2017 Fiscal Year Research-status Report
アンチトロンビンは敗血症時の好中球細胞外トラップ形成を制御できるか
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16K11403
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
石川 倫子 兵庫医科大学, 医学部, 非常勤講師 (40566121)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 好中球細胞外トラップ / アンチトロンビン / 敗血症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は敗血症時のNETs形成にアンチトロンビン(AT)III製剤が及ぼす影響を明らかにすることを目標としている。平成29年度の目的は、前年度に得られた「健常人好中球へのLipopolysaccharide (LPS)刺激におけるNETs形成をATIIIは抑制する」結果が、敗血症患者好中球においても再現されるのかを明らかにすることである。そこで、患者好中球にLPSを添加し、ATIII添加の有無によるNETs形成能力の違いを検討した。予定では10-20検体の敗血症患者好中球の解析を目標としていたが、病態のばらつきが大きいため、敗血症性ショック患者好中球に限定し、6検体について解析した。蛍光免疫染色によるNETs面積は、ステロイド投与があった褥瘡部感染、頸部軟部組織感染、肺炎による敗血症性ショック患者検体はLPSによるNETs形成は9.3±7.00μm2であったのに対し、ステロイド投与がなかった降下性縦隔炎、多発外傷、絞扼性イレウスでは310.4±225.83μm2と有意に多く、ステロイド投与によるNETs形成抑制が考えられた。しかし、褥瘡部感染、頸部軟部組織感染、降下性縦隔炎、多発外傷の4検体でLPS単独添加群に比べ、LPS+ATIII添加群は有意に面積が減少し、NETs形成量に関わらず抑制する可能性が考えられた。しかし、絞扼性イレウス検体では変化なし、肺炎検体では増加が認められ、その理由はまだ明らかではない。 さらに、前年度に解析途中であった、健常人好中球を用いたPAD4蛋白発現や、PKCインヒビターを用いた解析を進めたが、一定の傾向(p<0.1)は認められるものの、統計学的な有意差(p<0.05)は得られなかった。そこで、HL-60細胞を好中球に分化させ、培養系の安定した条件に置き換えてATIIIの機序が明らかに出来るか、検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度における当初の目標は、性別、年齢、病態、APACHEIIスコア、血中サイトカイン濃度、白血球数などが近しい10-20検体程度の敗血症患者においても健常人好中球と同じことが証明されるのか確認することであった。実際には、敗血症では病態・個体差が大きく、n数の増加も見込めなかった為、対応策として考えておいた、血液生化学データや慢性疾患の有無など、さらに詳細な項目についても確認し、3-5名程度を抽出してデータを解析する方法を採用した。結果、敗血症性ショック患者好中球6検体について実際にNETs形成能力が4検体においてはATIIIにより減少することが確認できたため、非常に順調に進行したと考えている。しかし、機序の検討においては未だ統計学的有意差のある結果を得られておらず、予定していた機序の解明は不十分であるが、すでに対策を立てて検討を進めているため、全体的な進捗状況としては概ね順調とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度はマウス敗血症モデルを用いた検討を予定していたが、ATIIIの作用機序が未だ不明瞭であるため、HL-60細胞を用いて条件を揃えた検体、及びATIIIによるNETs抑制効果が明瞭であった健常人数名に絞ってmRNAの網羅的解析、蛋白発現、インヒビター実験などを行い、機序を明らかにすることを先行して行う予定である。その後、敗血症マウスへのATIII後投与がNETs形成及び予後に及ぼす影響を検討したいと考えている。
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Causes of Carryover |
平成28年度に予定していた網羅的mRNA解析が行われておらず、平成29年度にも施行していないため、次年度使用額が生じている。行われていない理由として、網羅的mRNA解析により得られた結果から機序を解明するためには、まず網羅的mRNA解析に最適な検体を選び出すことが重要と考えており、これまでの実験成果から、健常人好中球で、日差再現性の得られた検体と、HL-60細胞の分化により得られた好中球検体が適していると考えている。平成30年度にこれらの検体を用いて解析を行うため、次年度使用額はその解析に使用することを想定している。
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Research Products
(1 results)