思いの外はっきりした良い結果が出て、論文投稿を用意している。研究開始間もない時期の成果としては非常に大きなものである。髄液経由による連続投与という方法が良かったことと、脊髄が本来持っている内在的な再生能が大きく、それが培養上清によって活性化された結果であると考える。この結果は、脊髄の内在的な再性能という新たな概念を生み出し、今後の脊髄損傷の治療に大きな転換を迫るものである点で、大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画通りに着実に進行しているので、既定の研究計画に沿って今後も続ける。 有効因子の同定はまだ紆余曲折が予想される。しかし、研究方法としてこれまでの方法以外になく、どんなカラムを選ぶかにかかっているので、適切なカラムを見いだすのが先決である。 in vivoのアッセイは非常にうまく行った実験で、論文として近く投稿する。 この論文は、臨床応用への基礎データとして貴重なものである。 基礎的には、脊髄の内在的な再生能という概念が重要で、その再生能の具体的な裏付け(どのような細胞が関与して再生軸索を伸長させているか等)を追求することが必要である。これは非常に重要な基礎的な研究となろう。
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Causes of Carryover |
実験の回数が少なかったと言える。精力的に実験をした積もりであるが、それでも予定の実験をこなすことが出来なかった。論文作成の為に時間が取られたことも実験が少なくなった理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は一層精力的に実験を進める。実験試薬類についてはリストの予定通りとして、実験回数を多くする。抗体類では質によってその結果が大きく左右されるので、良い抗体による結果を重視する。機器の購入等は考えていない。
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[Journal Article] Locomotor improvement of spinal cord-injured rats through body weight support treadmill training by plantar placement of hind paws on the floor.2016
Author(s)
Hayashibe M, Homma T, Fujimoto K, Oi T, Yagi N, Kashihara M, NIshikawa N, Ishizumi Y, Abe S, Hashimoto H, Kanekiyo K, Ide C, Morioka S.
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Journal Title
Spinal Cord
Volume: 54
Pages: 521-529
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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