2017 Fiscal Year Research-status Report
経腸栄養欠如時の多臓器免疫機能不全機序の解明とその対策法探索のための基礎研究
Project/Area Number |
16K11395
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村越 智 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (10647407)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 静脈栄養 / 経腸栄養 / GALT / 肝単核球 / クッパー細胞 / 腸管免疫 / 肝免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
経腸(経口)栄養が不可能な場合、栄養管理は完全静脈栄養(TPN)に依存するが 、経腸栄養の欠如は感染性合併症の発生率上昇や予後の悪化を招く。この原因は従来考えられていた腸管を中心とした粘膜免疫のみの低下ではなく、肝免疫も同時に低下する多臟器免疫不全の惹起による可能性があると指摘されている。本研究は経腸栄養欠如時の腸管や肝免疫の低下機序を解明し、TPN施行時でも腸管免疫や肝免疫を維持しうる栄養管理法の探索を目的とする。 これまで、マウスを用いた栄養管理モデルで研究を遂行し、以下の知見をえた。 経腸栄養の欠如により腸管免疫維持に重要とされる腸管リンパ装置(GALT)でのリンパ球(BおよびTリンパ球)数が減少することを確認した。またGALTでのBリンパ球数の減少が腸管内immunoglobulin A (IgA)濃度低下に関連すること、Bリンパ球活性に関与するInterleukin(IL)-15とIL-21の腸管内濃度が経腸栄養の欠如時に低下することも明らかにできた。肝臓では肝免疫を担う肝単核球に焦点をあて検討を行った。経腸栄養の欠如がクッパー細胞(肝単核球の一種)のlipopolysaccharide (LPS)に対する受容体であるCD14の発現減弱を招くこと、また侵襲時の検討ではクッパー細胞の貪食能低下が惹起されることを明らかにした。さらに肝単核球より産生される炎症性サイトカイン(Tumor necrosis factor:TNF-α、IL-6、Monocyte chemoattractant protein-1:MCP-1)および抗炎症性サイトカイン(IL-10)の両者の産生能が低下することも確認した。 これら結果より、経腸栄養欠如時に腸管や肝臓で引き起こされるサイトカイン環境の大きな変化が各臓器での免疫担当細胞の機能を低下させ、免疫能低下がおきていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウス栄養管理モデルを用いて、腸管や肝臓でのサイトカイン環境の変化が腸管Bリンパ球機能や肝免疫担当細胞の機能低下の一因となっていることを明らかにできた。しかし予定していた腸管内のサイトカイン環境の変化と腸管Tリンパ球機能との関連についてはまだ予備実験の段階であり結論を得るには至らなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
腸管免疫については制御性T細胞および制御性B細胞の数・機能変化が腸管サイトカイン環境変化に影響を与えている可能性があるため、これらに焦点をあて経腸栄養欠如時の腸管免疫機能低下機序を探索する。 肝免疫についてはクッパー細胞のサブクラス分類や肝類洞内の接着分子発現などに焦点をあて経腸栄養欠如時の肝免疫能低下が惹起される原因探索を推進する。 さらに、得られた知見を踏まえて経腸栄養施行時の各臓器の免疫維持の方策についても検討する。
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由)腸管内のサイトカイン環境の変化と腸管Tリンパ球機能の関連についての解析が予備実験までしか進まなかったため。
(使用計画)研究施行のために必須となる薬品類(静脈栄養製剤作成用基剤、サイトカイン測定用試薬、タンパク解析用試薬、抗体、細胞維持・分離用試薬)、単回使用実験器具および実験用動物の購入に用いる。また、国内・外の研究動向調査や研究成果発信を継続するための学会参加旅費に用いる。さらに、次年度が研究の最終年度となることから研究成果を英文専門誌に掲載するための英文校閲費としても用いる。
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Research Products
(2 results)