2016 Fiscal Year Research-status Report
口腔悪性腫瘍の微小環境における癌関連線維芽細胞(CAF)と細胞外基質の役割
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16K11449
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
藤田 修一 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (00181355)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 多形腺腫由来癌 / 腺様嚢胞癌 / 粘表皮癌 / 多形腺腫 / LOX / LOXL2 / 微小環境 / 細胞外基質 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の研究として、細胞外基質の豊富な悪性唾液腺腫瘍の腫瘍細胞と細胞間基質の関係を免疫組織化学的に検討した。多形腺腫由来癌、腺様嚢胞癌、粘表皮癌を対象とし、腫瘍細胞の環境である細胞外基質の改造因子である、lysyl oxidase (LOX), LOX-like2 (LOXL2)及び細胞外基質の分解酵素matrix metalloproteinase-14 (MMP14)の解析を行った。対象として良性腫瘍である多形腺腫を研究対象に加えた。 LOX及びLOXL2はコラーゲンとエラスチンを共有結合架橋させる酵素で、悪性腫瘍においては細胞外基質をremodellingすることで、腫瘍細胞の浸潤・転移に関係すると考えられている。多形腺腫由来癌では、良性部分においては発現がみられないが、被膜外浸潤はないが悪性化している腫瘍細胞、被膜外に浸潤している細胞とその周囲の間質に発現が認められた。腺様嚢胞癌においては、篩状、管状構造では発現がみられなかったものの、浸潤部分の索状構造では発現がみられた。粘表皮癌でも浸潤部位でのみ発現が認められた。多形腺腫ではほとんどの部位で両者の発現はなかった。概して、LOXよりLOXL2の方が広範囲で強い発現を示していた。 MMP14では発現は弱く、悪性腫瘍での浸潤部細胞や間質に弱い反応がみられ、多形腺腫では発現していなかった。 以上より、唾液腺腫瘍は多彩な細胞外基質を形成するが、悪性化にいたってその基質が改造されていることが示された。これは悪性化に伴う微小環境が浸潤や転移に適した環境に変わっていくことが考察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では初年度は口腔扁平上皮癌とリンパ節転移について、細胞外基質の改造を検討する予定であったが、扁平上皮癌ではLOX familyの研究も他施設から少数であるがなされている。このため、予定していた唾液腺腫瘍についての研究を先に行った。初年度の唾液腺悪性腫瘍の解析は概ね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
唾液腺腫瘍においても悪性化に伴う細胞外基質の改造があることが明らかになったが、微小環境を形成している癌関連線維芽細胞(CAF)との関係は不明である。今後はCAFとの関係も検討していきたい。 また、扁平上皮癌での細胞外基質の改造と浸潤及びリンパ節転移の関係も検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
当初は先に扁平上皮癌の研究を予定していたが、他施設の研究状況を鑑みて、唾液腺腫瘍の研究を前倒しにした。このため、使用する抗体等の試薬が少なくなり、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
口腔扁平上皮癌での細胞外基質の改造に関する免疫組織化学的研究を行う。浸潤様式やリンパ節転移の有無などのグループにわけ、LOX, LOX2, MMPなどの局在を検討する。微小環境形成に重要なCAFも合わせて検索するが、現在特異的なCAFの組織学的マーカーは見出されていないため、複数の抗体(a-SMA, CD34など)を用いて同定する。また、改造された微小環境と癌幹細胞の存在も組織学的に検討する予定である。 CAFと癌幹細胞は唾液腺腫瘍でも検索する予定である。
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