2018 Fiscal Year Research-status Report
アンチトロンビンは敗血症時の好中球細胞外トラップ形成を制御できるか
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16K11403
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
石川 倫子 兵庫医科大学, 医学部, 非常勤講師 (40566121)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 好中球細胞外トラップ / アンチトロンビン / 敗血症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は敗血症時の NETs形成にアンチトロンビン(AT)III製剤が及ぼす影響を明らかにすることを目標としている。平成30年度の目的は、マウス敗血症モデルを作成し、ATIII製剤の投与がNETs形成とアポトーシスに及ぼす影響と臓器障害との関係性を明らかにすることであった。しかし、これまでの検討でATIIIがNETs形成を抑制する機序がまだ明らかになっていないことから、in vitroにおける機序の検討を優先して行った。 前年度までの結果から、個体差が大きいヒト好中球の代わりにHL-60細胞を好中球様に分化させ、NETs形成への影響を確認した。結果、HL-60細胞でも同様にATIIIの添加はNETsを抑制することが明らかとなった。また、ATIIIのレセプターとして考えていたsyndecan-4の発現がHL-60では低いことから、syndecan-4以外にもATIIIのシグナルを伝達する因子が存在する可能性が示唆された。一方、HL-60細胞ではLPS刺激に対するNETs形成が少なく、ヒト好中球のような反応性が得られなかった。そこで、これまでの検討でLPS刺激によりNETs形成が十分に認められ、かつATIII投与でNETs形成が抑制された被験者を選び、機序の検討を行った。結果、ATIIIの添加はLPSにより亢進したPAD4の核内移行をPKCαの経路を介して抑制し、NETsの形成を抑制していることが確認された。臨床検体においても、敗血症または敗血症性ショック患者における血中のAT%は臓器障害スコアであるSOFAスコアと負の相関を示し、ATIIIの補充はNETs抑制を介して臓器障害を軽減する可能性がある。また、マウスCLPモデルにおいても肺でのNETs形成が少ない方が生存率が良いデータが得られており、ATIIIの投与によるNETs形成の抑制は臓器障害を軽減する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度における当初の目標は、マウス敗血症モデルを用いてATIII製剤の効果を確認することであった。実際には、CLPモデルにおける肺でのNETs形成の有無は確認できたが、NETs抑制に効果的なATIIIの投与濃度の決定ができておらず、まだ投与には至っていない。一方で、前年度まで不十分であった機序の検討については、PKCαの経路を介し、PAD4の核内移行を抑えること、syndecan-4以外のレセプターなどの可能性を示唆しており、おおむね順調に発展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討で得られた成果については、英語論文化して発表する準備を進めている。マウス敗血症モデルについては、肺と肝臓での好中球集積とNETs形成に絞ってATIIIの効果を確認することを予定しているが、エンドトキシン血症におけるNETs形成の抑制については以前に報告していることから、新規性や動物倫理を熟考して進めていく。具体的には、性別によってNETs形成能力に差がある可能性を見出しているため、雌雄それぞれにおいてATIII投与の効果を確認することなどを検討している。
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Causes of Carryover |
研究期間中に出産・育児により予定よりも研究の進行が遅れた。また、施設の建替えにより使用できる機器が制限される期間があった。結果、当初の予定より遅い時期に英語雑誌に結果を投稿したが、追加実験の必要性が指摘され、受理されなかった。必要な追加実験を施行し、別雑誌への論文投稿を行うために次年度使用額が生じた。 使用計画としては、これまでのin vitroのデータの追加実験、及び論文校正と投稿に係る費用として使用する。また、マウスにおける検討が途中であるため、英語論文として発表できるようにデータを追加するため使用する。また、成果は英語論文以外にも学会発表を行い、国内外の研究者の意見を多く取り入れるよう努力するため、学会参加に係る費用としても使用する。
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Research Products
(1 results)