2016 Fiscal Year Research-status Report
アンチトロンビンは敗血症時の好中球細胞外トラップ形成を制御できるか
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16K11403
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
石川 倫子 兵庫医科大学, 医学部, 非常勤講師 (40566121)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 好中球細胞外トラップ / アンチトロンビン / 敗血症 / 自然免疫 / 好中球 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は敗血症時のNETs形成にアンチトロンビンIII(AT)製剤が及ぼす影響を明らかにすることを目標としている。平成28年度は、健常人好中球をin vitroで培養し、NETs形成刺激としてLipopolysaccharide (LPS)を添加し、AT添加の有無によるNETs形成能力の違いを検討した。予定では男女各20名ずつ、40名の解析を目標としていたが、採血当日の体調や投薬の有無などにより、解析に使用できた検体数は25検体であった。まず、蛍光免疫染色によるNETs面積についてはLPS単独添加群に比べ、LPS+AT(アンチトロンビンIII)添加群で有意に面積が減少しており、ATは好中球のNETs形成を抑制する可能性が示唆された。しかし、個体差が大きく、網羅的解析を行うに十分な条件を得ることが出来なかった為、ATがNETs面積を大きく減少した個体について、PAD4のタンパク発現をwestern blootで解析したが、ATによるPAD4蛋白の減少は顕著ではなかった。また、PKC関連のインヒビターを用いた検討を行ったが、まだn数が少なく、統計学的に意義のある検討数に達していない為、現在も検討を進めている。現時点では機序は明らかではないが、ヒト好中球に対してATがNETs形成を抑制する結果は、敗血症などにおけるAT投与時に、ATがNETs形成を抑制することでNETsが原因となる血管障害や微小血管凝固異常などを抑制している可能性を示唆するものであり、ATによる播種性血管内凝固などの予防にも関連するかもしれないと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の目標としていた、健常人好中球を用いた検討は、n数は予定よりも少ないものの、ATで有意にNETs面積が減少する結果を得た。また、予定していた遺伝子網羅的解析はまだ実施できていないが、western blotや、インヒビターを用いた検討を進めることが出来ている。さらに、解析には至っていないが、平成29年度に採取予定であった敗血症患者検体についても、すでに数例の検体採取が出来ており、来年度以降の研究計画にも大幅な変更は必要ないと考えていることから、概ね順調と考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に実施できなかった遺伝子網羅的解析を優先的に進めることとするが、個体差が大きいことから、網羅的解析に使用する検体については、NETs形成を確認する培養を複数回実施し、ATの効果に再現性が認められるものを使用するものとする。また、敗血症患者検体についても、現時点では十分な解析が進んでいないが、印象として健常人検体よりも個体差が大きく、かなり異なる結果が予想されるため、患者背景を揃えるなどの工夫を検討している。場合によっては健常人検体による検討をより詳細に行ってから患者検体の採取を行うなどの対応を検討中である。
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Causes of Carryover |
予定していた網羅的遺伝子解析が未実施であることが大きな理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
健常人検体について、ATの効果が十分確認できる検体を用いて網羅的遺伝子解析を行う。
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Research Products
(2 results)