2017 Fiscal Year Research-status Report
神経障害性疼痛におけるニューロン-グリア間情報伝達物質の役割に関する研究
Project/Area Number |
16K11440
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
寺山 隆司 広島大学, 医歯薬保健学研究科(歯), 教授 (60333689)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 神経損傷 / 痛覚異常 / ニューロン / ミクログリア / アストログリア / 収斂投射 / アデノシン / 中枢神経系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では末梢神経損傷によって起こる痛覚異常に中枢神経系でのニューロンの興奮性の変化やグリア細胞の活性化がどのように関与しているのかを検討している。昨年度までに、末梢神経損傷後に起こる中枢2次ニューロンについて検討し、神経損傷後の時間経過および損傷した神経の中枢投射部位に関連して異なる興奮性の変化が起こることを明らかにした。また、このような中枢2次ニューロンの興奮性の変化に中枢投射部位のミクログリアが神経損傷後の早期に活性化が認められ、またアストロサイトがそれに遅れてかつ長期的な活性化が認められることが明らかとなった。さらに、中枢2次ニューロンにおける侵害情報伝達の指標として用いてきたc-Fosタンパク誘発とERKのリン酸化(p-ERKの誘発)について神経損傷後にその誘発パターンを比較検討した結果、通常の侵害情報伝達にはc-Fosおよびp-ERKともに関連しているが、神経損傷後の中枢2次ニューロンの過剰な興奮にはc-Fos発現が関連していることが示された。これらの研究成果はInternational Journal of Neuroscienceに掲載された。本年度は、これまでに得られた痛覚異常の発症メカニズムを元にアデノシンA3アゴニストの効果を検討した。アデノシンは慢性疼痛に対して鎮痛効果があるといわれているが、全身投与した場合の心血管系への副作用が懸念されている。アデノシンA3アゴニストは副作用もなく、慢性疼痛への臨床応用が期待されている。そして本研究では、アデノシンA3アゴニストの全身投与が神経損傷後の痛覚異常の程度を減少させること、その効果は神経損傷後の中枢投射部位のミクログリアの活性化および異常な収斂投射を抑制することによることを明らかにした。これらの研究成果は現在学術雑誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、これまでに得られた神経損傷後の痛覚異常の発症メカニズムをもとに、その発症を抑える薬剤投与の効果を明らかにしたため、研究計画はおおむね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のようにアデノシンA3アゴニストの効果に関する研究成果は学術論文に投稿するとともに学会で発表する予定である。痛覚異常の発症を抑制することは可能であっても、臨床的にはすでに確立された痛覚異常を元の状態に戻すことが重要であり、今後の課題である。神経損傷後に起こる持続的な中枢2次ニューロンの過剰な興奮とグリア細胞の活性化との関連を検討するとともに、ミクログリアおよびアストロサイトの抑制剤を投与することで、すでに確立された中枢2次ニューロンの過剰な興奮が抑制できるのかを検討する予定である。ただし、異動により今年度から研究室を新たに立ち上げる必要があり、研究遂行が遅れてしまう恐れがある。そこですでに得られたサンプルから旧研究室の研究協力者にも要請して実験を遂行していく予定である。
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Causes of Carryover |
年度末に、岡山大学から広島大学への異動が決まっており、そのため新たな試薬や実験動物の購入を年度の終盤に控えていたために次年度使用額が生じた。次年度はその分の試薬や実験動物を購入予定である。
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Research Products
(2 results)