2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K11429
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
西内 辰也 近畿大学, 医学部, 准教授 (60588804)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平出 敦 近畿大学, 医学部, 教授 (20199037)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 学校 / 医療緊急 / 救急搬送 / 救急活動記録 / 心停止 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度研究計画「学校版医療緊急時対応指針」の要件分析について、当初は養護教諭等の学校関係者のほか、国内外の救急医療・心肺蘇生科学領域の有識者(医師、疫学研究者、救急救命士等)、運動時の心停止発症が多い点を考慮しスポーツ医学領域の有識者、教育委員会等の行政関係者などから人選しDelphi法を用いて要件分析することを研究実施計画の最初としていた。しかしながら会議資料作成のためにあらためて文献検索したところ、学校における医療緊急事案で救急搬送された事例の報告がないことが判明した。救急搬送例は医療緊急事案の中でも緊急度・重症度が高いものが含まれており、学校版医療緊急時対応指針作成に際して不可欠な資料と考えられた。そこで研究者らは大阪市消防局の協力のもと救急活動記録の分析を行い、その調査結果の一部を「大阪市の学校における医療緊急事案 大阪市消防局の救急活動記録から」と題して第44回日本救急医学会総会・学術集会にて発表した。2008年からの4年間に2794件の救急搬送があり、15歳をピークに10代の搬送事例が多かった。また、急病では男女差を認めないものの、外傷・外因では男性が女性よりも多く、結果として全搬送例のうち62%を男性が占めていた。入院を要した例は18%あり、それらの初診時診断名を分析することによりどのような疾病・外傷あるいは病態が救急搬送され入院に至ったかについて明らかとなった。例えば、学校での医療緊急事案では10代の児童生徒が多いものの、脳卒中や虚血性心疾患・大血管疾患などといった主に成人に発症しうる緊急度・重症度が高い疾患も発生していた。 「学校版医療緊急時対応指針」では、学校で発生しうる医療緊急事案に対して主に教職員が効果的かつ効率的に対応できることを主眼としており、今回の調査結果を踏まえてDelphi法作成のための資料を現在作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【研究実績の概要】でも述べたように、Delphi法による要件分析開始前の資料作成段階において有識者らによる議論を促進させうるような「学校で発生し救急隊により救急搬送された事例の先行研究」が皆無であることが判明した。学校における医療緊急事案として、AEDの急速な普及により心停止が、またエピペンの普及によりアナフィラキシーが注目されている。心停止やアナフィラキシーについては教職員を対象とした心肺蘇生法教育やエピペンの使用法など、手技(テクニカル・スキル)の習得を主たる目的とした講習会が開催されている。一方、学校における医療緊急事案は心停止やアナフィラキシーのみではなく、その他の疾病・外傷も発生しており、それらの頻度・重症度(外来受診後帰宅あるいは入院加療が必要)についても効果的な医療緊急時対応指針を作成するうえで把握されるべきである。【研究実績の概要】でも示したように、学校で発生し救急隊により救急搬送された事例に関する調査は円滑に終了し、現在Delphi法実施の資料作成に取り組んでいる。 区分として「(3)やや遅れている。」を選択したが、研究遂行に支障が生じたわけではなく、今後の研究実施に新たな研究成果が加わったことにより、今後は予定通り研究が実施されるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は 1)Delphi法に基づく学校版医療緊急時対応指針の要件分析 を実施し、その結果に基づき 2)学校版医療緊急時対応指針の作成を行う。また研究計画通り、学校版医療緊急時対応指針の暫定版作成後は、学校における導入を図ることを目的に、教職員を対象とした講習会を開催する予定である。 現時点において研究計画の大幅な変更なく、研究計画調書に沿って予定通り実施する。
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Causes of Carryover |
当初、「学校版医療緊急時対応指針」の要件分析について大阪府下の養護教諭を対象に郵送によるアンケート調査を実施する予定であった。【研究実績の概要】でも記したように、要件分析の資料作成に必要となる「学校における救急搬送事例に関する調査」を実施したため当該年度内のアンケート調査を見送った。 研究成果を当初計画通りに日本救急医学会にて発表したが、旅費ついては所属機関から支出された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に28年度実施予定であったアンケート調査を実施するため、それらに対して予定通りアンケート調査委託費として助成金を使用する。 当該年度では所属機関(近畿大学医学部救急医学)の人員を利用することができたが、次年度には他の研究機関に異動予定であるため新たに研究補助員を選定する予定である。この目的のため研究補助に要する人件費・謝金として助成金を研究計画通り使用する。 外国旅費については、アンケート調査結果ならびにDelphi法に基づく「学校版医療緊急時対応指針」の要件分析結果について国外で発表するための費用として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)