2017 Fiscal Year Research-status Report
途上国における地域特性を考慮したエンパワメント型地域救急医療システムの提案
Project/Area Number |
16K11422
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
中原 慎二 帝京大学, 医学部, 准教授 (40265658)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市川 政雄 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20343098)
坂本 哲也 帝京大学, 医学部, 教授 (40365979)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 救急医療供給体制 / 評価指標 / 途上国 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、開発途上国に適した救急医療システムモデル作成のため、平成28年度に作成したモデル素案を元に、日本、タイ、ベトナム、ラオス、カンボジア、スリランカ、モンゴル、カナダ、フィリピン、マレーシア、台湾の救急医療および医療政策の専門家を対象に、質問紙を3回送付して意見収集を行った。1回目は素案(モデルを構成する要素のリスト)に対して要素の追加およびコメントをしてもらい、当初160項目であった要素が220項目に増加した。特に行政システム、救急搬送視システムへの意見、追加項目が多かった。2,3回目は要素のリストに対して重要度の評価を行ってもらった。合計31名から回答があり、現在分析を行っているところである。重要度に基づいて要素を整理し、行政、搬送、リハビリまで含む、救急医療全体の評価を行うための指標として利用可能なものを作る予定である。 タイとベトナムにおいて、救急医療における課題を具体的に提示することを目的に、問題事例のケースレポートを作成した。タイの事例は救急搬送中の救急車の事故で救急隊員が死亡したもので、搬送中の速度制限や安全装置の使用、ストレッチャーや器具の固定に関する国際標準の導入の必要性などを示している。ベトナムの事例は、感電による院外心肺停止で、バイスタンダーによる胸骨圧迫、救急隊による除細動があれば救命できた可能性が高い死亡例である。市民への救命処置普及と病院前救護の整備の必要性を示すものである。タイの事例はケースレポートとしてJournal of Emergency Medicine (2017;53:730-4) に掲載された。ベトナムの事例は英文専門誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各国の専門家から意見を収集するサーベイは、予定から若干遅れている。予定では平成29年度前半に調査を終了して後半は分析を行うはずであったが、調査実施国で倫理審査を要する場合があり、研究計画書の現地語への翻訳、申請書の作成、審査に時間を要したため、調査終了が年度末になった。しかし、平成30年度に実施予定の小規模な評価研究については、平成29年度中に準備を進めており、平成30年度には、救急医療システムモデルに基づいて、ベトナムとタイで評価を行える予定である。システムモデルに基づく総合評価指標(構成要素すべての点数化)の作成は間に合わないが、システムモデルの構成要素は既に決定されているので、具体的な指標(たとえば病院前救護へのアクセス)を用いて評価を行う。また、モデルに基づく提言の作成は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28,29年度の、途上国の救急医療専門家あるいは医療政策専門家との議論を通して、コミュニティ・エンパワメンとの重要性がプライマリケア、救急医療両者に重要であることが明確となった。平成30年度は、この概念に基づいて、評価指標と提言の作成を行う。また、ベトナムとタイで、救急医療においてどの程度コミュニティの参加があり、それが医療へのアクセスへどの程度関与しているか小規模な調査を行う。最終年度であるので、調査実施国の専門家と結果を共有したい。
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Causes of Carryover |
研究分担者の渡航費用1回あ分程度が繰り越しになっている。システムモデルの構成がやや遅れて年度を越してしまったため、情報共有のための渡航が平成30年度となってしまった。平成30年度に分担者の渡航費用として使用する予定である。
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