2017 Fiscal Year Research-status Report
非筋型ミオシンIIが歯の幹細胞ニッチの形成とエナメル芽細胞の移動に果たす役割
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16K11453
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
山中 淳之 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 准教授 (80343367)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中富 満城 九州歯科大学, 歯学部, 講師 (10571771)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アクチン / ミオシン / 歯 / 発生 / 上皮 / 形態形成 / 器官培養 / KOマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
ミオシンIIは非筋細胞においても細胞内でアクチンフィラメントを引っ張ることで収縮力を引き起こす。歯胚上皮の形態形成過程における非筋型ミオシンIIの役割を明らかにすることが本研究の目的である。そのために、マウス切歯の歯胚を材料に、(I) 歯胚におけるミオシンIIの局在の確認、(II) 歯胚の器官培養を利用したミオシンIIの機能抑制実験、および、(III) ミオシンIIの遺伝子欠損 (KO) マウスの歯胚の解析を計画した。2016年度は、(I) はほぼ完了し、切歯の歯胚を使った (II) 器官培養実験、および (III) KOマウスの実験を開始した。2017年度は、(II) および (III) に関してデータを蓄積することができた。 (II) ミオシンIIの機能を調べるために、開始期および帽状期初期の切歯歯胚を器官培養し、ミオシンIIの抑制因子であるBlebbistatinを添加する実験を行った。ミオシンIIの機能が阻害されると、歯胚上皮の間葉中への陥入がうまく進行しなかった。歯胚上皮の基底層と基底上層の分化が阻害され、シグナリングセンターは形成されるが、サービカルループの形成は見られなかった。(III) 器官培養実験では、間葉におけるミオシンの機能も阻害されてしまうために、上皮特異的なミオシンIIのKOマウスを使用して、歯胚の表現型を解析した。歯胚上皮においてミオシンII遺伝子が欠損すると、上述の器官培養におけるミオシンII機能阻害実験と同様の表現型を得ることができた。 これまでの結果をまとめると、歯胚上皮が間葉へ陥入し正常な形態形成を行うためには、基底層内に形成されるシグナリングセンターが基底上層に固定され、細胞増殖活性が基底上層より基底層で高いことが必要で、そのためには、歯胚上皮における非筋型ミオシンIIの役割が重要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、マウスの歯胚の形態形成を初期(開始期から帽状期)と後期(鐘状期以降)の二つに分けて、それぞれの時期に対して、(I) 歯胚におけるミオシンIIの局在の確認、(II) 歯胚の器官培養を利用したミオシンIIの機能抑制実験、および、(III) ミオシンIIの遺伝子欠損 (KO) マウスの歯胚の解析を行う予定であった。しかし、形態形成初期の解析が順調であり、得られた結果が非常に興味深いものだったので、当初の計画を変更し、歯胚の形態形成初期に集中して、(I) (II) (III) の実験を行うことにした。 その結果、2016年度において、歯胚の形態形成初期に関して、(I) をほぼ完了することができ、(II),(III)の解析をスタートすることができた。2017年度においては、(II) 器官培養実験と、(III) KOマウスの実験を行い、データをさらに蓄積することができた。 実際の実験内容に関しては、(I) 免疫染色によるタンパクの局在確認はほぼ完了した。 (II) 歯胚の器官培養に関しては、matrigel を利用した3次元器官培養の手法を確立することができ、順調にデータを蓄積できている。(III) KOマウスに関しては、当初は鹿児島大学に導入する予定であったが、UCSFのOphir Kleinラボとの共同研究により、UCSFのマウスを利用して実施した。これまでのところ、器官培養のデータと整合性のある結果を得ることができている。 以上のことから、本研究は、現在まで当初の研究計画から大きく逸れることなく、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況の項に記述したように、今のところ全ての実験が当初の研究計画から大きく逸れることなく順調に実施できている。したがって、歯胚の形態形成初期に関しては、主要なデータを得ることができた。ただし、(II) 器官培養、および (III) KOマウスの解析に関しては、サンプル数がまだ十分でない。 そこで、最終年度である本年度は、(II) および (III) の実験を継続して行い、定量的な解析を行える十分なデータを蓄積する予定である。当初はミオシンIIのKOマウスを鹿児島大学に導入する予定であったが、UCSFとの共同研究によりその必要がなくなったので、替りに、歯胚の位置をGFPの蛍光で確認できるShh-GFPマウスの導入を行う予定である。これにより、歯胚の器官培養実験が効率化できると思われる。 最終年度である本年度は、実験データをまとめ、学会発表および論文の作成に取りかかる予定である。可能であれば、本年度中に論文の出版まで行いたいと考えている。
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