2017 Fiscal Year Research-status Report
南海トラフ地震発生に備えた医療体制構築と発生時における医療対応拠点づくり
Project/Area Number |
16K11417
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山本 啓雅 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (20509723)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 義成 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (20570641)
溝端 康光 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90420736)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 南海トラフ大地震 / GIS / 医療機関入院可能数 / 負傷者数 / 医療需給アンバランス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は 1)南海トラフ地震被害想定の地理的分析から医療体制の問題点を明らかにし、 2)これを改善させる方略を提言することである。さらに 3)実災害時には衛星から送られた地理的被害データをもとに医療体制の状況を分析し、情報を地域に発信して災害体制に役立てることのできる拠点を構築することである。 研究計画は1)については、28年度に入手している津波浸水高データ、震度分布データ、医療機関の位置・種別情報について、GISに展開した。また各病院の周囲50mの平均水深を計算し、救急車両の走行が困難となる30cm以上の病院を抽出した。さらに道路状況データを重ね合わせることにより、大阪市の周辺部で、搬送困難等が起こることがわかった。入手可能であった大阪市内各区別の負傷者データを同様にGISに展開し、医療機関と道路状況・浸水状況のアンバランスを指摘した。これらの結果について17回 European Congress of Trauma & Emergency Surgery(ヨーロッパ外傷・救急外科学会)にて発表した。29年度、危機管理室には詳細な負傷者・重傷者情報が残っていなかったため、作成元である企業等と連絡を取り、データを取得することができた。現在このデータをもとに負傷者のメッシュデータを作成中である。また厚生労働省大臣官房統計情報部より各災害対応医療機関の平均入院患者数・外来患者数情報を得て、我々の所有する医療機関の位置データとマッチングを行い、GISへ展開した。医療機関の詳細な受け入れ可能人数を計算し、これと避難率の高低によって生じる負傷者のバランスを検討した。結果については2017年10月に日本救急医学会にて発表した。3)についてJAXAとの連携は並行して行っており、衛星からの地理的データを大阪市立大学内のサーバーに集積し、我々がデータ分析を行う準備もできている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
28年度の進捗状況として、やや遅れている理由は1.危機管理室から詳細な負傷者・重傷者情報が入手できていないこと、2.厚生労働省大臣官房統計情報部より各災害対応医療機関の平均入院患者数・外来患者数情報を入手するための手続きに時間を要したため、最終的に入手が平成29年2月となったことであった。 2については、厚生労働省のデータは入手後29年度にGISへの展開ができ、これと、避難率の高低別に見た区ごとの負傷者数を比較することにより、問題点を明らかにした。 1については、危機管理室からすべてのメッシュデータを提供いただけることとなったが、大阪府には十分なデータが保管されていなかった。このため、このデータを作成したコンサル会社と連絡を取り、データを得ることとなった。コンサル会社にも詳細な負傷者数のメッシュデータはなかったが、詳細な被災状況のデータが残っており、現在これをもとに、独自に負傷者のメッシュデータを作成しているところである。 以上より、1の部分で、負傷者のメッシュデータ作成に時間を要していることから、29年度がやや遅れる状況となった。
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Strategy for Future Research Activity |
負傷者数のメッシュデータ作成は5月上旬には完了する見込みであり、これをGISに展開する。また厚生労働省から得た、各医療機関のデータと、すでに入手している津波浸水データ、震度分布データなどから各医療機関の残存機能率を算出し、医療機関の受け入れ可能外来患者数・入院可能患者数を算出する。次に道路状況・浸水状況から負傷者がどの医療機関にどれだけ動くかを算出する。以上の結果から、どの病院があるいは地域で医療のアンバランスが起きているかを明らかにすることができる。 次に、地理的加重オーバレイ分析を用いて最適な病院配置を提示する。これには中規模の医療機関を災害拠点病院化する場合と、災害拠点病院の機能を増強させる場合など様々な場合が想定される。いくつかのケースについてシミュレーションを行い、最も実現可能性が高く、効果的なケースを抽出する。 JAXAとの連携は並行して行っており、衛星からの地理的データを大阪市立大学内のサーバーに集積し、我々がデータ分析を行う準備もできている。大阪府危機管理室や医療対策課の職員がサーバーデータにアクセスできるシステムを構築する。
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Causes of Carryover |
今年度は衛星データの入手・蓄積や大阪府へのデータ提供のために、サーバーを購入したが、データ入手および作成に遅れが生じたため、データ入力・データチェック・解析補助などの資金が次年度に回ることになった。また現在使用している、国勢調査の人口データは、実際の人口流動を反映していないため、NTTドコモ社が有する、携帯所持率から算出した人口流動データを入手する必要がある。使用計画としては、データ入力・データチェック・解析補助などの謝金に使用する。またNTTドコモ社が有する、携帯所持率から算出した人口流動データを入手する予定である。さらに、最終年である30年度には成果を学会発表、論文投稿、報告書昨送付などの形で行うため、助成金を使用する予定である。
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