2018 Fiscal Year Research-status Report
経腸栄養欠如時の多臓器免疫機能不全機序の解明とその対策法探索のための基礎研究
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16K11395
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村越 智 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (10647407)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 静脈栄養 / 腸管免疫 / 肝免疫 / クッパー細胞 / サイトカイン / 接着分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
経腸(経口)栄養が不可能な場合は栄養管理を完全静脈栄養(TPN)に依存しなければならない。 しかし、経腸栄養の欠如は感染性合併症の発生率上昇や予後の悪化を招く。この機序は従来考えられていた腸管を中心とした粘膜免疫のみの低下だけではなく、肝免疫も低下する多臟器免疫不全の惹起によるものと指摘されている。本研究は経腸栄養欠如による腸管や肝免疫の低下機序を解明し、TPN時でも腸管免疫や肝免疫を維持することができる栄養管理法の探索を目的とし施行する。 今年度はマウスを用いた栄養管理モデルで研究を遂行し、以下の知見をえた。 1)クッパー細胞の表面抗原発現と肝免疫との関連:肝単核球は病原体排除に必要な免疫担当細胞であり、肝単核球の多くを占めるクッパー細胞は表面抗原発現により機能に相違がある。CD68陽性クッパー細胞は貪食能が活発であり、CD11b陽性クッパー細胞はサイトカイン産性能が活発である。TPN時のクッパー細胞集団の表面抗原を解析するとCD68あるいはCD11bの発現がいずれも低下傾向であった。これよりTPN時の肝免疫低下はクッパー細胞の機能低下が一因であることが示唆された。 2)肝臓の接着分子発現変化と肝免疫の関連:TPN時の肝臓の接着分子発現解析で、TPNではendothelial leukocyte adhesion molecule-1(ELAM-1)およびlymphocyte function-associated antigen-1(LFA-1)の発現量の低下傾向を認めた。ELAM-1やLFA-1は特に肝類洞内の免疫担当細胞の集積に関連する接着分子であるため、これらの発現低下が肝免疫低下の一因であると考えられる。今後、肝類洞内の細胞(内皮細胞、単核球など)を単離して接着分子発現低下がどの細胞による現象かを検討し、肝免疫低下に関連する接着分子の詳細を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は経腸栄養欠如による腸管や肝免疫の低下機序を解明し、栄養管理を完全静脈栄養(TPN)とした場合でも腸管免疫や肝免疫を維持し得る栄養管理法の探索が目的である。これまで、マウスを用いた栄養管理モデルで研究を遂行し、以下の知見をえた。 TPN時の腸管免疫の低下の要因:①経腸栄養の欠如により腸管免疫の維持に重要とされる腸管リンパ装置(GALT)でのリンパ球(BおよびTリンパ球)数が減少すること。②GALTでのBリンパ球活性に関与するInterleukin(IL)-15とIL-21の腸管内濃度が経腸栄養の欠如により低下し、腸管内immunoglobulin A (IgA)濃度低下の一因となること。 TPN時の肝免疫の低下の要因:①経腸栄養の欠如が肝単核球より産生される炎症性サイトカイン(Tumor necrosis factor:TNF-α、IL-6、Monocyte chemoattractant protein-1:MCP-1)および抗炎症性サイトカイン(IL-10)の両者の産生能低下を惹起しサイトカイン環境が大きく変化すること。②肝単核球の多くを占めるクッパー細胞の表面抗原がTPN管理で変化し、サイトカイン産生や貪食能低下の惹起につながっていること。③肝臓内のendothelial leukocyte adhesion molecule-1(ELAM-1)およびlymphocyte function-associated antigen-1(LFA-1)など、接着分子発現低下により肝臓の免疫担当細胞が有効に局所へと集積できず、その機能を発揮できなくなっている可能性があること。 なお、予定していた腸管内のサイトカイン環境の変化と腸管Tリンパ球機能との関連、肝免疫低下と関連する接着分子の詳細については明確な結論が得られておらず、実験施行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
腸管免疫については制御性T細胞の機能変化が腸管サイトカイン環境変化に影響を与えている可能性があるため、これらに焦点をあて経腸栄養欠如時の腸管免疫低下機序を探索する。 肝免疫については肝類洞内の細胞(内皮細胞、単核球など)を分離してどの細胞の接着分子発現が低下しているかについて検討を重ね、肝免疫低下に関連する接着分子の詳細を明らかにする。 これらの研究を推進して経腸栄養欠如時の腸管免疫や肝免疫の低下が惹起される要因を探索する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:①経腸栄養欠如時における腸管Tリンパ球(特に制御性T細胞)機能の変化解析に時間を要し現段階では結果があきらかでないため、追加実験を施行して結果を検証する必要が生じたため。②肝臓内でのendothelial leukocyte adhesion molecule-1(ELAM-1)およびlymphocyte function-associated antigen-1(LFA-1)などの接着分子発現低下がどの細胞の接着分子発現低下によるものかを明確にするため、肝類洞内の細胞(内皮細胞、単核球など)を分離して各細胞の接着分子発現の変化を検証する必要がある。この評価の過程での肝類洞内の細胞分離手技の確立に時間を要し、検証が進まなかったため。 使用計画:研究施行のために必須となる薬品類(静脈栄養製剤作成用基剤、サイトカイン測定用試薬、タンパク解析用試薬、抗体、細胞維持・分離用試薬)、単回使用実験器具および実験用動物の購入に用いる。また、次年度が研究の最終年度となることから研究成果を英文専門誌に掲載するための英文校閲費としても用いる。
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Research Products
(1 results)