2018 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanism of blood pressure regulation by molecular hydrogen in chronic kiney disease
Project/Area Number |
16K11420
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鈴木 昌 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任教授 (70265916)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 元昭 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (30265798)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 水素ガス / 高血圧 / 慢性腎不全 / 神経液性因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子状水素(以下、水素)は、抗酸化物質として有用性が報告されて以来、多面的効果を有する有望な物質として様々なモデルで有用性が報告され、多分野で注目されている。水素ガスの吸入が保存期の慢性腎臓病の高血圧治療にも有効であるか、さらに水素による高血圧治療効果が他の高血圧モデルにおいても普遍的であるかを検証し、またその分子メカニズムの解明を試みた。腎血流量が約1/6になる腎切除直後からの水素ガス吸入によっても腎機能の改善効果は認められず、腎切除後急性期の血圧上昇を予防する効果は認められなかった。しかし水素ガスの反復間欠的吸入によって亜急性期に血圧が低下する傾向が認められた。周波数解析では水素群において交感神経活動の抑制あるいは副交感神経活動の亢進は認められず、水素ガスの降圧効果が交感神経活性の抑制とは独立した機序であることが示唆された。腎切除後3週間が経過し、腎機能が固定し血圧が上昇した保存機腎不全に対しても水素ガスを吸入することで血圧が低下する傾向が確認された。神経液性因子のうちレニン・アンギオテンシン・アルドステロン、尿中ノルアドレナリンが水素群で低下し尿中ナトリウム排泄が増加する傾向が明らかとなった。保存期腎不全において水素ガスの間欠的反復吸入が降圧神経液性因子を介して降圧効果を呈する可能性が示唆された。腎機能悪化の懸念からアンギオテンシン変換酵素阻害薬やアンギオテンシンⅡ阻害薬が使用し難い保存機腎不全患者において、腎機能に影響せず神経液性因子を低下させる可能性があり、水素ガスの吸入療法が有望な治療となる可能性がある。高血圧自然発症ラットを用いた検討では保存期腎不全と比較して降圧効果は弱く、水素ガスの効果は高血圧の病態に依存することが示唆された。
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