2017 Fiscal Year Research-status Report
歯根象牙質を介した外向きドラッグデリバリーによる新たな歯周組織再生スキームの構築
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16K11458
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
高野 吉郎 順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (90126425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大島 勇人 新潟大学, 医歯学系, 教授 (70251824)
田畑 純 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (20243248) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ドラッグデリバリー / 歯周組織 / 再生医療 / 動物実験モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は歯周疾患に罹患した無髄歯をドラッグデリバリーシステム(DDS)におけるバイオセラミックス製徐放カプセルと位置付け、根管内に封入した薬液を歯根周囲の罹患部に効率的に作用させる in situドラッグデリバリーシステムの確立を目指している。 初年度は、ラット上顎第1臼歯の頬側根管をDDSのドラッグチェンバー(DC)とすべく検討を重ねてきたが、根管処置用器具の小動物への適応の困難さや根管口の視認性の悪さがネックとなり、十分な成果を得るには至らなかった。そのため、今年度は手用器具の改良と手技の向上に努めるとともに、様々な月齢のラットを対象に歯髄処置を繰り返し試行した。その結果、体重500g前後の老齢ラットの上顎第1臼歯近心根管をDCとする実験系が手技的に最も確実で再現性も高いことが確認され、今後実験での対象動物を老齢ラットとすることとした。ラット臼歯は成獣でも根管が太く根尖孔が開いている場合が多いため、根管に貼薬すると根尖孔から薬液の漏洩が懸念されるが、老齢ラットは臼歯の根尖が厚いセメント質で覆われ、根尖孔が狭小化しているためにそのような危険性は少なく、象牙細管経由のDDSを構築する上で理に適っている。また、老齢ラット臼歯は髄腔が著しく狭小化しているため、近心部に限局して髄腔開放を行うことで、冠部歯髄の他部位へ重篤な影響を与えることなく歯髄処置を行なえる点も、大きな利点である。 本実験系では、近心根管内に貼薬した蛍光トレーサー Lucifer yellowが、象牙細管経由で歯根膜側に拡散することが蛍光顕微鏡で確認されており、本in situ DDSが実際に薬物の徐放に機能することは大いに期待できる。現在、老齢ラット根管腔に封入した再生誘導因子の局在の経時的変化(歯周組織への拡散動態)の解析が進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歯周組織再生誘導の動物実験モデルを構築するにあたり、敢えて老齢ラットを用いることで初年度に困難を極めた実験手技の困難さが克服され、実験の進行が大幅に加速した。 老齢ラットの臼歯の組織構造の特性から、機能歯の根管をドラッグチェンバーとするドラッグデリバリーシステムの信頼性が高まったことも特機すべき進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
老齢ラットを用いたin situ DDSによる歯周組織再生誘導実験を展開し、実験系そのものを評価するとともに、再生誘導因子としてのBasic FGFの誘導効果を評価する。 動物実験が実質的に研究最終年の平成30年度に集中するため、年度内に成果の取りまとめが難しい状況となることが予想される。研究期間の一年延長を申請することも視野に入れつつ、研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) ラット上顎臼歯部を対象とするin situ DDS実験モデルを構築するための動物実験が難航し、実験の進行が大幅に遅れたこと、それに伴って物品の購入や機器使用料、謝金の支払い等が予定より低く推移したことによる。 (使用計画) 今年度終盤になって動物実験系が確立したことから、次年度は老齢ラットを用いた実験回数が大幅に増える。そのため動物の購入代金、試薬代金、研究補助者への謝金等が当初の計画を上回ると想定されるため、それらの支払いに充てる。
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