2016 Fiscal Year Research-status Report
NOTCH1の異常による前癌病変発症機構:扁平上皮の形態ホメオスタシス制御破綻
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16K11438
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
坂本 啓 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (00302886)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 口腔癌 / 扁平上皮癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌の遺伝子変異解析から、Notch1遺伝子が口腔や食道、皮膚の扁平上皮癌で高率で変異が認められ、扁平上皮癌特異的ながん抑制遺伝子である可能性が示唆されている。しかし実際にNotch1が口腔や食道腫瘍の発生にどのように関与しているかはよく分かっていない。培養細胞を用いた実験からは相反する様々な結果が報告されているが、生体での現象をよく反映していない可能性もある。そこで生体における口腔と食道腫瘍の発生環境を可及的に反映したマウスモデルを構築し、Notch1の腫瘍発生における役割を調べた。 マウスへの4NQO(発癌物質)の飲水投与による化学発癌実験を行ったところ、前癌病変および扁平上皮癌が口腔と食道粘膜に誘発された。免疫組織学的にはヒトにおける病変と同様の、Notch1発現の減弱を大部分の病変で認め、さらにヒト病変と同様に分化マーカー発現の異常を示した。癌の遺伝子変異を次世代シーケンサで解析したところ、6病変中2病変にNotch1の変異を認めた。 次に、上皮細胞のみでNotch1遺伝子を欠損したノックアウトマウスを作成した。このマウスは生後1年頃から皮膚癌が高頻度に発生し、Notch1欠損により皮膚腫瘍が誘発されることが示唆された。しかし、生後1年以上経過しても口腔と食道腫瘍の発生の有意な上昇はみられなかった。そこで、さらにこのマウスを用いて化学発癌実験を行った。野生型マウスに比較して、口腔と食道に生じる腫瘍の数の増加、大きさの増大、発生時期の早期化を呈し、Notch1欠損により口腔と食道腫瘍の発生が促進することが示された。以上より、Notch1が腫瘍抑制遺伝子として口腔と食道の腫瘍発生に重要な役割を果たす可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実験の手順を見直し、効率化を図ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
Notch1の腫瘍抑制遺伝子としての分子機能を明らかにするため、実験を遂行する。
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Causes of Carryover |
安価な同等品の試薬の購入に努めたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試薬の購入に充当。
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