2017 Fiscal Year Research-status Report
メラトニンと骨代謝調節ホルモン・サイトカインとの新規相互作用の解明
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16K11442
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
池亀 美華 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (70282986)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 みか子 奥羽大学, 歯学部, 非常勤講師 (20361909)
内部 健太 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (20584618)
江尻 貞一 朝日大学, 歯学部, 教授 (40160361)
服部 淳彦 東京医科歯科大学, 教養部, 教授 (70183910)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | メラトニン / 骨組織 / PTH / 骨粗鬆症 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨疾患においてメラトニンをアジュバントとして使用し、より効率的で副作用の少ない、より経済的な骨疾患治療法を開発することを目的とする。そのため、骨疾患治療薬に用いられるサイトカイン・ホルモンとメラトニンの、骨形成ならびに骨吸収作用に関する相互作用について検討し明らかにする。 今年度は、骨粗鬆症モデル動物における骨代謝ホルモンとメラトニンの相互作用について、卵巣摘出後の骨量減少に対する予防的効果の検討を開始した。卵巣摘出ラットを作製し、骨粗鬆症治療にもちいられる副甲状腺ホルモン(PTH)投与とメラトニンの併用効果についてマイクロCTを用いて形態学的に検討した。卵巣摘出したラットでは、偽手術群のラットに比較して、3カ月後の試料で脛骨近位端の海綿骨が明らかに減少しており、卵巣摘出による骨粗鬆化を確認することができた。卵巣摘出直後からPTHを単独投与したラットでは、卵巣摘出群に比べて明らかな海綿骨の増加を認め、PTH反復投与による骨量減少の抑制効果を確認することができた。PTHとメラトニンを併用したラットでは、PTH単独群に比較して海綿骨は同等またはやや減少する傾向が認められた。メラトニン単独投与群についても解析を進めているところである。さらに、骨強度についても業者委託により測定を依頼した。結果については解析中である。 以上から、今回の投与条件では、少なくともPTHの骨量維持作用に対してメラトニンを併用することによる改善効果は認められず、むしろ抑制的な作用を持つことが示唆された。これは予測とは全く反対の結果であり、in vivoにおいては、メラトニンの全身的影響が、骨形成や骨吸収に対してin vitroとは異なる結果をもたら可能性を示す、大変興味深い結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は、培養系を用いた実験と平行して、卵巣摘出ラットをもちいたin vivoにおけるメラトニンと骨代謝ホルモンの相互作用の検討を開始した。今年度はさらに卵巣摘出ラットを用いた実験の追加実験を行い、μCTを用いた骨量や海綿骨の骨梁の形態、さらに皮質骨の計測、骨強度などの解析を進め、メラトニンとPTHの骨粗鬆症に対する相乗効果についてのおおよその結果を得つつある。しかしながら、当初平成28年度に予定していた培養系を用いた実験が遅れており、条件検討の段階である。従って、交付申請書に記載した研究の目的の達成については、「(3)やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、すでに試料を得ている卵巣摘出ラットの骨組織、血液、尿について、骨形態計測ならびに骨代謝マーカーについて生化学的検討を行い、メラトニンとPTHの併用が骨代謝に及ぼす作用メカニズムを検討する。 また、骨器官培養系をもちいた実験による検討をさらに進めて、メラトニンがPTHの骨作用に関してどのような細胞組織学的変化をもたらすのかを、骨芽細胞、破骨細胞の活性マーカーの変化を検討することによって明らかにする。 以上により、当初は予想されなかったメラトニンのPTHによる骨粗鬆症予防効果に対する抑制的効果が、細胞レベルでの影響なのか、全身性の因子に対する影響なのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
(理由)初年度途中となっていた培養系を用いた実験の進行が遅れているために、その分が次年度使用額として繰り越された。 (使用計画)今年度は卵巣摘出ラットの血液・尿の試料解析や骨組織を用いた骨形態計測、ならびに骨器官培養系を用いたメラトニンとPTHの相互作用による骨芽細胞、破骨細胞の活性の変化について実験を行う。余裕があれば、カルシトニンとメラトニンの相互作用についても骨器官培養で検討を行う。 具体的には、卵巣摘出ラットの試料解析について、骨形態計測費用、血液・尿の生化学的検査の試薬。骨器官培養について、実験動物、培養液、血清、PTH、メラトニン、メラトニン受容体の阻害剤などの試薬、RNA抽出、逆転写、リアルタイムPCRなどの解析用試薬、免疫組織化学など形態学的解析に要する試薬、スライドガラスなどの消耗品に使用する予定である。
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