2017 Fiscal Year Research-status Report
Treponema denticolaの上皮細胞侵入機構と病原性惹起機構の解明
Project/Area Number |
16K11461
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
国分 栄仁 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (70453785)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 和幸 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (00212910)
菊池 有一郎 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (30410418)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Treponema denticola / TLR2 / dentilisin / 主要膜タンパク / 口腔粘膜上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
Treponema denticolaは慢性歯周炎の病巣から高頻度に分離され、その発症と進行に重要な役割を果たすと考えられている。本菌の病原性を明らかにするため、病原性遺伝子欠損株を用いて感染による細胞の動態変化を解析した。 口腔扁平上皮癌由来細胞を培養後、T. denticola ATCC 35405 (野性株)、表層プロテアーゼ (PrtP)またはMajor outer sheath protein (Msp)欠損株を感染させてスクラッチアッセイによる評価、サイトカイン等のmRNAおよびタンパク質の発現を検索した。また、TLR reporter cellに感染させTLR2シグナルを解析した。TLR2シグナルはすべての菌株の感染で認め、そのレベルはprtP欠損株で最も高く、次いで野性株とmsp欠損株であった。感染24時間後のmRNA発現はIL-1が野性株で優位に低下し、β-defensinの発現は野性株で優位に高く、IL-6 およびHSPはどの菌株の感染でも増加を認めた。PaxillinとHSPについてタンパクレベルで解析すると非感染群と比較して、野性株およびmsp欠損株で発現の低下あるいは分解を認めた。スクラッチアッセイでは非感染群と比較して野性株、msp欠損株の感染の順で遊走能を低下させたがprtP欠損株の感染では変化を認めなかった。 T. denticolaはdentilisinによりTLR2認識パターンを変調させ細胞の防御反応を回避する可能性が認められた。表層プロテアーゼは、細胞侵入によりPaxillinを分解して細胞の運動能を低下させ、さらにHSPを分解することで細胞のストレス応答の遅延を引き起こすと考えられた。これらの結果から、prtPは上皮細胞のへの侵入とともにその応答を変化させて病原性を示すことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上皮細胞への侵入に関して、Treponema denticolaはTLR2を介して侵入することが実験により示されたが、病原因子欠損株を用いた場合、TLR2のシグナルを低下させた。また、現在までに行った実験で、感染細胞はHSP70のmRNA発現が増加することが認められていたが、今回行った実験によりdentilisinはHSP70のタンパクを分解するとこがウェスタンブロットの結果から明らかになった。dentilisinによってTLR2の宿主免疫システムを変調し、さらに細胞内に侵入したTreponema denticolaはストレス応答に関連するHSP70のタンパクを分解し、免疫応答を攪乱することが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞侵入に関する病原因子を絞り込み、新たに遺伝子欠損株を作成する。遺伝子欠損株を作成後、細胞への侵入効率に差異を認めるか検索し、侵入に関与する病原因子のプロテオーム解明を行う。さらに感染した上皮細胞が産生するサイトカインおよびendocytosis に関連するタンパク質を検出するためにELISA 法を行い、mRNA 発現量を比較するためRT-PCR を用いた半定量を行う。そして野性株と欠損株に対するendosytosis を比較し、病原性因子の影響を検索する。 細菌感染による上皮細胞への影響の検索するため、野性株および欠損株を HOK 細胞に感染させ、免疫関連サイトカインの発現を形態学的および分子生物学的に検索する。対象とするサイトカインは NFκB, interleukin (IL) -1, IL-6、熱ショックタンパク(HSP)70、defensin の細胞内でのタンパク質発現をCLSM にて局在性の検索を行う。そして病原性の有無が細胞内免疫機構に与える影響を解明する。 また、現在までに行っている細胞への侵入ではTLR2による免疫応答活性を示しているが、細胞へ侵入後にT. denticolaの生死に関して未だ不明な点が残る。その為、マウスからマクロファージを採取して食細胞による貪食との差異を調べる。検索方法はphagosomeに関連するタンパク発現をLC3およびLAMP-1を免疫組織化学的に局在性を調べることで細胞内での生存に関して検索を行っていく。
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Research Products
(3 results)